表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『俺のオヤジが最強すぎて勇者を廃業したんだが ~最強の魔王を育て上げ、俺をバカにした世界に復讐しようと思う~』  作者: autofocus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

208/215

第百四十九話:束の間の凪、そして胎動(第三章最終話)

北の果て、凍てつく辺境の地に隠された地下施設。

 ゼインは、怪しく光る培養液の中に浮かぶゼニスを、ガラス越しにうっとりと眺めていた。先の戦いで損傷し、修繕を受けているかつての英雄――その肉体は、今や人の理を外れた不気味な脈動を繰り返している。


「ゼニス……早くしないと、モルガウスの『星喰』が終わってしまうよ。君という最高の駒を、あの老人に先を越されるのは癪だからね」


その時、培養液の中でゼニスの両目が見開かれた。

 意志の欠落した、虚無の深淵。刹那、凄まじい衝撃波が内側から放たれ、強固な強化ガラスが「バリン!」と派手な音を立てて砕け散る。


飛び散った破片がゼインの頬を浅く切り裂き、そこから紫色の不気味な血が滴り落ちた。ゼインはそれを指で拭うと、恍惚とした表情でペロリと舐め、ニヤリと笑った。


「おはよう、ゼニス。……ククク、ギリギリ間に合ったようだね」


王都を包んでいた戦火の煙が消えてから、数週間。

 瓦礫は片付けられ、市場には活気が戻り、街は穏やかな落ち着きを取り戻していた。


ヴィンセントは連日の公務に明け暮れていたが、その隣ではリリスが、有能な側近として、そして良き理解者として公私共に彼を支えていた。


アステリオの傷もようやく癒え始め、今では杖を突かずに歩き回れるまでになっていた。彼は一日の日課として、リナが養生を続けている離宮の一室へと向かった。

 ドアを軽くノックすると、中から「はい」という、透き通った声が返ってくる。


数日前、リナはようやく意識を取り戻した。

 グラシャの献身的な治療魔法によるところが大きいだろう。彼女は全ての魔力を使い果たすほどリナに尽くした後、「少し、故郷の冷たい水が恋しくなりました」と微笑み、絶界宮の先にある静かな湖へと帰っていった。

 イザベラもまた、戦後の混乱を収めるためにガリウスのギルドを手伝い、相変わらず喧嘩をしながらも仲睦まじくやっているようだ。


アステリオは部屋に入り、リナのベッドの横にある椅子に腰を下ろした。

 彼はリナの細い手を、壊れ物を扱うように優しく、そっと握る。リナがそれに応えるように、愛おしげな微笑みを浮かべた。


「コンコンコン」


小さなノックの音と共に、ノインが顔を出した。

「パパ、リナお姉ちゃん!」

 ノインは当然のようにアステリオの膝の上に座り、二人の顔を交互に見ながら、太陽のような笑顔を浮かべる。


開け放たれた窓から、花の香りを孕んだ優しい風が流れ込み、カーテンを揺らした。


まだ、何も終わってはいない。

 北の脅威も、遺跡の狂気も、明日には再び牙を剥くかもしれない。

 だが……。

 

「今はただ、この幸せに包まれていたい」


アステリオは心の中でそう呟き、愛する者たちの温もりを感じながら、静かに目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ