表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『俺のオヤジが最強すぎて勇者を廃業したんだが ~最強の魔王を育て上げ、俺をバカにした世界に復讐しようと思う~』  作者: autofocus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

122/165

第六十三話:翠緑の監視者、再会の灯火

森の奥深くから、さざ波のような声が響いてきた。それは聞き慣れた王国の言葉ではなく、風や木の葉が擦れ合う音に近い、古の響きを宿した言語だった。アステリオにはその意味を解することはできない。


「俺はアステリオ。……敵意はない!」


俺の声が木霊する。だが、その言葉が終わらぬうちに、返答の代わりに数本の矢が虚空を切り裂いて飛来した。


――ッ!


俺は反射的に再誕した聖剣を抜き放ち、鋭い金属音と共にそれらを叩き落とした。切っ先を構え、森の闇を見据える。

 一帯を刺すような緊張が支配した。流れる風の音だけが、この一触即発の空気に干渉することなく、ただ漫然と吹き抜けていく。


やがて、静かに森のとばりが開き、一人の女が姿を現した。


息を呑むほどに美しい。長く尖った耳、神秘的な佇まい。古の伝承に語られる「エルフ」の民に相違なかった。


「……あなたは敵ではないようですね。仲間の無礼をお許しください」


女は静かに頭を下げた。驚いたことに、彼女はこちらの言葉を流暢に操っていた。


「……俺はアステリオ。友を探してここまで来た」


俺は剣を納め、藁にもすがる思いで切り出した。


「名は、ヴィンセントというんだ」


俺はあいつの特徴を細かく、記憶を絞り出すようにして伝えた。逆立った髪、鋭い眼光、そして何より、あの戦場で誰よりも気高く戦っていたはずの男の姿を。


女は表情を変えずに俺の話を聞いていた。その瞳は、万物を吸い込みそうなほどに青く、深い。


やがて、彼女は静かに口を開いた。


「……その御方なら、私たちの村で匿っています」


「――ッ!!」


俺の心臓が跳ね上がった。


「今はまだ深い傷を負い、動くことは叶いません。ですが、じきに良くなるでしょう。森の癒やしが、彼の命を繋ぎ止めています」


「本当か……! 本当に、ヴィンセントが生きているんだな……!!」


膝の力が抜けそうになるほどの安堵。

 この地獄のような戦場を駆け抜け、死体の山を越えてきた旅路が、ようやく一つの「光」に辿り着いた。


俺は溢れ出す喜びを抑えきれず、天を仰いだ。

 ヴィンセント。あいつはやっぱり、あんなところで終わるような奴じゃなかったんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ