鬼ごっこ
アルフレッドはタバサを追いかけていた。やはりサマンサと双子ということで6才にしてはかなり逃げ足が早く、12才のアルフレッドが本気を出してようやくジリジリと距離が縮まっていく。
しかし、もうすぐ手の届く距離にまで近づかれるとタバサはアルフレッドの方向を向き呪文を唱える。すると閃光がアルフレッドの視界をくらまし、その隙きにタバサは方向転換してまた距離を広げるのだった。
「先生!!魔法ありなんですか!?」
アルフレッドが俺に抗議してくる。
「怪我するような危険な魔法じゃなきゃ6才組に限りOKとする。アルフは一番年上なんだから魔法無しで頑張れ。」
「そんな〜。」
アルフレッドはタバサをまた追いかけ始めた。
真っ先に捕まってしまったダレンは俺の隣で一緒に勝負の行方を見守っている。
「部活の時間が終わるまで後10分も無いが、それまでに鬼は全員捕まえられると思うかい?」
「鬼にサマンサがいるから無理ではないと思います。」
そのサマンサはというとアフロディーテと一定の距離をとりつつ走り出すタイミングを計っているようだ。
猪突猛進なイメージのあるサマンサらしくない。少し不思議に思っているとアルフレッドが走りながらサマンサに提案をした。
「サマンサ!!先に2人でタバサを捕まえよう!!僕一人だと無理!!」
それを聞いたサマンサはニカッと笑う。
「分かった〜!!ディーテちゃん!!少し待っててね♪」
言うやいなやまるで脱兎の如くタバサに向かい走り出す。
「げ!サマンサ!!」
タバサはギョッとした顔をし咄嗟に閃光の魔法を使う。
「ギャー眩しい!!」
サマンサが目を瞑っている間に方向転換!!
しかし振り向いた目の前にアルフレッドが先回りしていた。
「閃光の魔法は一直線にしか行かないからね。後ろから追いかけてた僕には効かないよ。」
アルフレッドにタッチされタバサはここで脱落。残りはアフロディーテ1人。
「一緒に鬼ごっこなんて久しぶりだね。ディーテは手を抜かれるの嫌いなの知ってるからお兄ちゃん本気で捕まえに行くよ!!」
そう言うとサマンサがボソッと呟いた。
「無理だと思うけどなー。」
そんなこと聞こえていないアルフレッドはアフロディーテに向かい走り出す。それに合わせてサマンサも走り出した。
アフロディーテはフフッと微笑み呪文を唱える。
すると彼女の体は宙に浮き、手の届かない高さまで上昇した。
「凄い…浮遊魔法って確か15才ぐらいで習うやつなのに…」
ダレンが驚いている。
「ディーテ、いつの間にそんな魔法使えるようになったんだ…?」
アルフレッドが呆けている。
しかしサマンサは躊躇せずジャンプし呪文を唱える。
普通にジャンプしたぐらいじゃ決して届かない高さにいるアフロディーテもそれと同時に呪文を唱えた。
サマンサは風の魔法で自分の体を押し上げアフロディーテの足に手が届く高さまで上昇する。
しかしアフロディーテもこれまた風の魔法で空中を横移動してそれをかわす。
そこで浮遊魔法の効果が切れたのかゆっくりアフロディーテが降りてくる。
「アルフ兄ちゃん!!今だよ!!」
サマンサがそう叫ぶ。呆けていたアルフレッドはハッと気づきアフロディーテの着地地点めがけ走り出した。
しかしアフロディーテは余裕な顔で更に呪文を唱える。
するとアルフレッドのスピードがガクッと落ちる。
「な?体が重い…」
「重さを、変える魔法…これも、おにぃは知らない、よね?」
アフロディーテが着地をし走り出すとアルフレッドへの魔法は効果を失ったがその距離はかなり広がっている。
「ダレン君、あの魔法も難しいやつなのか?」
俺が尋ねると信じられないといった顔をしながらこう答える。
「難しいどころか見たこと無いです。あんな魔法…
多分王国の魔法騎士団が使えるかってレベルの魔法だと思います…」
「そりゃとんでもないな。」
その後も2人がかりでアフロディーテを追いかけるが多彩な魔法となかなかの身のこなしでそれをかわしきり遂には部活の終了時間まで彼女は逃げ切ったのだった。
「いやー!!負けちゃった!!久しぶりにやるから勝ちたかったのに〜。でも凄い楽しかったね!!ディーテちゃん♪」
「うん、サマンサ、前より早くなった。」
サマンサとアフロディーテの2人は元気に談笑している。
「やっぱりあの2人は鬼ごっこ好きなんだな〜。」
タバサも特に驚いた素振りも見せずにそんな事を言っている。
前によく遊んでいた頃からこのレベルで鬼ごっこをしていたのだろう。
しかし俺を含めた残りの3人はアフロディーテのあまりの天才ぶりに言葉が出ないでいた。
神童の名は伊達では無いという事だ。
体育館の片付けをして部員の皆が帰った後、モリソンが話しかけてきた。
「いやー、鬼ごっこ少し見させてもらっていたが、あの神童とてつもないな。サマンサも中々良い動きをしていた。両方うちの部に欲しいぐらいだ。」
「やらねーよ。まぁあいつらが移りたいって言ったら反対はしないが。でも恐らくそれは無いぞ。
アフロディーテは科学に興味持ってるしサマンサはそのアフロディーテと遊びたくて科学部に入ったんだからな。」
「まぁ、それは良いとして朝倉先生、サンセットの件楽しみにしてるぜ。」
あぁ、そうだった。考えなくては。
もう勝った気でいるこの男をギャフンと言わせる為にも俺はこの後夜遅くまで何を作るか考えたのだった。




