どうカバーするか。
今回から語り部が茶鶴に戻ります。
夏休みも折返し地点となりこの俺 朝倉茶鶴は焦っていた。
というのも肆部祭に向けての制作の進捗が芳しくないのだ。
唯でさえギリギリの日程だったのか俺がミスしたせいで更に遅れてしまっている。自分でも何故あんなミスをしてしまったのか分からない…
とある人とお茶をしながらそのことを話したらこう言ってくれた。
「誰にでも失敗はありますよ。大事なのはそれをどうカバーするかじゃないですか?」
その言葉を聞いて気持ちは前を向くことが出来た。
しかし現実問題、肆部祭までに間に合うかは微妙な所だ。
どうカバーするか…か。
とりあえず今日は昨日、ミスで持っていけなかった部品を持ち部活に向かう。
部室に入ると何やらダレンが心配そうな顔でこちらを見てくる。今日は失敗してないだろうな、という事か?
そしてもう1人、アルフレッドもこちらを見てくるがその顔は何故かニヤけているのだった。
「どうした?アルフ。何か俺の顔に付いているのか?」
「別に何でもありませんよ。それより早く部活始めましょうよ。」
「お、おう。」
何か含みがあるように感じるが問いただしている暇はないので部活を始めるのだった。
その日の部活は問題なく進めることが出来た。進捗はというと工程が半分程進んだぐらいだ。夏休みの日数も残り半分。
またトラブルが起きてしまった場合の事や完成した物を試運転しなければならない事も考えるとやはりもう少し余裕が欲しい。
俺は部活を終え宿直室へ戻ると、どうしたら制作のスピードを早く出来るかを考えていた。
「どうにか一日に部品を2つ作れれば…」
実は2つ作ろうと思えば作れるのだ。毎朝イーナが魔力の補充に来てくれている事で朝と夜、1日に2回魔力池が満タンになるタイミングがある。
しかしわざわざ毎朝イーナが来て魔力を補充してくれるのは宿直室の魔道具を使う為である。その魔力を他のことに使うのは彼女に申し訳ない、というか流石に怒らせてしまいそうだ。
「やはり部員の誰かがこの魔法陣を使えるようになれば…」
となればその可能性があるのは…
魔法陣を発動させるには構造や成分等の具体的なイメージ、つまり知識が必要だ。
部員の中で一番科学の理解が深いのはダレンだ。しかし彼は俺と同じく魔力を持たないので魔法陣を発動させるのは無理なのである。
では次は誰かと言うとそれは神童アフロディーテだ。
アフロディーテに次に作る部品を解説してそれを魔法陣で作れるようになってもらえば…
俺はそれを踏まえ日程を組み直し始めた。
その夜魔力池の魔力を補充しに来てくれたナットがこんな事を言ってきた。
「最近イーナがこの部屋にちょくちょく来てるみたいだな。お前たちいつの間にそういう関係になったんだ?」
「そういう関係って何ですか?」
「別に隠す必要は無いぞ。人の色恋沙汰に口を出すほど俺も野暮では無い。ただイーナは俺の推薦で王都から引っ張り出してきたからな。
…これはどこの警備隊でも言える事なんだが女性隊員は引退する迄結婚しないか結婚したら隊を辞めるかが殆どだ。
彼女は優秀だから辞めて欲しくは無いが、俺が警備隊に引き込んだせいで引退の年齢まで独り身…ってのも責任を感じるからな。出来る限りの応援はしてやりたいんだよ。」
このオッサンは何か勘違いしているみたいだ。
確かに俺はイーナと会ったり会話をする事を何故か楽しく感じてはいるがそれは恋だの愛だのでは無いと思う。というのも実は俺は今まで誰かに対してそういう感情を持った事が無いのだ。それが会ってたかが数ヶ月の人に持ち合わせる訳無いだろう。
俺は肆部祭に向けて魔力を消費している事、イーナがその分の補充をしに来てくれている事等をナットに話した。
「なるほど、ちょくちょく来ているとは気づいていたが毎朝とは…。」
ナットは何やら考え込んでいる。
何かブレイブスとして問題でもあるのだろうか。
その事を尋ねるとナットは首を横に振る。
「いや、隊員が勤務時間外に何処で何をしてようが問題ない。いくら俺が隊長だからといってそこに口を出す権利は無いよ。」
え?ナットって隊長だったのか…何気に初めて知った事実である。
その後ちょっとした雑談をしてナットは宿直室を出ていった。
俺は明日の部活で使う部品を作り寝床に入った。しかしナットの一連の話が何故か頭に引っかかり寝付けないのであった。
シルバークラス 出席番号 6
リリアーナ シーブル(♀)
16才。父が有名な魔物の研究者で幼少の頃から父の書いた図鑑や論文を読み漁っていた。その為魔物の知識に関してはかなりの知識を有する。




