表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『俺のオヤジが最強すぎて勇者を廃業したんだが ~最強の魔王を育て上げ、俺をバカにした世界に復讐しようと思う~』  作者: autofocus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/153

第三十一話:戦域の影、宮殿の灯

最終防壁を背に、俺は一人ゲシュタールの荒野を進む。

 目的地である廃鉱山は平原の北東に位置し、現在地からは対角線上の真反対だ。最短距離で突っ切れば、そこには王国軍と「偽魔軍」が激突する地獄の中央戦線が待ち構えている。


「……正気を疑われるな。迂回するぞ」


俺は中央を避け、南側の外縁を大きく回るルートを選んだ。

 道中、目に入る光景は凄惨の一言に尽きた。放置された死体が腐臭を放ち、折れた剣と破れた軍旗が風に虚しく翻っている。王国軍の死体ばかりが目立つ。


(ヴィンセント……お前はどこにいる。この地獄のどこかに……)


親友の顔がよぎり、胸が締め付けられるような痛みを感じた。

 日は落ち、辺りは不気味な薄暗闇に包まれる。ゲシュタール南部に広がる広大な雑木林。ここなら身を隠せる。俺は林の奥で小さな焚き火を熾し、堅い干し肉を噛み砕きながら思考を巡らせた。


(ノインやリリカは無事か。まあ、あそこにはイザベラがいる。最悪の事態にはなるまい……)


そう自分に言い聞かせ、俺は泥のような眠りに落ちた。


一方その頃――魔界・絶界宮

「いやぁぁ〜! 西門が危ないですぅ〜! ちょっと待って、あっちからも敵がいっぱい来てるんですけどぉ!」


絶界宮の回廊に、四天王リリカの情けない絶叫が響き渡っていた。

 軍師グリル不在の隙を突いた敵の急襲。統制を失った宮殿内は、パニックに陥っていた。


「イザベラ様はどこに行ったのよ!」

 リリスが近くの下級魔族の首根っこを掴んで怒鳴りつける。

「よ、夜の配信があるとかで、部屋にこもっておられます!」

「配信ぃ!? こんな時に何考えてんのよ! 早く呼んできなさい!」

「無理です! 近づくと叱られます!」


「くっ……! 私が行くわ!」

 リリスがイザベラの部屋に辿り着くと同時に、重厚な扉が静かに開いた。


「あらリリスちゃん。どうしたの、そんなに血相を変えて」

「どうしたのじゃありません! このままじゃ絶界宮が落城しちゃいますよ!」

「はいはい、わかったから。どいて」


悠然と歩き出したイザベラは、中庭の中央に流麗な手つきで魔法陣を描き、その中心に立った。


「魔力を高める時間が必要だったのよ」

 不敵な笑みをリリスに向け、彼女は詠唱を開始した。

 イザベラの足元から純白のオーラが爆発的に膨れ上がり、やがてそれは宮殿全体を包み込む巨大な結界へと成長する。


結界に触れた「偽魔軍」の兵たちは、悲鳴を上げる暇もなく光の粒子となって消滅していく。


「ふぅ……とりあえず、これで大丈夫かしら」


圧倒的な力を見せつけられ、呆然とするリリス。

 だが、涼しい顔をして扇子を仰ぐイザベラの額には、一筋の汗が滴り落ちていた。


(……アステリオ、早く帰ってきなさいよ。私だって、そう長くは持たないんだから……)


宮殿を守る大結界。その光の裏で、イザベラは一人、アステリオの帰還を静かに祈っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ