#20 訓練場にて
大変お待たせいたしました。
やっと書き終わりました。
ポンキーの妊娠が判明してから十数日が過ぎ、ポンキーも体調が悪くなる事無く過ごしお腹の子もスクスク育っている様で大きくなっているのが目に見えてわかってきている。
煉紅郎達はというと・・・今日も今日とて訓練の日々である。
煉紅郎自身、骨折も完治し三角巾を取り去って久方ぶりにシャルル達に混ざって訓練に参加した。
(・・・鈍ってるな)
訓練に参加した煉紅郎が、いの一番に感じた事であった。
まぁ、そう思った所で何も変わらない事は煉紅郎も重々わかっているのでこの事は口には出さずただ黙々と訓練メニューをこなしていった。
以前は、ぶつくさ文句を言っていたアリステリアも今では黙々と訓練メニューをこなしている。そんな彼女の訓練に取り組む姿勢を見てか、王国騎士団の団員達の煉紅郎達の見る目が少しづつ変わって来ていた。
以前は、煉紅郎やシャルルと顔合わせても挨拶すらしない者が殆どであったのに最近では挨拶や軽い会話などはする様になった。それも殆ど部外者のラシュナートやジョジュにも同様にする様になって、徐々にではあるが煉紅郎達は騎士団の面々に少なからずや認められつつあった。
しかし、それを喜ばない者が居た。それは、王国騎士団団長のダリオン・ダグラムであった。彼は、城内にある騎士団の詰め所で頭を抱えていた。
彼の心中は穏やかではいられなかった。煉紅郎への関心の注目の仕方が自身の計画していた事は全く別物になっていたからであった。
当初、ダリオンの計画では、すぐさま煉紅郎を勇者として祭り上げて浮かれている所を魔王討伐に行かせるつもりだったのだが、煉紅郎の画策によってその計画は頓挫した。次の計画は煉紅郎の勇者としての名声を地に落とし、周囲からの重圧に負け焦って魔王討伐に向かう事を計画したが、現在、その計画も煉紅郎の地道な行動によって頓挫しかかっている。
「これはどういう事だ?」
「何の事でしょうか?」
ダリオンの怒声に中年の男が答えたが、それはダリオンが欲しかった返答ではなかった。
「何の事だと!?マクガイン!貴様、それでも我が王国騎士団の副団長を務める男か!?」
「そんな事を言われてもねぇ、自分は別段なりたくて副団長になった訳では無いんでねぇ」
「くっ!貴様それでも王国騎士団員か!あの偽勇者がモタモタしている所為でもし魔人どもが攻めてきたら如何する!?」
「この王都にですか?それとも国中で?」
「もちろん国中だ。そうに決まっているだろうが!」
「ほう。うん。では、ダリオン団長」
「なんだ」
「明日にでもその偽勇者達の訓練を見に行っては?」
「なに?」
「いつもは訓練場には居ないはずの団長がその場に居れば、偽勇者やその連れももしかしたら何かしらのトラブルを起こすやも・・・」
「なるほど!?そいつは面白いそのトラブルを見つけ次第、奴を糾弾すればきっと奴も早々に魔王討伐に向かう筈・・・フフフ、良いぞ良いぞ。こいつは良い・・・そうすればわしは、わしは、フフフハハハハ」
「機嫌が良くなって良かった良かった。ふぅ」
(この人がヘソ曲げるとめんどくさいんだよなぁ~。まぁ、今の関心は勇者を使って王位に近づく事みたいですね。勇者様には悪いですが、これもこの人が騎士団の団長なんてポジションに就いてしまった所為であって勇者様にはなんの落ち度もありませんよ)
頭の中で勇者である煉紅郎に謝りながら高笑いを上げるダリオンを余所にマクガインは詰め所を出ると空を見上げた。
空は晴れ渡り、雲一つ無い青空であった。
(さて、明日は何もなく終われば良いが・・・あの人はもう、何かにつけて文句言うつもりの様だが・・・まぁそんな事になったら矢面に立つしかないか・・・)
「・・・本当にめんどくさい・・・はぁ~」
そう言うとマクガインはトボトボと肩を下げながら何処ぞへ歩いていった。
場所は変わって訓練場の隅に煉紅郎達が集まっていた。
「で、一体コレから何するのよ?」
「ふむ。魔法を覚えてもらう」
「えっ!?」
「シャルルは少し前から座学から始めているんだが、皆、ある程度は戦える様になったようだからそろそろ戦闘訓練と平行して魔法の訓練を始めようと思ってな」
「理由はわかったけど、あんた、魔法使えるの?」
「いや、使えない」
「じゃあ、教えられないじゃない!?」
アリステリアは煉紅郎に詰め寄りながら文句を言い放つが、当の煉紅郎は何を言ってるんだという顔をしながらアリステリアの問いに答えた。
「誰も俺が教えるとは言ってない」
「じゃあ、誰が・・・」
「おっ、噂をすれば何とやらだ」
「えっ・・・」
アリステリア達が煉紅郎が指差す方を見ると訓練場の入り口からバルボドッサがエルミシリアを連れて此方に向かってやって来た。
「まさか・・・」
「そうそのまさか、俺は魔法の事は知識だけで実際扱う事は出来ないだからこの国で一番の博学者に手解きを頼んだんだ。バル爺だって魔法の一つ位出来る」
「どうしてバル爺が魔法を使えること知ってるのよ!それにお姉ちゃんがどうしてココに!?」
「バル爺は国の中でも重要な王に最も近くで仕える者の一人だ。緊急時に王族を護る為に魔法や幾つかの攻撃の手段位あるだろう。それと、姫さんはバル爺に頼んでた時に偶然通りがかって魔法に興味があるから参加したいって言うもんだから・・・」
「だからって・・・」
「文句があるなら『お姉ちゃん』に言いな。参加を認めた時点で俺にはその決定権は無い」
「そんな・・・」
「そんなに姉姫と一緒には居たくは無いのか?」
「そんな事無い!!」
「なら良いだろう・・・」
「でも!」
「文句なら直接本人に言え」
「ううぅ・・・」
「マダラメや」
煉紅郎とアリステリアの話が終わるとバルボドッサとエルミシリアの二人は煉紅郎達のもとにやって来ていた。
「ご足労感謝するよ。バル爺」
「別に気にするな。わしとお前さんの仲じゃて。しかし、エルミシリア様もご一緒に学ばれるとはのぉ。お前さんやるのぉ」
「何がだよ?それより・・・」
煉紅郎はシャルル達の方を向きバルボドッサ達の説明をし始めた。
「知っている者の方が多いと思うが、これから魔法について教えてもらうことになるバルボドッサさんと皆と魔法を学ぶエルミシリアさんだ」
「よろしくのぅ」
「よろしくお願いします」
煉紅郎に紹介されバルボドッサとエルミシリアの二人がシャルル達に挨拶を兼ねての自己紹介をしてもらいそれが終わるとシャルル達から煉紅郎は怒涛の質問にあった。特にデリューからの質問が多かった。ジョジュなどは入ってくる情報が多かったのか「へぇ~」「ほぉ~」など空返事をしていた。
シャルル達の質問攻撃をなんとか終わらせバルボドッサによる魔法講義が始められた。
知らない者も居たので八属性と異種属性、魔力量と許容量についての説明がなされてこの日はお開きになった。
あくる日の昼前、訓練場はいつもとは違う賑わいをみせていた。
煉紅郎達が走り込みから戻ってくると訓練場の前にダリオンとマクガインが立っていた。
二人を見つけるとデリューはいの一番に二人のもとへ走り寄った。
「ダリオン騎士団長!如何なさったのですか?」
「ん?部下からアリステリア姫様や勇者が頑張っていると聞いてな、訓練風景を見ようと激励も兼ねてこうしてやって来たのだ」
「そうなのですか・・・マクガイン副団長も?」
「いや・・・自分はこの人に無理やり連れてこられたんで・・・」
「変わりませんね」
「人はそう変わらないものだよ」
「確かに・・・でも、変わる事もあります。訓練に戻りますのでこれで」
そう言うとデリューは煉紅郎達のもとへ行ってしまった。
「ふん!マリオンの奴、まんまと絡めとられよって師団長の名折れが」
「ふ~ん、まぁ、そうですかねぇ・・・」
「なんだ?何が言いたいんだ?」
「彼女は元来、国や王女様方を護る為に騎士になった様なものですからねぇ。今の現状はまさに彼女の望む形ってモノかも知れませんねぇ」
「アリステリア姫様の側に居るからか?ふん!」
鼻息荒くマクガインの答えに憤慨するダリオンを他所にデリューが煉紅郎達に合流すると訓練は再開され筋力トレーニングを開始された。
ダリオンとマクガインが見つめる中、訓練は滞りなく進んで行き煉紅郎達は乱取りを始めた。
「キャッ!」
そんな中、訓練場にアリステリアの悲鳴が響いた。
「ごめんなさいニャ」
「良いのよ。シャルル」
「貴様!!姫様に何をした!!」
鬼の様な形相になったダリオンがアリステリアのもとに走り寄り、側に立っていたシャルルを弾き飛ばした。
シャルルは尻餅をついて驚いた顔してダリオンを見ていた。
「ダリオン?」
「姫様!?ご無事ですか?」
アリステリアの腕には組みで出来たであろう引っかき傷が出来ていた。
「貴様!!奴隷の分際でよくも・・・」
ダリオンはシャルルに向かって腕を振り下ろそうと迫り、シャルルは恐怖で眼を瞑ったが、彼女が来ると思っている衝撃がやって来なかった。恐る恐るシャルルが目を開けるとダリオンの振り上げられた腕を煉紅郎がガッチリ掴んで振り下ろすのを阻止していた。
「勇者、貴様どういうつもりだ!」
「どうもこうも人の連れに突然殴りかかろうとするから止めているだけだが?」
「なんだと!?放せ貴様!」
振り解こうとするダリオンだったが、幾ら振り解こうとしても煉紅郎は身動ぎ一つせず、冷え切った視線をダリオンに向けていた。
「放すからその手を引いてくれ。ほら」
「くっ・・・」
煉紅郎がダリオンの腕を放すとダリオンはたたらを踏みながら下がったが、憤怒の表情は収まっていなかった。
「だが、貴様の奴隷が姫様を傷つけた事に変わりは無いこの事は如何してくれる!!」
「良いのよダリオン。あたしはコレぐらい大丈夫よ。気にしないで・・・」
「いいえ。気にします!貴方はこの国の大事な姫なので御座います。なのに、この奴隷風情が!勇者貴様、貴様がこの奴隷の飼い主だというのならこの始末はどうつけるつもりだ!!」
「どうと言われてもねぇ、訓練をしていく上で怪我をするのもさせるのも避けては通れないだろう。それに前にも言ったが俺は、アリスを魔王討伐に連れて行くつもりだ。怪我ぐらいなんだ。そんな覚悟も無い奴が魔人を倒せるわけが無い、まして魔王なんてな」
「貴様!!・・・」
ダリオンが激しく吼えると煉紅郎が冷静に嗜める、そんなやり取りを何度か繰り返すと業を煮やしたのかマクガインが二人の間に割って入った。
「お二人共、もうよろしいではないですか」
「何だと貴様!それでも・・・」
「騎士団の副団長ですよ。もう、耳にタコになってます。勇者様、団長が申し訳ありませんでした」
マクガインは煉紅郎の方を向いて謝罪の言葉を上げ、頭を下げた。
「いや・・・」
「マクガイン貴様、コイツになぜ頭を下げている。騎士としての誇りは無いのか!誇りは!」
「誇りはありますよ」
「貴様・・・」
「どうしたんじゃ?」
声のする方に煉紅郎達が視線を向けると息を切らしたバル爺がいた。
バルボドッサについて来たのであろうエルミシリアとミリアは、アリステリアやデリューと話をしていた。
「これはバルボドッサ殿。こんな所になんですかな?」
「なに、わしは昨日からマダラメ殿達に魔法を教えているんじゃよ」
「魔法を!?」
(この男、国の重鎮に魔法指南を依頼するなど前代未聞だぞ!何を考えているんだ!)
「それと何故エルミシリア姫様が居られるのですか?」
「ん?エルミシリア様も魔法を学びたいと言われてのう、折角じゃからマダラメ殿達とご一緒に学んでもらう事になってんじゃよ」
「そんな!!このおと、いや、勇者の指導の所為で先程、アリステリア姫様が怪我をしたばかり。その上、魔法を覚えるとなると大怪我に繋がりますぞ!」
「一体何があったんじゃ?わしが分かる様に説明してくれるかのう?」
「それは自分が」
激昂するダリオンの横をすり抜けるようにマクガインはバルボドッサの前に出て事の経緯を説明するとバルボドッサは、「ふぉふぉふぉ」っと笑うと顎に手をやりながらダリオンと煉紅郎を交互に目を配り言い放った。
「ダリオン卿もマダラメ殿もお互い引く気は無い様子じゃし、この際じゃからいっそ双方の実力を知る上で、御前試合をするのはどうかのう?」
「「御前試合?」」
「そうじゃ、わしから国王様には話はつけておく、明日の昼に国王様の見ている前で無手による試合を三試合行なって勝ちの多い方の言い分を通す、コレで良いじゃろぅ。それに一試合だとお互い文句も出てこよう三試合なら文句はあるまいよ。戦う者の選出は・・・ダリオン卿とマダラメ殿のお二人がするのがよかろう」
「確かにそれなら文句は言えんな。のう勇者?」
「俺は構わないよ。俺とアンタは出ない方が良いな」
「ふん!よかろう、俺もそう思っていた所だ。選出者は騎士団の者から選ぼう」
「俺はココに居る者から選ぶよ」
「それじゃあ、団長も勇者様も同意と見てよろしいですか?」
「「ああ」」
「なら中立という事で審判は遅ればせながら自分がやらせてもらいます」
「大丈夫なのか?」
「勇者様。ご心配なく。コレでも自分、不公平な事は嫌いなんで」
「マダラメ殿、マクガイン卿は信頼出来ますじゃ、わしは任せようと思います」
「バル爺がそう言うんなら・・・」
「それじゃあ、ダリオン卿、マダラメ殿。明日の昼ココで・・・」
そう言うとバルボドッサは国王に会う為、城に向かって訓練場を立ち去った。
その日の訓練はお開きとなり煉紅郎達は書庫へ、ダリオン率いる騎士団は詰め所へと戻り明日の御前試合に向けての作戦会議が行なわれた。
一方は己が欲の為、一方は相手の間違いを正す為、相容れぬが故の戦いが始まろうとしていた。
全然、書きあがらなくてこんなに間が空いてしまいまして申し訳ありません。
話の骨組みはあるんですが、中々肉付けが上手くいかなかったっす・・・
次話は出来次第上げます。




