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3話 理不尽

 俺、樋川義輝。遂に新弾発売日を迎えた大人気TCG「デュエル・フロンティア」が大好きな、どこにでもいる一般大学生。

 そんな俺だけど、今どこにいると思う?大学?カードショップ?いや、違うんだ。正解は……


「ここから出してくれ!!」


「うるさい黙れ!この悪魔め!」


 あらぬ嫌疑をかけられて絶賛牢屋の中、だ!一体どういうことだってばよ!?

 また意識を失ったと思ったら、目が覚めるとこの有様だ。くそ、何だって捕まらなきゃならないんだ!


 おまけに手足は拘束されているときてる。はは、これじゃ完全に悪者扱いだな……


「次また騒いでみろ、その口二度と満足に開けないようにしてやるからな」


「……」


 牢屋の前にいる兵士の人に釘を刺される。その目つきは、いかにも犯罪者に対するソレだった。相手を同等の人間としてみなしていない、蔑みと非難だけを宿したような……


 兵士達はどうにも俺の話を聞いてくれそうにない。そもそも、会話が成り立つかどうかも分からない。声をかけるのはもうやめにしよう。彼らも、仕事でやっているわけだし、いちいち牢屋の中にいる人間の声に耳を傾けている暇はないんだろう……俺は何もやってないんだけどなぁ。


 ひとまず冷静になることから始めるとするか。よし、落ち着け俺……こんな薄暗くて狭い所によく分からないまま閉じ込められて焦る気持ちはよく分かるぞ。なんたって俺だからな。

 だけど、だからといって泣きわめいていても事態は良くならない。寧ろ悪くなるまである。ならここはぐっと堪えて落ち着くんだ。何か解決策の一つや二つ、考えていた方が気が楽だし、何となくお得な気分だろう?うん、きっとそうだ。


 自問自答を何度となく繰り返して、ようやく落ち着きを取り戻す。

 落ち着いたところで、状況を整理してみようと思う。まず、俺は元いた世界で、カードショップに向かっていたところだった。自転車に乗っていたな。そして、事故にあって、死んで……

 気づけば、この異世界にやってきたわけだ。無数の兵士達に囲まれながら。しかし何でまたあんな場所に……?


 あれ、でも異世界転生先がお城の中っていうのは、どちらかといえば王道ってことでいいのだろうか。でもあのジジイ……陛下とか呼ばれていたな、あいつは転生者は魔法陣なんかで呼び出せるものではないとか言っていた。

 ということは、こんな城のど真ん中に転生してくるなんてことはあり得なさそう……ってことになるのか?うーん分からん。まぁ俺は異世界初心者だからな。


 そもそも何で俺のことを悪魔だなんだって言ってくるんだ?そこがまず分からん。

 それこそ、城のど真ん中に悪魔がぽっと出てくるとかあり得るのか……?目の敵にしているような存在をみすみす自分の領域(テリトリー)に迎え入れるとか、あるか?普通。もしかすると異世界基準だとメジャーな部類になるのかね。

 悪魔なら何でもあり、とか?そうだとしたらめちゃくちゃ俺に都合悪いじゃねぇか……何だよこの異世界!


 ......待て待て。これじゃ落ち着いた意味が無いじゃないか俺。確かに面倒なことに変わりはないが、それでも人間同士の揉め事じゃないか。それなら何とか話し合いで解決できる道もあるはずだ。


 考えてもみろ。ここは見るからに立派な城で、あのすごい髭のジジイは......陛下とか呼ばれていた。多分王様か何かなんだろう。少なくとも人の上に立つ人間なのは間違いない。

 となると、そんな人間が、短絡的な......そう、それこそ感情に流されて物事を決めていいはずがない。そんな奴、人の上に立つ資格が無いしな。


 あのジジイの立場で考えてみよう......ジジイの目の前に、急に俺が現れた。故も何も知らない奴がいきなり現れたら、そりゃびっくりするだろう。俺もする。

 そうなると、人間冷静に物事を判断出来ないはずだ。


 つまり、あのジジイも、ああは言っていたが俺と同じでただテンパっていただけに違いない。きっとそうだ!


 そう考えると何だかすごく前向きになれる気がしてきたぞ。よし!あのジジイはきっとまた俺に会いに来てくれるはず!その時にちゃんと話し合いをするんだ。俺の身に何が起こっているのか、俺が分かる範囲で伝えれば向こうも聞いてくれるはず。何せ俺は悪魔なんかじゃなくて、れっきとした人間だし!


 そんな決意と期待を胸に秘めていると、牢屋を隔てた通路の向こうから、数人の足音が聞こえてきた。

 牢屋に身がくいこむ程に身を乗り出し、その足音の正体を確かめようとする。


 足音の正体は、予想通り髭のジジイと兵士数人だった。


「守衛!以後、変わりはないか?」


「はは!問題ありません!大人しくさせております!」


「結構!」


 ジジイも、その取り巻きの兵士達も、俺と同じように既に余裕を持った態度でいる。さっき対面していた時は心なしか瞳孔が開いていたような気がするし、やはりあの時はジジイもテンパっていて正常な判断ができなかったんだろう。分かるぞ。俺もそうだった。だから全て水に流そう......さぁ!ここから出してくれ!


「......何を笑っておるのだ?不快な奴め」


「またまた。分かってますって。あの時は色々と急なことで、テンパっていたんでしょう?大丈夫、俺もですから。さ、ここから出してください、お話があるのです」


「......守衛。こいつは頭がおかしくなってしまったのか?」


「わかりません!まだ、状況が飲み込めていないのだと思われます!」


 ん?何を言ってるんだこいつらは。


「ふん、流石は下賎な悪魔といったところか。余らを欺こうと必死であると見える。ここまでくると最早、哀れというもの」


 下卑た笑いと共に俺のことを見下してくるジジイ。

 え?悪魔?だから、違うって!まだ冷静な判断ができないのかよ!


「違うんです!俺は事故にあってこの世界に転生してきたただの人間で......!」


「ほう?まだ言うつもりか?では、何か見せてみよ」


「え?」


「貴様は転生者なのであろう。であれば、強力な力を内に秘めておるはず。強大な魔力......溢れんばかりの臂力といったような、な。何か一つでも、余らに示してみよ。さすれば、これまでの非礼、全て謝辞しよう」


 強大な......力だって?そんなの、あればとっくにこんな所抜け出せるじゃないか!くそ、何で俺には何も無いんだよ!?転生するならちゃんと力なり何なり与えてくれよ......!


「出来ないであろう?そうであろう!士官に言って貴様の能力...ステータスは既に【鑑定(チェック)】させてもらっておる。その結果によると貴様の能力判定は人並み!大方その辺りの村民の能力や状態を模写するような魔法でも使ったのであろうが......実に浅はか!実に愚か!余らに通じると思うたか?この悪魔め!」


「そんな......ちが......」


 何だそれ、どういうことだよ!転生者としてあるべき力をもってないってだけで、俺の話に聞く耳持たないっていうのか!?俺は力を持たずにこの世界に転生してきたんだ!そういうタイプの転生者だったんだよ!くそ!どうして話を聞いてくれないんだ!


「さて、貴様と話を続けるのもそろそろ不毛というもの。貴様の処遇が決まった故、聞くがよい」


「あ......嫌だ......」


 やめろ......やめろ......!


「存在そのものが罪たる貴様を生かしておく故も無し。よって、貴様は我が国の法令に則り絞首または断頭の刑に処す......と言いたいところであるが、仮にも貴様は悪魔。下手に殺したとて、余らの目を掻い潜り復活を果たすやも知れぬ。よって!」


 嫌だ......俺は違うんだ......!人間だ!


「“身投げ谷”にその身を落とすことでもって断罪とする......ふふ、あの谷には視界を遮る程の瘴気が立ちこめておる。瘴気の中では存分に魔力を使うことはできぬ。よって貴様も一度死ねばそれで終いという訳よ!」


「うわあああああ!!」


「はははは!兵士達よ!この悪魔を連れてゆけ!」


「「はは!!」」


 視界がぼやける。涙が溢れてどうしようもなくなる。嗚咽が酷くなり、思うように声が出ない。

 兵士のひとりに、頭から麻袋を被せられ、無理やり歩かされる。


「おら、さっさと歩け!」


「うぐっ、うぅっ、えうっ......うえぇ」


 兵士に連れられ、箱らしき中に強引に詰め込まれる。

 その間も涙は止まらず、思うように頭が働かない。ただ、どこかへ連れられているのだけが分かる。そして、その先は俺にとって良くない場所なんだ、ということだけが頭の中で理解ができる。


 そのまま何かに乗せられる。馬の嘶きが聞こえるので、馬車に載せられたのだろう。


「へ、良いところに連れてってやるからなぁ、悪魔さんよ!」


 兵士達の汚い笑い声が聞こえたような気がするが、どうでも良かった。ただただ、この状況が理解できず、夢であって欲しい、嘘であって欲しいと願い続けていた。

 だが、同時に、それは叶わない願いなのだろうことも分かっていた。


 しばらくして馬車の動きが止まる。


「ここが“身投げ谷”ね。何度来ても慣れねぇもんだ、この景色はよ」


「違いねぇ。見てみろよこの瘴気!こんな所に放り出された日にゃ、たちまち狂っちまってそのままあっさり逝っちまうってもんだぜ!」


 兵士達がしきりに騒いでいる。最早何を言っているのかも分からない。暗い。狭い。怖い。死にたくない。帰りたい。それしかなかった。


「よっこらせ、と」


「以外に軽いもんだなぁ」


「この悪魔痩せてっからな。ロクなもん食ってこなかったに違いない」


 死にたくない。死にたくない。帰りたい。


「よーし、荷台に乗ったな。いちにの、さんで蹴落とすぞ?いいな?」


 こんな終わり方は嫌だ。嫌だ。帰りたい。嫌だ。


「いち、にの.........」


 誰でもいい、誰か助けて。死にたくない。

 こんなの、こんなの、


「「さん!!」」



 理不尽じゃないか。



 ――ドゴォオオン!




 俺の視界は、再び真っ暗になった。

というわけで義輝にはハードモードで始めてもらうことになりました。

色々なことが一気に起きて、頭の中で話がうまくまとまらない様子を描こうとしましたが難しい…

誤字脱字、その他何かあればよろしくお願いします。

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