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5話 名も無き魔人

「ここに御客人が訪れたのは実に何年ぶりだろう。とても気分が良い......今日は実に良い日だ」


 今、こいつ......なんて言った?魔人、とか何とか?

 まさか魔物......!?


「あぁ、怖がらせてしまったのなら申し訳ない。どうか、警戒しないでほしい。私に敵対の意思は無いし......君に危害を加えるつもりもない」


「そんなの、分からないじゃないか!」


「言ったろう、君は私の御客人だ。わざわざこんな所まで足を運んできてくれた客を歓迎こそすれ、無礼など働ける道理はないよ」


「でも......」


「まぁ、私は魔人と呼ばれているからね。人に恐れられてしまうのも、無理は無い。現にこうやってこの地に縛り付けられているわけだしね」


 そう言って、自らを魔人と言った影は器用に肩をすくめたように見えるような揺らめき方を見せる。

 この地に縛り付けられている?封印でもされているのか?


「縛られてるって、封印されてるとかそういうことなのか?」


「!......あぁその通り。もうずっと長い時間......この地に封印されているね。年月を数えるのをやめたのはいつだったか」


 どこか遠い方を見つめるように、誰に話すでもなくそう言う魔人。

 そんな魔人の姿に、俺は何故か、不思議と親近感を覚えた。


「何で封印なんか、されたんだ」


「それが思い出せなくてね。封印された理由もそうだが......私は、私に関することのほぼ全て......名前も何も、忘れてしまっている。唯一覚えているのが、私が魔人と呼ばれていたということだけ、というわけだよ」


「何故かも分からないのに封印されて、嫌じゃないのか?」


「最初の頃は、何故私がこんな目に?なんて思わないわけでもなかったかな。けれど、どれだけ出ようと試みても無駄と分かってからは色々と諦めがついた......これが答えになるだろうか」


「そうか......」


 この魔人は数え切れない程の年月の間、理由も分からずこの場所に封印されてきたのか。目の前の魔人......影は飄々とした態度をとっているが、理不尽だと感じていたと思う。俺が見ても、これは理不尽だ。情が移った訳では無いが、親近感がわいた理由がなんとなく分かってきた。


「ところで......ありがとう」


「え、何が?」


「私が魔人だと告げても、話を聞いてくれたね」


「まぁ......色々と、気になることとか、あったし。他にも聞きたいこととかあるし」


 これは事実だ。現状、完全な打開策がある訳ではない。その為、封印されているとはいえこの地に少しは詳しいだろう魔人に、いくつか聞きたいことがあった。


 なので、そのいくつかを聞こうとすると、


「初めてなんだ。こうやって会話ができたのは」


「え?」


 魔人が、ぽつりと語り出す。


「過去にも、君のように人間がこの地を訪れてきたことが何度かあった......まぁ彼らは盗賊やら、欲張りな兵士やら、あまり褒められた者ではなかったが、それでも私は気分が高揚したものだ。何せこんな地だから、独りでいるしかないものでね」


 無言で、自分のことのように聞き入る。


「だから彼らと少しでも会話できれば、なんて思って......話しかけてみた。しかし......私はほら、魔人と呼ばれる存在だろう。人間からすれば恐怖の対象でしかないようでね。彼らは皆一様に、狂ったように叫び泣きわめきながら一目散にこの地を離れ......そうして私はまた独りになった。だから今回もそうなるだろうと思って期待はしていなかったんだが、君は応えてくれた。ありがとう」


 やっぱり、そうだ。この魔人は......


「おんなじだな」


「何が、かな?」


「俺も、この世界に来て......多分ちゃんと会話できたの、あんたが初めてだ」


 魔人に親近感がわいているのと同様に、俺自身、人と会話できることに喜びを感じていた。確かに、相手は得体の知れない魔人という存在だったが、会話することに人も魔人もありはしない。


「訳ありなのかね」


「まぁな。この世界にやってきた時、多分王様か何かにあったんだが、何が何やら、悪魔扱いされちまって......そのまま捕まって“身投げ谷”?ってとこから突き落とされて処刑された。ま、こうやってピンピンしてるから、マジで悪魔なのかもしれないな!」


「なんと......」


 後半は半ば自虐混じりに、吐き捨てるように言った。だが、魔人はこれでもかと言わんばかりに真剣に俺の話を聞いてくれているようだった。


「ん、君、先程から“この世界”、という表現を多用するが......差し支えがなければ、理由を聞いてもいいかな?」


「あー、でも多分信じられないと思うぞ?俺自身よく分かってないし、その......」


「無理にとは言わないさ。君も色々あって......今は人を信じられないといったところなのかな。だが私は聞き入れる。会話を始めたのは私、応えてくれた君に対して、それは絶対の義務だ」


 俺の、話を、ちゃんと、聞いてくれる......?

 俺は意を決して、自分の身の上を話すことにした。


「俺は、転生者なんだ。向こうで事故にあって、目が覚めたらこの世界にやってきていた」


 くそ、言っちまった!笑いたきゃ笑え!こうなったらもう何でも来い!


「なるほど!実に良い日だ!まさか転生者に出会えるとは!」


「へ?疑わないのか?」


「疑うはずがないとも!御客人たる君の言葉だ!信じるより他あるまい!」


「はぁ......」


「まぁそれに、先程も言った通り、君はすごく強大な力を内に秘めているように見える。君が転生者であると聞いて、なるほどと思ったのだよ」


 強大な力?俺が?


「いや、ねぇよ!そんなわけない!」


「ん?何故そう思うんだね?」


「だって、城の兵士のひとりに、【鑑定(チェック)】って魔法をかけられて、俺のステータスか何かを見られたはずなんだ!力があったんなら、今俺はあんたに会えてなかった!」


「む?【鑑定(チェック)】?......ははぁ、なるほど」


 魔人が1人合点がいったかのように頷く。

 なんだ?何がなるほどなんだよ?


「どういうことだよ......?」


「まぁ落ち着いて聞きたまえ。いいかな?......【鑑定(チェック)】とは自分の知り得る範囲の力や情報、その限りの内情を相手または道具やオブジェクトから引き出す魔法だ。つまり、知りたい情報に関して、ある程度は知識を持っておかなければならない」


「え......?」


 それって、つまり......



「君には力がある。【鑑定(チェック)】を行った者の知りえない力が、ね」

遂に義輝の隠された力が!

しかし覚醒はまだ先ですので、しばらく続く義輝と魔人の会話にお付き合いいただければと思います。

誤字脱字、その他何かありましたらよろしくお願いします。

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