黒と甘
夏休みが始まり1週間が経つ。
科学部の部員達は肆部祭に向けて俺の提案した物を絶賛鋭意作成中である。
作成と言っても時間短縮のため必要なパーツを俺がオリジナル魔法陣で作り出し、それを組み立てるという方法だ。
しかしただ組み合わせるだけでは意味が無い。なのでちゃんと俺が原理や構造を解説しながらの作業となる。
それに俺がパーツを作り出すのも1日1回が限界であった。
というのもあのオリジナル魔法陣の発動に必要な魔力が思ったより多く、宿直室にある魔力池では1回発動すると満タンな状態からでも残量が20%程になってしまうのだ。
初めてあの魔法陣を発動した日、部活が終わり宿直室に戻ると室温は蒸風呂のように上昇しており、魔冷庫の中の食材は腐っていた。リチウムイオンバッテリーを作ったことで魔力池の残量が0になってしまっていたのだ。
あぁ、奮発して買った翼虎-スカイガー-の肉が駄目になってしまった…
まぁ、とりあえずそういった状況もあって1日1パーツしか作れないのである。しかも蒸し暑い部屋で食事も腐りにくいパンや乾物といった質素な物しか食べれないというおまけ付きだ。
なので出し物の制作の進捗は芳しくはない。肆部祭までにはなんとか間に合いそうではあるがギリギリである。
その日の部活も時間いっぱいまで制作をして終わりを迎えた。
俺は宿直室に戻り部屋のその暑さにげんなりした。
他の学校施設も夏休みの間は部活がある決められた時間内のみ温度調整の魔法が発動しているのでこの時間は既にこの宿直室と変わりない暑さとなっている。
「何処か涼める所にでも行くか…」
俺は村へと出かけた。
喫茶店でも無いかと辺りを見回しながら散策する。
すると見知った顔にばったりと遭遇した。
「あれ?朝倉さんじゃないですか、お疲れ様です。村で合うのは初めてじゃないですか?」
この村の警備隊〈ブレイブス〉のイーナ マギアシャルムだ。
なんだかいつもの巡回の時の雰囲気と違う気がした。
「こんにちは、イーナさん。学校があまりにも暑いので喫茶店ででも涼もうかと思いましてね。」
「あれ?昨日の夜は魔力池の補充しなかったんですか?」
「いや、補充はして頂いたのですが最近は訳あって使う魔力の量が増えていまして…」
イーナはふむふむと考える素振りをした後何かを思いついたようにこう言った。
「良かったら今から一緒に私の行きつけの喫茶店に行きません?まぁこの村には喫茶店なんて1つしかないんですけど。詳しいお話を聞かせて欲しいです。」
「僕は良いですけど、イーナさんはお仕事のほう大丈夫なんですか?」
「今日は遅番です。夜の巡回までは空いていますよ。」
あぁ、そうか。いつもと雰囲気が違って見えたのはブレイブスの制服ではなく私服だったからか。何故か俺は少し気持ちが高揚する。
「ではそうしましょう。そのお店どの辺なんですか?」
そして俺はイーナに連れられ喫茶店に入った。
テーブル席に2人向かい合うようにして座る。俺はアイスコーヒー、イーナはアイスティーを頼んだ。
飲み物が来てイーナは紅茶にシロップを入れる。その量を見るになかなかの甘党のようだ。
俺がコーヒーをブラックのまま飲むのを見て彼女が言う。
「私コーヒーをブラックで飲める人って尊敬しちゃうんですよね〜。なんか“大人”って感じで。」
「そんな大袈裟な。何の自慢にもならないですよ、こんなの。」
こんな他愛も無い会話がとても心地良い。
一息ついたところでイーナは本題に入った。
「ところで何にそんな魔力を使ってるんですか?あの部屋にある魔道具ぐらいじゃ半日で魔力池の残量が無くなるとは思えないんですけど…」
俺はオリジナル魔法陣の事、そして肆部祭の出し物について話した。
イーナは目を輝かせ興味津々といった表情でそれを聞き入っていた。
「凄い…自分1人でオリジナルの魔法陣を完成させてしまうなんて。しかもそれがまだ発見されていない物質を見つけ出し自由に組み合わせる効果だなんて…
恐らく王国直属の研究機関がする様なレベルの事ですよ、それ!!」
確かに我ながら中々画期的な自信作ではあるのだがそこまで大それたものなのか?
イーナが続けて尋ねる。
「まぁ、でも確かにそこまで凄い魔法陣なら使う魔力の量も多そうですね。どの位なんですか?」
「宿直室の魔力池だと満タンの状態から8割ぐらい減ってしまいます。」
そう答えると彼女は大きく溜息をつく。
「ハーッ、それだと温度調整どころか魔冷庫や調理用魔コンロもまともに使えてないですよね?食事はどうしているんですか?」
「近頃はパンや乾物ばっかりですね…」
それを聞きイーナはアイスティーを飲み干してこう言ったのだった。
「朝倉さんも早くコーヒー飲んで下さい!!今から宿直室に行きますよ!!」
シルバークラス 出席番号 2
デューク イーストウッド(♂)
18才。シルバークラス最年長。
無口で無愛想。遠距離から魔法で狙い撃つのが得意。
元々魔法部の部長であったが自身の性格が人を纏めるのには不向きだと感じていた。
そしてリンが入部した際に彼女の魔法の才能とカリスマ性を認め部長の座を譲った。




