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『俺のオヤジが最強すぎて勇者を廃業したんだが ~最強の魔王を育て上げ、俺をバカにした世界に復讐しようと思う~』  作者: autofocus


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第四十三話:新生の曙光、星を穿つ一閃

――キンッ!!


最後の一撃が、静まり返った坑道に高く、鋭く鳴り響いた。

 イグニールの振り下ろした槌が火花を散らし、灼熱の鋼に命を吹き込む。その瞬間、工房を満たしていた熱気が、まるで掃除機に吸い込まれるように一振りの剣へと収束していった。


「……完成だ。持ってけ、小僧」


イグニールは荒い息をつきながら、金床の上に横たわる「それ」を指差した。

 かつての聖剣『ブレイバー・エッジ』の面影を残しつつも、その姿は劇的に変貌を遂げていた。刃の表面には銀河のような細かい煌めきが走り、つばの中央にはアステリオの右手の紋章と同じ、逆五角形の蒼い輝石が埋め込まれている。


アステリオは震える手で、その柄を握りしめた。

 熱い。だが、それは火の熱さではなく、生きている魂の鼓動だった。


***


工房を出ると、冷え切った山の空気がアステリオの頬を撫でた。

 東の空が白み始め、厚い雲の隙間から黄金の陽光が差し込んでいる。『灰塵の顎』の無惨な岩肌が、朝日に照らされて一瞬だけ輝きを取り戻したように見えた。


「夜が明けるな……」


アステリオは朝日を見つめながら、腰に帯びた新たな聖剣に手を添えた。

 父、ゼニス・レイ・ブレイバー。かつて世界を救い、今その世界を壊そうとしている男。その息子として、自分は何を成すべきか。


「親父……あんたが背負った絶望も、俺が全部引き受ける。それが、あんたの名前を継いだ俺の……アステリオとしての答えだ」


決意を口にしたその時、岩陰からどす黒い殺気が膨れ上がった。


「――ヒヒッ、見つけたぞ。あの方の血を引く、迷い子のネズミをよぉ!」


卑俗な笑い声と共に、影の中から三体の魔族が躍り出た。

 『偽魔軍』の斥候せっこう――下級のレッサーデーモンだ。歪んだ角と蝙蝠のような翼を持つ奴らは、アステリオが手に持つボロ布に包まれた獲物を見て、小馬鹿にしたように爪を研いだ。


「そんななまくらで、俺たちの皮膚が切れると思ってんのかァ?」


魔族の一体が、嘲笑いながら弾丸のような速さで突っ込んでくる。

 アステリオは冷静だった。以前の自分なら、この速さに反応するだけで精一杯だっただろう。だが今は、敵の動きが緩やかな水流のように見える。


「……試させてもらうぞ。アステール」


アステリオの手の平の紋章がカッと熱を帯びた。

 鞘から抜き放たれたのは、鉄の音ではなく、星が瞬くような清らかな高音。


「はあぁッ!!」


無造作に放たれた横一文字の薙ぎ払い。

 刃が空気を切り裂いた瞬間、そこには銀色の光の帯が尾を引いて残った。


――ズバッ、という手応えすら、そこにはなかった。


突進してきた魔族は、自分の身に何が起きたか理解することすら許されなかった。アステリオの剣が通り過ぎた軌跡に従って、その肉体が紙細工のように真っ二つに裂け、切り口から青白い星の粒子を噴き上げながら霧散していく。


「なっ……バカな!? 一撃で、ガザルが……っ!?」


残りの二体が驚愕に目を見開くが、もう遅い。

 アステリオが軽く剣を振ると、切っ先から放たれた衝撃波が真空の刃となり、逃げようとした魔族の胴体を易々と消し飛ばした。


静寂が戻る。

 そこには、魔族の死骸すら残っていない。ただ、朝日に溶けていく微かな光の粒があるだけだった。


「……すごいな。これが、新生した力か」


アステリオは自らの手にある剣を見つめた。

 かつて父の背中に見た「圧倒的な光」が、今、自分の手の中に確かにある。


「待ってろよ、親父。今、行く」


アステリオは一度も振り返ることなく、陽光の降り注ぐ平原へと一歩を踏み出した。

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