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相談

桔梗はまるで何事もなかったかのように食事をしていた。

先程までの出来事が夢だったかのような気すら起こるほどだった。

しかし、何を食べても味がしないぐらいの心の圧迫がシュウジに現実だったと知らせていた。


家に帰るとすぐさまシュウジは仕事用のカバンを漁る。


小さな薄い四角のケースを取り出す。

部署移動の際、名刺を交換したはずだ。

こちらから電話することはないと思い登録すらしていない彼の名刺を探す。


お目当てのものは角が潰れ丸くなっている。

もらった時からすでにこの状態だった。

無造作にポケットから差し出される名刺は交換など意味がないと言っているようだった。


しかし、シュウジにとって今相談できる唯一の人物だ。

時刻は22時過ぎ、彼ならまだ起きているだろう。

職場から帰っていないかもしれない。


そう思いながらプッシュ音を聴く。


「はい、生垣です。どうしました?」


電話に出た生垣は明らかに面倒臭いと言いたそうな声色だった。

あっちからは際限なく話すくせにと少しイラっとするが押し殺す。


「すいません、夜分遅くに。生垣さんに相談したいことがあって…。」


「ほう?」


先ほどより少し声に抑揚がつく、頼られるのは嫌いじゃないらしい。


「ゾンビについてなんですが…。」


「はいはい、その件ならなんでも聞いてください。あなたのおかげでいろんな仮説が生まれて前に進めていますから。進捗の話でもしましょう。」


シュウジは話が始まる前に間髪入れず本題に入ろうと割り込む。


「あれは多重人格か何かなんですか?」


意外にも生垣は無言で何も答えない。

何かまずいことを言ったのではないかと思い訂正しようとする。


「あ、いや…あの…」


「誰かに聞いたとかじゃないみたいですね。」


生垣はシュウジの無言を肯定と見做し続ける。


「こんなこと公表すれば頭がおかしいと思われてこの職も外されかねないですからね。誰にも言ってない。なのにあなたが知ってると言うことは何か確信するような事象に出会ったんですね?」


「…はい。」


話すべきか迷ったが恐怖も興味も生垣が晴らしてくれる気がして期待する。

シュウジは名前や特徴こそ控えたものの桔梗について聞いたことや感じたことを話す。


「なるほどなるほど。素晴らしい。あなたはゾンビに好かれてますねぇ。」


「勘弁してください。」


苦笑いをしながら首を振る。


「ふむ、それならば申し訳ないが取調室の方まで来てもらいたい。電話で話すのはリスクがありすぎる。支給の携帯なんでね。直接会って話しましょう。あそこなら録音録画さえ切ればなんの情報も漏れることはないでしょう。」


「今からですか?」


時間帯と多田部長の言っていたマスコミのことを思い出す。


「そうです。今だからこそいい。周りにいるマスコミも日中より少ない。車で敷地に入ってさえしまえば大丈夫でしょう。着く前に連絡をください。警備室には私が伝えておきますから。」


シュウジの心配など見透かしているかのようにあっさり心配事を解決される。

このまま自宅待機していたい気持ちはある。

勝手に仕事場に出ることは部長たちにはいい心情は与えないだろう。

しかし、不安が募り続ける今の状況に耐えられないシュウジは着の身着のまま家を出ていた。

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