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≠勇者  作者: 単参院 涼
20/24

#19 PとP

今年一発目で御座います。

本年もよろしくお願いします。


 異世界ポルモルにおける時間の流れは、一日は、何時何分というものは無く、朝昼晩でで通ってしまう。

 暦では、一ヶ月は、どの月も一律で三十日で過ぎ、曜日は無く、何日と呼ぶ。一年は十二ヶ月で、年の初めから、詩歌の月(一月)闇の月(二月)風の月(三月)種子の月(四月)樹木の月(五月)水の月(六月)地の月(七月)火の月(八月)聖の月(九月)収穫の月(十月)氷の月(十一月)極寒の月(十二月)となり一年が過ぎる。

 ちなみに煉紅郎が召喚されたのは風の月の十五日であった。


 ジョジュが煉紅郎の弟子になったあの日から半月程の月日が流れた。

 煉紅郎もギルドに普通に通える様になり、偶にだが、ジョジュを連れて依頼をこなしている。当初は、煉紅郎に大勢の冒険者が押し寄せて口々にパーティーやクランへの勧誘の言葉を口にしたが、その言葉を遮り煉紅郎の前にバローナが姿を現し、ギルドはシーンと静まり返った。

 バローナは煉紅郎に気さくに声をかけ、少しの間、言葉の中に一緒にやらないかなどの勧誘を含ませた会話をし、煉紅郎から丁重に断られるとニカッと笑うと「また誘うよ!」と煉紅郎に投げかけるとギルドを後にし、流石に名の知れたクランからの誘いを断った事で、煉紅郎への誘いはパタリと止んだのだった。

 ジョジュを連れての依頼はジョジュに依頼内容以外の事も教えていた。

 植物の種類や効能、猛獣やモンスターの生態や対応策など冒険者として今後ジョジュが生きてく為に必要と思われる事を煉紅郎は丁寧いに教え、ジョジュはそれに答える様に学んだ。

 ジョジュにとってこの二人だけでのギルドの仕事は大切な時間となっていった。



ある日の朝、煉紅郎は、数日前からあまり動かなくなったポンキーが心配になり、豚幌亭の前でとある人物の到着を待っていた。


「お待たせしましたですなッ」

「ポチョットさん」


 煉紅郎が待っていた人物はバローナ遊撃隊の豚人族のポチョットであった。

 なぜポチョットが来たのかというと・・・数日前にギルドで煉紅郎がバローナと会話した際、ポンキーの事を話を出し、バローナが『ウチに詳しい奴が居る』と言ってポチョットを紹介しこの日の段取りをしたのだった。

 ポチョットは山村の出で生まれた時から大山豚などの獣と接して来た為、詳しいのだそうだ。


「すみませんこんな早くから・・・」

「気にしなくて大丈夫ですなッ、姉御・・・バローナの姉御からはしっかり恩を売って来いって言われましたなッ、だから大丈夫ですなッ」

「あの人は・・・」

「・・・それで、大山豚でしたかなッ?」

「ああぁ、そうなんです。数日前からあまり動かないで厩舎で横になってるんですよ」

「ふーん。ご飯の方は食べますかなッ?」

「それはいつも通り。なんで尚の事、心配で・・・」

「ふむ。兎にも角にもその大山豚を見てみましょうなッ」

「こちらです」

「それとレンクロウ。敬語は止めてほしいんですなッ、自分はレンクロウより偉くは無いんだなッ」

「はぁ、じゃあそうする」

「よろしくですなッ」


 ポチョットの不思議な雰囲気に気圧されながらもレンクロウは、ポチョットをポンキーの居る厩舎へと先導した。

 煉紅郎とポチョットが厩舎に到着し中を覗くと其処には、煉紅郎がやって来た事に気がついていたのかポンキーが横になりながらも厩舎の入り口に顔を向けていた。

 ポチョットはフムフムと言い顎をさすりながらポンキーの様子を眺めて暫くすると煉紅郎の方へ向き


「御懐妊ですなッ」

「・・・やっぱり」

「おやっ?ご存知だったんですかなッ?」

「まぁ何と無く、かなぁ位には・・・でも、俺は知識ばっかりで診れる人の意見が欲しくて・・・」

「それで自分にとッ?」

「その通り。今何ヶ月ぐらいですか?」

「うーん。触ってもッ?」

「ええぇ」

「では、失礼しますなッ」


 ポチョットが一言謝りを言うとプゴッっとポンキーは一鳴きしてお腹を見せてポチョットはポンキーのそばに膝を着くと優しくお腹を触りながら煉紅郎の顔を見ずに話しだした。


「三ヶ月ですかなッ?」

「じゃあ、あと一月ぐらいで生まれるのか?」

「そうですなッ。早ければ種子の月の中頃、遅ければ樹木の月の頭には生まれますなッ」

「質問しても?」

「どうぞですなッ」

「大山豚って何頭ぐらい子供を出産するんだ?」

「そうですなッ、多くて四頭ぐらいですかなッ。普通の豚とは違って大山豚は一回のお産で生まれる数は少ないですが丈夫で成長が早く二ヶ月ぐらいで一人立ちしますなッ」

「ん?二ヶ月?二ヶ月でコイツぐらい大きくなるのか?」


 ポチョットはゆっくりと立ち上がりポンキーから離れて煉紅郎に近づきながら彼がこぼした疑問に答えた。


「ハハッ、いやーこのサイズになるには五年は掛かりますなッ。そうですなッ・・・そうそうレンクロウにはメイドが居ましたなッ。子猫族のッ」

「ああぁ、シャルルか」

「あの子位には大きくなりますなッ」

「・・・・・・それでも十二分にデカイよ」

「ハッハッハッ!そうですなッ。まぁ、生まれてから如何するかはレンクロウ、君次第ですなッ」

「生まれるまでには決めておくよ」

「それが言いですなッ」

「生まれる時は手伝って貰えるか?」

「姉御次第ですがッ、まぁ、大丈夫でしょうなッ」

「じゃあ、よろしくお願いします」

「任されましたですなッ!それじゃあ自分はこれからギルドに行かねばならないので失礼しますなッ」

「ありがとう御座いました。」


 ポチョットと煉紅郎は共に厩舎を出るとポチョットはギルドへと向かい、煉紅郎はポチョットを見送ると宿の中へ戻っていった。

 煉紅郎が豚幌亭に入ってすぐにシャルルが食堂から飛び出してやって来た。


「ご主人様!ポンキーはどうでしたかニャ!?」


 シャルルは煉紅郎のもとへ着くといの一番にポンキーについて聞いた。

彼女は、ポンキーについて知っている事は「調子が悪く厩舎で横になっている」事ぐらいであったが、心配で仕方なかったようだ。

 シャルルは、煉紅郎がポチョットとポンキーを診ている間、宿の中に居る事を煉紅郎に強く言われていた。理由は、シャルルはポンキーに対して強い家族愛に近い絆を感じているからであった。診断中に横からゴチャゴチャ言われたらきっとポチョットも困惑するだろうと思った煉紅郎の処置であった。


「ご主人様・・・」

「大丈夫だ。大した事じゃ・・・大した事か」

「何がニャ?何があったんですかニャ!?」

「どうした?うるさいぞ猫」


 遅れてラシュナートが食堂から出て来た。シャルルが急いで出た所為で散らかってしまったテーブルの上を整理してからやって来たようだ。


「んニャ。ラシュさん。ポンキーがポンキーが・・・」

「ん?豚が如何した?」

「ポンキーがぁぁぁぁ」

「コイツじゃ話にならないなぁ、レンクロウ。どうなんだ?」

「妊娠してたんだよ」

「豚が?」

「あぁ、あと一月もすれば子供が生まれるそうだ」

「んにゃ!?ポンキーは妊娠したんだニャ!」

「した、というよりしていた、っていうのが正解だな。俺達が買ったときにはもう妊娠していた時期だったみたいだ」

「んにゃー!ポンキーーー!」


 宿を出てポンキーの休んでいる厩舎に向かい走り出すシャルルであったが、煉紅郎の脇を通ろうとした時、煉紅郎に襟首をつかまれ捕まってしまった。


「ニャ!ご主人様~どうして止めるんですかニャ」

「シャルル。ポンキーのお腹は大分大きくなってきてるから優しく撫でて声をかけるだけにしろ。分かったな?」

「はいニャ!」

「じゃあ、行って良いぞ」

「はいニャーーーー・・・・・・・」


 脱兎の如くポンキーのもとへ向かってシャルルは走り出した。


「良いのか?」

「うん、まぁ、良いんじゃないか?シャルルだって馬鹿じゃないんだ。加減くらいできるだろう」

「そういうもんか?」

「そういうもんよ。ラスト、シャルルが戻ってきたら二人で城に行ってくれるか?」

「ん?別に構わないが如何した?」

「パウルマンの所に行ってくる。とりあえずポンキーが妊娠してた事説明しておかねぇとな。あとあと面倒事の種になっちゃあ嫌だからな」

「なるほど」

「・・・んじゃ、先に出るわ」

「城でな」

「あぁ・・・」


 煉紅郎はそう言うと豚幌亭を後にし一路パウルマン商会へ向かった。



 パウルマン商会では、奴隷を買いに貴族の長男が下男をつれてやって来ていて、商会の会頭のパウルマンが番頭のアルゼンムスと共に商談の席に着いていた。

 しかしまぁ、今回やって来た貴族の嫡男はパウルマン自身、商売の相手にしたくないタイプの人間であった。

 それは、この貴族の嫡男、名をカールド・マキアンと言う男に原因があった。この男、貴族の身である為に平民に対して横暴な振る舞いなどの噂が立っているが最も良く聞く噂が奴隷を購入しては、躾けという名目で奴隷に暴力を振るい殺して、玩具でも買い換えるように奴隷を買っては殺す買っては殺すと言う事を繰り返しているというものであった。

 パウルマン自身にも覚えがあり、確かに何度か彼に男女問わず奴隷を売ったが、短ければ数日、長くても一月ほどで死んだ事を知らされた。その事もあってパウルマンは随分と前からマキアン家との商売は断ってきたのだ。

それでも、月に何度かカルードが下男を連れて商会にやって来ては奴隷を売って欲しいと頼みに来るのだが、パウルマンは奴隷は売らないと頑として譲らず、カルードには商売人として丁寧に断り帰ってもらうのが常であった。

が、今日は少し違う様だ。パウルマンは知りえない事だが、カルードは、数ヶ月前からパウルマン商会が切っ掛けとなって王都のみならず国中の奴隷商から奴隷の購入を断られる様になってしまっているのだ。

カルードの残虐性は、天性の性の様なものに近く、数ヶ月の間は我慢に我慢を重ねたが限界も近く今日こそはとパウルマンの所へやって来たのだが、いつもの対応をされるので彼は焦りが募り始めていた。


「そこをどうにかなりませんか?」

「すみませんが出来かねます」

「病人や怪我人でも・・・いや、死に掛けの奴でも良いんですよ」

「我が商会では病人や怪我人の奴隷は居りません。もし居たとしても治療中ですので、お売りするという事はいたしません」

「そこをどうか・・・」

「些細な疑問なのですが・・・怪我や病気の奴隷を買われてカルード様は、その奴隷を如何するおつもりなのでしょうか?」

「それは・・・」


 アルゼンムスに軽くあしらわれて焦ったカルードはボロを出し始めていた。

 パウルマンもそんなカルードの姿が面白いのかアルゼンムスを止める事はせずにただソファーに身体を預けて目を細くしてカルードと下男を見ていた。

 どうにか奴隷を買おうと必死にパウルマン達に懇願するカルードであったが、突然部屋の扉を開け放ち番頭のズザクが部屋の中にやって来た。


「旦那様」

「ん?どうしました?ズザク」

「実は・・・」


 ズザクはパウルマンの側に立つとそっと耳打ちをした。すると、パウルマンはそれまで眠たそうにしていた目をパッと見開きカルード達に向き直ると・・・


「如何しました?パウルマンさん」

「すみませんマキアン様。今回は御縁が無かったっと言う事でお帰りください」

「そんな!!」

「私はこれから大事なお客様と会いますので後の事はアルゼンムス、頼みますよ」

「はい。旦那様」

「それではマキアン様」


 そう言うとパウルマンはマキアン達を残しズザクと共に部屋を出て行ってしまった。


「・・・・・・」

「それでは外までお送りいたします。マキアン様」

「くっ・・・」


 カルードは、怒りの篭った表情でパウルマンの出て行った扉に向けていたが、アルゼンムスに促され外へと続く廊下を歩く。


(ふざけるな。俺はカルード・マキアンだぞ!たかが奴隷商の分際でぇ!くそがっ!しかし如何する?国中の奴隷商は、もう俺に奴隷を売る意思は無い様だ。あぁ、考えるだけで腹が立つ!)

「カルード様」


 カルードが口には出さないがグチグチと頭の中でパウルマンへの毒を吐いていると下男の声が掛かる。カルードが気がつくと既に二人は商会から外に出て離れた所に立っていてカルードと下男以外近くには居なかった。


「なんだ?ん?外に出てたのか」

「カルード様。いかがいたしましょう?」

「何を?」

「パウルマンの奴ですよ。プシュケー国の中でも有数の貴族であるマキアン家を無碍にしたのですよ」

「そんな事わかってる。あっ!」

「どうされました?」

「帰るぞ!」

「カルード様」

「良いから帰るぞ!」


 カルードは下男を連れて邸宅へと戻っていった。何やら思惑を含みながら・・・


 パウルマンは商会の厩舎で煉紅郎と会っていた。

 先程のズザクの知らせは、煉紅郎が商会にやって来た事の知らせであった。そして、なぜ、厩舎で会っているのかというと煉紅郎が選んだだけである。


「そうですか・・・大山豚、ポンキーが妊娠を・・・」

「あぁ、知り合いの見立てによるとココに居た時に妊娠した事になる。この場合、如何すれば良い?」

「如何すればと言いますと?」

「生まれてくる子豚だよ。言い方が悪いが所有権はあんたにあるんだったら生まれたらあんたの所に持ってくるが・・・」

「結構ですよ。レンクロウ様。ポンキーを購入された際にポンキーに関する全ての権利はレンクロウ様にお譲り致しましたので、子豚もレンクロウ様の所有になります」

「そうなのか?」

「はい」

「そうか・・・」

「今回は何かお買いになりますか?」

「いやぁ、さすがにそんな余裕は無いな」

「そうですか。残念です」


 ポンキーの事について話し合った煉紅郎とパウルマンはそれから少し話をし、煉紅郎が城に向かう為に外へ向かうとパウルマンはそれに玄関まで追従した。

 パウルマン商会を後にし、煉紅郎は城へ向かって歩いてゆく。そんな彼の後姿を物陰から見ている者がいる事にまだ、煉紅郎は気がついていなかった。



ストックが・・・

年末が・・・正月が・・・

これからの更新は出来るだけ週一で更新になります。


面目ない、書けない自分が恨めしい・・・

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