1話 プロローグ
初めまして。勢いで書き始めてみました。
未熟者ですがよろしくお願いします。
実に眠気をさそう昼下がり。時刻は午後2時を示しており、普通の人間なら既に昼食や昼休みを終えて活動を再開しているような時間だろう。
彼、樋川義輝はそんなことはなかった。彼にとっての普通は、昼過ぎの2時や3時、場合によっては夕食手前のような時間帯まで惰眠を貪り、寝起き特有のあの気だるさに理由の無い面倒臭さを覚えながらも取り敢えずご飯を食べるところから始まる。
一応言っておくと、樋川義輝はニートではない。今述べたことを傍からまとめて見ればただのニートでしかないのだが、少なくとも彼は平凡な大学生であり、そして今日は講義が無い日なのだ。だからと言って、講義がある日はいつも真面目に行っているのかというと少し違ってくるのはまた別の話だ。
「あー、今日土曜日...新弾発売日じゃん...」
目を覚まし、スマホでSNS等の新着やら何やらを確認しながらそう1人呟く。
実のところをいうと、彼は昨日(正確には今日)の深夜4時頃になって床についており、当然のことながらすこぶる眠気が酷い状態であった。本音から言うと、2度寝どころか3度寝の一つや二つ、かましたかったのである。
しかし、今日はそうも言ってられない事情があった。そう、新弾の発売日。
新弾とは、彼が愛してやまないトレーディングカードゲーム、「デュエル・フロンティア」の最新シリーズのことである。
そのことに気づいた(気づいてしまったと言うべきだろうか)義輝は、仕方なく上体を起こす。このまま寝そべっていたら、また寝落ちしてしまう。そうなると、恐らく次に目覚めるのは夜の7時とかその位の時間であり、流石に外出する気分にはならないのだった。
樋川義輝は広く浅く、熱しやすく冷めやすいミーハー手前のような人種だが、ことデュエル・フロンティア、通称DFに関してはプレイ歴10年を越える古参プレイヤーなのだ。
因みにDFは今年で発売15周年を迎える、カードゲーム界隈でも老舗にあたるタイトルであり、義輝と同年代もしくはそれより下の年代の中高生達は、誰しも1度は手に触れた経験がある程の人気を誇っている。少なくとも日本国内では、であるが。
「とりあえずショップ行くかな。あ、そうだ連絡...は、面倒くさいしいいか。健吾の奴もどうせ来るだろ」
健吾は義輝と同じく古参DFプレイヤーで、2人は中学以来の腐れ縁だ。2人はちょくちょく予定を合わせて近所のショップに集合し、ショップが閉まる時間になるまでひたすらDFの対戦をしたり、デッキを組んだり、またはそれ以外のことをして遊んでいる。
普段はショップに行く前にどちらかが連絡をよこして合流するというのが暗黙の了解になっていたが、義輝は健吾が新弾発売日は流石に1人でもショップに来るだろう、と踏み、あえて連絡をよこさなかった。もちろん面倒くさかったからだ。
義輝はそうと決まれば行動が早い。出かける準備を早々に済ませ、飯を作る時間が勿体ないとばかりに台所に置いてあったバナナを一本ひっつかみ、家を出る。
近所のショップまでは自転車で5分そこらだ。しかも行きは下りになっているので、ほとんど漕ぐ必要も無い。その分、帰りはしんどくなるのだが。
大学に入ってからというもの、義輝はめっきり運動をする機会に恵まれなくなったためか、足腰がもやしのように弱くなってきている。そのせいで、最近はショップの帰り道は生き地獄だ。
どうでもいいが義輝はデブではない。ヒョロガリである。
そんな訳で、もう幾度となく通ってきたショップまでの道のりを、バナナを頬張りながら進んでいく。
義輝はそこまで上手くもない口笛を吹きながら、ショップに着いてからのことを延々と考えていた。
ただ友達とカードをしにいくだけならそこまでテンションは上がらないが、新弾発売日となるとやはり心躍る。新弾のカードは情報として頭に入れているとはいえ、実際に自分の目で見て使ってみないことには始まらない。どう使うべきか、とか、既存のカードと相性が良い悪いだとか、とにかく新弾発売というイベントは、平凡な毎日を送る平凡な義輝にとって数少ない非日常体験なのだった。
義輝がバナナを食べ終わる頃には、ショップはもう目と鼻の先だった。
「よーし着いた着いた!あ、と、は、信号渡るだけ〜」
かなり上機嫌になりながら最後の信号前に着く。義輝も間抜けではないので、渡る前にチラと信号に目を見やる。信号が青であることを確認し、一気に駆け抜けようとする。
この日、もし、新弾発売日でなかったら。もう少しゆとりをもっていれば。これから起きる事柄は全く別の道を辿っていたかもしれない。
そう、いつもなら何の問題もなくそのままショップにたどり着き、自転車を停め、ショップで悠々と新弾のパック開封に勤しんでいたことだろう。
だが、その日は、いつもと少し毛色が違っていた。
「ちょっと!おい君!」
「へ?」
後ろから、何故か大声で義輝を呼ぶ声がする。それもかなり鬼気迫る感じだ。当然、そんな風に声をかけられることについて、義輝にはまるで理解が及ばなかった。
信号は、何故か赤を示していた。
――ドゴオオオオオオン!!
義輝は目の前が真っ暗になっていた。
三人称視点の方がいいのか、一人称視点の方がいいのか…
取りあえずこっちで書いてみます。




