取調室
気が動転している時は運転しないが吉だと思った。
黄色に変わりかける信号を何も考えず猛進して右折車に突っ込みかけた。
落ち着け。
今すぐ自分に何が起こるでもない。
そう言い聞かせるも心拍が落ち着くことはない。
職場が近くなり生垣に一報入れる。
そのまま入れるとのことだった。
生垣の言うとおり警備員はシュウジの顔を見るとこちらにくることなく入り口のポールを下げてくれる。
軽く会釈をするがすでにこちらを見ておらず挨拶は空を切る。
いつもの場所に車を止めて取調室へ向かう。
安全の都合上、この建物にゾンビは一体もいない。
しかし今の心境ではどこからか急に現れるのではないかと無意味な不安に駆られる。
取調室は扉が開け放たれており光が漏れている。
入ると生垣は机を挟みゾンビが縛り付けられる拘束椅子に座っている。
「高砂さん、こんばんは。安心してください。警備費は私が中島さんの件で話をしたくて無理やり呼んだと伝えてますから。貴方に矛先は大して向かないでしょう。それに私はこう思われてますから。」
頭の横で指をくるくる回す生垣を見て思わず苦笑いをする。
正面の椅子に座るよう促され大人しくして従う。
「すいません。いろいろ気を遣っていただいて…」
「気なんて遣ってません。貴方の話が聞きたいから呼んだんです。きっと私の仮説の裏付けになる。」
そう言ってニンマリ笑うと不気味さしか浮かばない。
「それで先ほどおっしゃっていた彼女の話ですが…。」
そこからシュウジは改めて桔梗の話をする。
大喰らいであったこと、元々の人格を消したこと、シュウジが彼女の名前を呼んだことで様子が変わったこと。
「なるほど…。高砂さん、貴方は最高ですよ。私の仮説を裏付けるためにいるんですか、貴方は。」
ズイと迫ってくる生垣にたじろぎ思わず倒れそうになる。
デスクを挟んでいるにも関わらず威圧感を感じる。
「今から私、自分の仮説を話しますから一切口出しせず黙って聞いてください。」
その言葉に返事すらできないまま生垣は自身の仮説を話し出す。




