表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『俺のオヤジが最強すぎて勇者を廃業したんだが ~最強の魔王を育て上げ、俺をバカにした世界に復讐しようと思う~』  作者: autofocus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

117/193

第五十八話:偽りの愛、虚無を裂く拳

どこまでも続く、果てのない白。

 その世界の真ん中に、一人の少女が膝を抱えてうずくまっていた。

 燃えるような赤髪は今や色褪せ、その小さな肩は孤独に震えている。


「……イザベラ、なのか?」


ガリウスは戸惑いながらも、その傍らへ歩み寄り、声をかけた。

 ゆっくりと顔を上げた少女の瞳は、驚くほど透き通っていた。だが、そこには幼子には不釣り合いな、深い深い悲しみの色が湛えられている。


ガリウスは無造作に彼女の手を取り、力強く言い放った。


「帰るぞ。こんな場所に長居するもんじゃねぇ」

「……嫌」


少女は、拒絶の意思を込めてその手を振りほどいた。


「どうした。早くしねぇと、俺もお前も戻れなくなるんだぞ!」


苛立ちを隠せないガリウスの怒声が、静寂の白を震わせる。だが、少女はただ、消え入りそうな声で呟いた。


「……私は、誰からも愛されてないもの。ここにいた方が、マシなのよ」


その言葉が引き金だった。

 二人の目の前に、一人の女が忽然と姿を現した。

 立っているだけでむせるような色香を撒き散らし、見る者を惑わす美貌。ガリウスはその女の顔を、そしてその冷酷な本性を、嫌というほど知っていた。


「あんた……。死んでまで、いつまでイザベラを苦しめれば気が済むんだッ!」


ガリウスの喉から、煮え繰り返るような怒気が漏れた。


【追憶:泥にまみれた放課後】

幼い頃のガリウスは、誰の手にも負えない「ワル」だった。

 毎日誰かと喧嘩をし、同級生を泣かせ、教室では腫れ物に触れるように孤立していた。

 そんな彼の数少ない「友人」と呼べるのは、アステリオ、ヴィンセント、そしてイザベラくらいだったが、成績の悪いガリウスは彼女たちとクラスが離れており、学校という場所は彼にとってただの孤独な檻でしかなかった。


ある日の放課後。一人で帰路についていたガリウスは、見覚えのある門の前で立ち止まった。

 そこに、イザベラがいたからだ。

 彼女は門の前で、声を殺して泣いていた。


「おい、イザベラ……どうしたんだよ」


ガリウスが駆け寄ると、彼女は弾かれたように立ち上がり、乱暴に涙を拭った。


「な、なんでもないわよ! あんたに関係ないでしょ!」


強がる彼女の背後で、重々しい門が開いた。

 中から出てきたのは、見知らぬ男にしなだれかかる、イザベラの母親だった。

 また新しい男を見つけたのか――ガリウスがそう直感した瞬間、女の視線が自分の娘へと向けられた。


それは、実の親が子に向けるものではなかった。

 まるで足元に転がる「汚物」でも見るかのような、底冷えのする侮蔑の眼差し。

 女は一言も発することなく、小銭の入った袋をイザベラの足元に投げ捨てると、男と共に馬車へと消えていった。


声もかけられず、ガリウスはただ立ち尽くしていた。

 イザベラは落ちた袋を拾い上げ、震える唇で、無理やり歪な笑みを作った。


「……やっりぃ、お小遣いもらっちゃった。ねぇ、何か奢ってあげるわよ」


そう言った彼女の瞳が、どんな叫び声よりも悲しく濡れていたことを、ガリウスは一生忘れないだろう。


【再び、精神の深淵へ】

ガリウスは、目の前の「母親の幻影」を射抜くような視線で睨みつけた。

 この白い世界は、彼女の絶望が作り出した檻だ。


「おい、イザベラ。よく聞け」


ガリウスは少女の前に立ちはだかり、幻影を背にする。


「お前が愛されてねぇだと? 笑わせるな。俺が……俺がどれだけ必死にお前を追ってきたと思ってやがる!」


幻術の通じないガリウスの拳が、精神世界の理さえも歪ませるほどに硬く握られた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ