2話 見知らぬ天井
(眩しい...それに、何やら周りが騒がしい。一体何がどうなってるんだ?俺は今どうなっているんだ...?そもそも、俺はどうなったんだった...?)
自分に何が起こったのか、最後の記憶を朧気ながら紐解いていく。
(...そうだ。俺は確かカードショップに向かう道の途中で...バナナを食べてたっけ...それで...自転車に乗ってて...そうだ、信号を渡ろうとしたんだ。そこで...意識が...途絶えて...)
ー思い出した。俺は、あの時...事故にあって...死んだんだ...
記憶を掘り起こしていくうちにその事実にたどり着き、俺は未だ覚醒しないその頭の中で、誰に向けるでもない盛大なため息をついた。
(そうか...死んだのか、俺...はぁー...まぁ、そりゃ自分でも大した人生送ることはないだろうなーとは思ってたけどさ...こんな呆気なく死ぬなんて、なぁ...)
夢やら何やらは大して持ち合わせていないような、詰まらない人間だったとは自負していたが、だからと言って未練なく人生を送ってきたわけではない。寧ろ未練たらたらだ。例えば彼女の1人や2人欲しかったし、何なら童貞卒業だって済ませておきたかった。それに、
(よりにもよって何で新弾発売日に死ぬんですかねぇ...?)
一番解せない。神様とかいうヤツがマジでいやがるんだったら、ちょっと顔見せてほしい。そして一発殴らせてほしい。右と左の頬を俺に差し出せ。
(...そういえば、さっきから何だか眩しいぞ。なんだ?もしかして、これがあの世っていうやつなのか?おぉ...不思議体験...)
健吾にも見せてやりたかった。まぁ、死んでしまったので無理なんだが。死人に口なし、とかいうやつだな。
眩しいのもそうだが、周りが何やら騒がしい。死んだということに対して一人問答を続けていた時は気にならなかったが、それも今は落ち着いた。
(ん...?落ち着く...?おかしいな。俺は死んだはずだろ?死んだはずの人間が、落ち着くもクソもないような)
眩しいわ喧しいわでいい加減面倒くさくなってきたので、重いまぶたをゆっくりと開ける。
やっぱりめちゃくちゃ眩しい。すごい光だ!とても目を開けられていられない...!
...と思ったのだが、徐々に目が慣れていくことに気づく。
そうして、目の前に広がっていたのは、俺が想像に描いていたものに近い天国...!
等ではなく、見知らぬ天井だった。
(何じゃこりゃ!)
一目見て驚いた。その天井には、自分が今まで目にしたことのないような、荘厳かつ美麗な、ひとつの絵画とも言うべき装飾がなされており、明かりとなるべく多くの、これまた立派なシャンデリアが均等間隔に備えられていた。
(すげぇ...西洋のお城の中みたいだな、これ...あれ、そういえば、天井が見えるってことは、俺って今仰向けなのか?)
まぁ死んだんなら当然なのか?わからん。死んだの初めてだしな。
...いや死ぬの2回目な奴とかおる?おらんだろ。はは。
「め、目が醒めたぞっ!?」
ん?何だ?また一段と騒がしくなったな。
とりあえず上体を起こし、周りを見渡す。状況を確認しないとな。
さっきまでぼやーっとしていた視界も、今になってやっとくっきりしてきた。
すると、どうやら俺は今、だだっ広い...大広間だろうか?何故かそのど真ん中にて、何人もの人に囲まれていたのだった。
(えぇ...何この状況...)
...明らかに天国とかそういう感じのものじゃないな!この人達どう見たって人を出迎えようとしている風には見えないし!なんだこれ!?なんだこれ!?
先程までの落ち着きっぷりがまるで嘘であったかのようにテンパる俺。
つーかこんな状況でよくあんな寝てたな、俺!
くそ、全く状況が掴めん。一先ず彼らも同じ人間だ。話せばわかるはず...!
「あ、あのー!これは一体どういう状況でs」
「だ、黙らんか、悪魔めっ!」
「ひえっ」
囲いの中の、一際豪華そうな服に身を包んだ、一際偉そうな風体を醸し出しているすごい髭の人にいきなり怒鳴られ、思わず後込む。
なんなんだよ急にもう...こっちは訳分からんことの連続で、余裕無いんだよ!それをそんな、お前、怒鳴らないでくれよ!俺が何したっていうんだ!
「待ってくれよ!俺はただ話がしたいだけで...」
「黙れと言っておるのが分からんのか!この汚らわしい悪魔め!」
「悪魔の分際で、陛下に口答えするんじゃない!」
俺が話そうとすると、陛下と呼ばれた男が喚き出し、そして後ろにいた兵士らしき男二人がかりでその場に押さえつけられる。
ちょっと待ってくれよ!痛いって!それに...
「あ、悪魔!?俺が!?」
「そうであろうが!何が目的なのだ!?」
意味が分からない。この髭のすごいジジイは一体何を言っているんだ!?俺のことを...悪魔だと...?寝ぼけてんのか!?
「いや、俺は悪魔なんかじゃないですって。ただの人ですよ、人間です!」
「ふん。騙されはせぬぞ。そうして人を欺き、寝首を掻く...悪魔の常ではないか!」
「そ、そんな...違いますって!」
「ええい黙らんか!魔法陣が急に現れたと思ったら、貴様が現れた。これが何よりの証拠であろう!」
何だって?俺が急にここに現れたって、そう言ってんのかこのジジイは!?
ってことは俺は死んだっていうよりは...まさか転生!?じゃあここは異世界ってやつか!?
「へ、陛下。俺は...いえ、私は転生してきたのです!この世界に、飛ばされてきたのです!」
異世界で、実際俺が転生したとなれば話は早い!異世界の人間であるこの王様のことだ、転生者に関する言い伝えか何かがあって、きっと分かってくれるはずだ!
「何を言い出すかと思えば...もう少しマシな嘘は付けんのか?」
「えっ」
「転生者?何を言い出すかと思えば実に下らぬ。この世界において魔法陣から呼び出される存在といえば悪魔である、と相場が決まっておろう!そもそも転生者とは尋常ならざる力を持って突然この世界に降り立つ救世主様達だ。魔法陣などで呼び出すなどもっての外、ましてや貴様のように貧弱な者が、転生者であるはずがあるまい!」
いや知らねぇよそんな事!でも確かに転生者なのに力を持ってないっていうのは何かおかしい気がする!いや、俺が気がついてないだけで本当はすごい力を秘めてるとか?有り得る!これだ!
「陛下。【鑑定】を掛けてみましたが...やはり、この者は大した力を持ち合わせていない様子。如何致しましょう?」
「拘束具を付け、然るべき時が来るまで地下牢にぶち込んでおけ」
「待ってくれ、本当に俺は!」
「ええい!この悪魔を黙らせろ!」
「「は!」」
俺が意義を唱えるや否や、ジジイの怒号が鳴り響く。そして、
ドカッ!!
俺は再び、目の前が真っ暗になった。
さくさくと進めていきたいですね。
主人公義輝の明日はどっちだ。




