尾行
今回から数話語り部が変わります。
僕はダレン ローリング。僭越ながら科学部の部長をさせて頂いてます。
最近科学部の顧問の朝倉先生の様子が少し変なんです。
なんて言うか浮かれているというか、顔が緩んでいるというか…
元々愛想が悪いだとか暗い性格だとかいう訳でも無いのですが、ここ数日は明らかに前より明るく元気になってます。
一言で言えば機嫌がとても良いのです。
「朝倉先生、最近何か良いことあったんですか?」
「ん?何でだ?特に何も無いぞ。」
そう答える先生の顔はとても幸せそうです。
「ここ数日機嫌良さそうなので…」
「そうか?いつもと変わらんだろ。〜♪〜♫」
先生はそう言い、口笛を吹きながら肆部祭に向けて作ってる例のモノの部品を机に置きます。
以前は人前で口笛なんて吹かなかったのに…絶対に変です!!
その日の部活が終わり先生が自分の部屋、つまりは学校の宿直室に戻るのを確認して僕は科学部最年長で副部長のアルフさんにそのことを話してみました。
するとアルフさんは真剣な顔をして言います。
「やっぱりダレンもそう思うよね。僕もちょっと、いやかなり変だなと思っていたよ。」
アルフさんの妹のディーテも言います。
「ディーテも、そう思う。先生前より、楽しそう。」
「楽しそうなのは良いんだけど、あそこまで浮かれていると少し心配になるよ。注意力に欠けてて何か失敗しそうで。」
このアルフさんの心配は翌日見事に的中する事になりました。
「じゃあ今日も張り切って行こう!!」
先生は今日もやはり上機嫌です。
先生が作ってきてくれた部品を例のモノに取り付けます。
…
……
………取り付けられません。と言うより取り付けるべき所に既に同じ部品が付いています。
昨日取り付けたばかりの部品です。
「朝倉先生…これ昨日の部品と同じやつですよね?」
「え?あっ!!」
先生自身とても驚いています。
「しまった…何で俺は同じ部品なんか作ってるんだ?」
僕に聞かれても分かる訳ありません。
「朝倉先生、今日どうします?」
聞いてはみたものの部品が無ければ先には進みません。
結局その日は今までの部品の解説と明日の予習をして終わりました。
だけど唯でさえギリギリだった日程が更に押してしまい僕は少し焦りを覚えたのです。
先生が肩を落とし宿直室へ帰っていきます。
「ダレン。先生あれ、いよいよまずいよ。」
僕もアルフさんに全面的に同意です。
「先生があんなんなっちゃった理由は何なんだろう?探ってみれば解決方法も見つかるかも。」
「でもどうやって?朝倉先生に直接聞いても答えてくれなさそうですよね。」
2人でどうやって原因を探るか頭を悩ましていたらディーテがこう言いました。
「じゃあ…先生の後、こっそりついていくのは…どうかな?」
こうして先生を尾行することになりました。
先ずは外を周り宿直室の窓まで行き、気づかれないようそっと中を覗きます。
中では先生が椅子に座り落ち込んでいました。暫くして時計を見たと思ったら急に立ち上がり宿直室を出ていきました。
僕達も急いで後を追います。
「でもこれ見つかっちゃったら何て言おう。」
アルフさんがそう小声で言うとディーテがムフーッと鼻息を荒くして言います。
「ディーテに、任せて…!!」
なんだか珍しく今日の彼女は積極的でやる気に溢れています。
きっと尾行が楽しいのでしょう。探偵になった気分なのでしょうか。
ディーテが小声で呪文を唱えると僕達3人の周りがキラキラ光始めました。
「これ逆に目立っちゃうんじゃ…」
僕がそう言うとディーテは説明してくれます。
「光の魔法の…応用。前に授業で先生が…言ってた。目は光を捕えて物体を認識する。」
「「?」」
僕とアルフさんが意味が分からずにいると、それを察してディーテは更に続けます。
「光の魔法で…ディーテ達は今、周りの景色と同化している。」
…同化しているそうです。
本当に景色と同化しているならそんな魔法確かにどうかしています。
光系の魔法は難しい魔法ではないのですが、学んだ科学の知識をそれに応用して、姿を隠すという発想が出来るのが先ず信じられないのです。更にはどう光を調整したらどう周りから見えるかを既に知っている様子です。
「授業で習った日に思いついて…練習した。」
言葉が出ません。神童恐るべし、です。
「先生、行っちゃう。急ごう。」
僕達はさながら探偵団の如く先生の尾行を続けるのでした。
シルバークラス 出席番号 4
ハンバート オナハン(♂)
14才。代々ハンター稼業の家の子供。将来の夢は翼虎〈スカイガー〉を1人で討伐出来るぐらい強くなることだったり、座右の銘が「虎の様に猛々しく。」だったり何かと虎が好き。




