第二十六話:亡霊の再会
「ルカ、ここにいて彼女を守れ!」
俺は叫ぶなり、警告を背にして森の奥へと駆け出した。
木々を切り裂くように突き進む。枝が頬をかすめるが、そんなことはどうでもいい。先ほど感じた冷徹な覇気は、森全体を支配するように俺の侵入を拒んでいる。
やがて鬱蒼とした獣道が途切れ、月明かりが差し込む開けた空間へと飛び出した。
そこには、一人の影が静かに立っていた。
足元には、先ほど女性が助けを求めていた両親のものと思われる二つの死体が、無惨に転がっている。俺の腹の底から、形容しがたいほどの激しい怒りがせり上がってきた。
俺の気配に気づいたのか、その影がゆっくりとこちらを向く。
「……アステリオ。」
掠れた、だが聞き覚えのある声。影がそう呟いた。
「なぜ……俺の名を。貴様、何者だ!」
問いかけながら、俺は言葉を失った。
月の光に照らされたその顔を見た瞬間、心臓が凍りついたかのように鼓動が止まる。俺は、ただ呆然と立ち尽くすことしかできない。
影は、俺との距離を詰めてくる。
かつて死んだはずの男が、俺の目の前で、生前と変わらぬ穏やかな笑みを浮かべた。
「アステリオ……大きくなったな」
その言葉は、俺の記憶の奥底に封じ込めていた重い扉を、容赦なく粉砕した。
震える口元から、掠れた声がこぼれ落ちる。
「……親父……?」
伝説の勇者。俺が最も憧れ、そしてその死を誰よりも嘆いたはずの、俺の父親だった。




