第四章:第四話「騎士の矜持と封印の秘宝」
「うおりゃぁあああああ!!」
ガリウスが咆哮とともに大斧を豪快に振り上げる。凄まじい衝撃とともにアビス・ゲイザーの強固な胸当てが粉々に弾け飛んだ。剥き出しになった核へ、城壁から放たれたエルフの矢が吸い込まれるように正確に突き刺さる。
「うおりゃぁああああああああ!!」
休む間もなく次の標的へと大斧を叩きつけるガリウス。ともに出撃した騎兵たちも、彼の背を追うようにアビス・ゲイザーの胸当てへ集中的な攻撃を繰り出していく。
だが、人並外れた膂力を持つガリウスとは違い、常人である騎兵たちは次第に苦戦を強いられていった。アビス・ゲイザーは倒しても倒しても、後から後から洪水のように地平の彼方から湧いてくる。
やがて、突出したガリウスたちは黒い魔獣の群れに完全に飲み込まれ、四方を囲まれて防戦一方となった。死の影が色濃く漂い始めたその時、城壁の上から戦場を震わせる女の声が響き渡った。
「あんた!!! 何もたもたしてんのよ!!! 今日の晩飯抜きだからね!!」
腰に手を当て、凛然と立ち塞がるのはイザベラだ。ガリウスは血飛沫の中で上を向き、ニヤリと不敵に笑った。
「わかってらぁ! 今片付けるからよ!」
イザベラの叱咤――彼女なりの応援に奮い立ったガリウスたちの刃が再び熱を帯びる。しかし、依然として圧倒的な数的不利に変わりはない。そこへ、城門付近に陣取ったイザベラ率いる魔導部隊が本格的な援護を開始した。
イザベラの放つ広域遅延魔法が戦場を覆い、アビス・ゲイザーたちの俊敏な動きが目に見えて鈍る。その隙を突き、ガリウスたちは何とか包囲網を突破。雪崩れ込むように城内へと逃げ込むことに成功した。
「はぁ、はぁ、はぁ……っ」
肩で大きく息をしながら、ガリウスは悔しげに閉ざされた門の先を睨む。そこへ、装備を整えたヴィンセントが駆けつけた。
「ガリウス、よくやった。イザベラの魔法で奴らの動きが鈍っている今が好機だ。私は精鋭を連れて囲みを突破し、古代遺跡へ向かう」
ヴィンセントの手には、古めかしい輝きを放つ装飾品が握られていた。
「王より遺跡封印の秘宝を預かった。遺跡そのものを封印しなければ、こいつらは永遠に湧き出てくる。……根源を断たねば勝機はない」
「わかった。城のことは任せろ。一匹たりとも中へは入れねぇよ」
ガリウスの頼もしい言葉に、ヴィンセントは短く笑いかける。だが、次の瞬間には一国の指導者としての峻烈な表情に戻り、剣を高く掲げて号令を下した。
「今こそ王国騎士の誇りを見せる時だ。……私に続け!!!!」
再び城門が開き、ヴィンセントとともに選び抜かれた精鋭騎士たちが、魔の渦巻く戦野へと駆け出していく。
最後の一人が飛び出したのを確認し、ガリウスは自らの手で城門を固く閉ざすと、喉が張り裂けんばかりの大声を張り上げた。
「野郎ども!!! ここが正念場だ! ヴィンセントを信じて、奴が戻るまで耐え抜くぞ!」
「おおおおおおおおおおおおお!!!」
主を信じ、友を信じる。王国軍の魂を賭けた死闘は、いよいよその激しさを増していく。




