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絵画大会

男子たちの暴走である。何暴走してるんだまったく……、と呆れつつもにこにこと楽しそうな小町の顔を眺めるれば「な~に~?」と聞かれたけどなんでもないや。

男子たちの暴走によって女子たちの怒りも増幅されるわけで、女子たちも桜城さんは悪くない、あの美貌に騙される男子たちが悪いのだ、なんて言ってたけれどもう我慢の限界みたいだね。そりゃあそうだ確かにあそこまで桜城さん桜城さん言われると困るよね。

じっ、と見ていたのが運の尽きだった、桜城さんにこっちを見られたので睨む。それをどう受け取ったのか桜城さんがこっちにくる


「弥生っ!どうしよっ、胡桃どうすればいいかなぁ?」


きゅるんっ、と言う効果音が付きそうな顔でこちらを見てくる。

何もしないでほしいかなっ、という言葉をやっとの思いで飲み込んで、小町の方を見ると何やら膝に顔をうずめて大爆笑しているようだ、おのれ小町。


「さ、さぁ……どうしようもないんじゃない?男子たちにも迷惑だから、とか言っておけばいいんじゃない、ですか」


そう伝えると桜城さんは嬉しそうな顔で駆けて行った、おい、まて嫌な予感しかしないぞ、女子たちからの視線も痛いんだけど!?

桜城さん、頼むから余計な事は言わないでくれ


「みんなっ、胡桃と一緒に描こうよっ!」

「「「おーーーーーーっ!!」」」


おーーーーーーーーっ!!!

……じゃないっ!やめろ、私が言ったことは何一つ反映されてないじゃないか!何を当てにしたの貴方。

ますます男子に対する視線が鋭くなったところで私と小町は真面目に絵を描くことにした。これの最終目的って風景画の完成だよね?決して『ハーレム、または逆ハーレムを作ること』じゃないよね?

小町は相変わらず大爆笑を続けている、腹筋痛くなっても知らんぞ?

私たち2年生は近所の公園の風景画、テーマは『爽やかさ』爽やかさってなんだ一体どうすればいい。ちなみに1年生は『動物』、3年生は『学校』らしい

2年生だけ何ではっきりしたテーマじゃないの?いじめですか、そうですか。

適当に池でも描いておこうとそこらへんの東屋あずまやにいけば幸運なことに誰もいない、ラッキーと思いつつ中に入る


「日差しが入らないし景色もいいし丁度いいかもね~」

「だね、ここで描こうっと……まずは水を汲んでこないとね、小町私汲んでくるから絵具出しといて」


小町は快く返事をしてくれたので二人分の絵具用のバケツを持って水道を探す、そこらへんをきょろきょろとすればすぐに水道が見つかる、バケツに水を汲んで小町の所に戻ろうとするとき、垣根の所でぴょこん、と揺れる黒いものを見つけた。

なにこれ、黒い葉っぱかな?

そう思いつつバケツを下に置いてツンツン、と触ってみるけど異常なし。なんとなく髪の毛に見えるけど……


「……もしかして、垣根の中、もしくは垣根の向こう側に誰かいますかー!」


…。反応なし、一体なんなんだよ。やっぱり葉っぱかな?と思い引っ張ってみることにした、ぐいっと引っ張ると何やら重たい感触と男の子の悲鳴、この声どこかで聞いたことがあるような?


「いっ、たたた!え?あれ?!……………高野さん」


ぼすっ、と垣根から出てきて来た人を見て絶句する。相手も最初は驚いてたみたいだけどそのうち落ち着いて確実にこちらの名前を呼んでくる、なんで斉藤君が垣根にはまってるんだ……?

私が固まっているのを見てか何なのか、真っ赤な顔になって否定し始めた


「こ、これには少しわけがあって……それでっ、えと!」


しどろもどろで何を言ってるのかよくわからないが適当に数回頷いておく、まあ謎の黒いぴょこぴょこの招待もわかったから私は小町の所に帰ろうとする、がそれを止める斉藤君、なんかまたこれ?

斉藤君が指差しているのは斉藤君が出てきたところに開いてた穴、これをのぞいてみればそこには綺麗な水色の花が咲いていた


「うわぁ、綺麗だね、小紋唐草こもんからくさみたいだけど……」

「植物、詳しいの?」

「いいや、別に、このあいだ図書館で呼んだことがあるだけで詳しいわけではないんだけど」


綺麗だけど、これは斉藤君が見つけたので斉藤君に譲ることにしよう、そう思い斉藤君を見ればなんとも優しそうな顔をしていた、そんな表情は初めて見たよ。あたりまえだけど

斉藤君の視線の先には、子猫が数匹と母猫が一匹いた。子猫たちはなにやらごろんと転がっている。


「……斉藤君、私はこれで失礼します、じゃあ風景画頑張ってね」


早々に立ち去ろうとすれば斉藤君は我に返ったようにハッとなってわたわたとしている。どうしたのかな?

斉藤君は居住まいを正すとこちらに向き直ってきた、何、何が始まるんだ?


「たっ、高野さんっ、て……お、同い年だよね!?」

「う、うんそうだけど……落ち着きなよ?」

「えっと、できれば、そのタメで話してほしいっていうか、ご、ごめんねっ、変なこと言って、でもなんか敬語は、なんか………遠い気がするから」


遠い気がする、ねぇ、確かに敬語だとそう思うかもしれないけど、私ほとんどタメだよね?時々敬語になったりするけど、それのことっぽいね

でもこれ以上タメかぁ、じゃあ


「これ以上タメってことはもう友達だね、護君?」

「っ!」


おい、なぜ固まる、タメでいいといったのは君だし私にそういうのをしないでくれる?確かにイケメンだとは思うけどさ

前髪のせいでよく見えないけどもしかして顔とかも真っ赤なのかな?

ニヤニヤとしていれば護君にぺちっ、とおでこを叩かれたいたくないぞ?


「じゃ、私は小町が待ってるからバイバイ」

「あ、うん、バイバイ、や………高野さん」


護君が『や』の後に何を続けようとしていたかが若干気になるけど、待たせてある小町のもとに急ぐ。

待たせて申し訳ない。

小町のもとに行けば何やら絵具を数色出して並べていた、何の儀式だ

小町は私がいるのに気が付くと、にこっ、と笑う、つられて私も笑う……何がしたいの?


「やよ、遅かったね~、まさかどこかで男子生徒と仲良くお話でもしてたんじゃないよね~?」

「うぇ……何でわかったの?」


勘、と短く答えてまた微笑む。今度は一体なんなんだよ、あんまり聞きたくないなぁ

小町はくどくどと男はなんたるかを力説してきた、何でそんなこと知ってるんだよ、こっちが聞きたくなるほど力説された。半分聞き流しながらもうんうん、と頷いて風景のあたりをとりはじめる。

小町は気が付かないようでまだ何か力説している。しばらく放置しようと思いつつ30分後、絵も大体できてきて隣には怒っている小町、君の話が長いからだろう……

まあまあ、と宥めながらも二人で黙々と作業をしていると後ろから声がかかった。


「おやおや、こんなところで誰が絵を描いているのかと思えば柴田さんと高野さんでしたか~、ここの景色はとても美しいですね~、わたくし感動しました~」


この小町をどこか彷彿とさせる喋り方は2年3組担当であり国語の教師でもある、熊埜御堂くまのみどうしのぶ先生だ、のほほんとしており本当に小町の親戚じゃないのだろうかと疑うレベルです

ニコニコ笑顔のふわふわ髪は今日も健在ですか、この先生は国語の中でも古文を教えるのがとても上手だ、平安時代生まれなんじゃないかな……

あと、苗字がとてつもなく長い、熊埜御堂って画数も多いから大変そうです。ほとんどの人は御堂先生で終わらせてるけどね。


「あ~、御堂先生じゃないですか~見回りご苦労様です~」

「柴田さ~ん、高野さ~ん、池に落ちないようにだけ気をつけておいてくださいね~」

「……お二人は親戚か何かですか?」

「「いいえ~」」

「…………そうですか」


説得力のカケラもないけれどとりあえずは頷いておこう、雰囲気がぴったりなんですけれど。でも熊埜御堂先生はめったに怒らないけどね。

熊埜御堂くまのみどうしのぶ

・国語の教師で2年3組の担任をしている、小町に親近感を持っている

・ふわふわの髪の毛、角度によっては深緑色に見える

・176cm

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