第四十一話 おっさん、エルフ王国へ入る
ダークエルフの村を出て、数日が過ぎた。
森の道を東へ進んでいたフミタロウたちの前に、見覚えのある街並みが現れる。木々の間から覗く建物の屋根。その向こうでは、旅人を乗せた馬車が門をくぐり、荷物を背負った者たちが行き交っていた。
「エルリーフが見えてきたぞ」
先頭を歩くシルフィエが告げると、ミルキーが嬉しそうに街を見渡した。
「戻ってきましたね」
「相変わらず、活気のある街です」
クリフトスの言葉どおり、エルリーフの大通りは以前と変わらず賑わっていた。エルフの薬を並べた店では、雇われた人間の店員が人族の旅人へ商品を説明している。
エルリーフでは、エルフの店主のほとんどが自ら店頭に立たず、人間を雇って接客や販売を任せている。通りから店の奥にエルフの姿が見えても、客の前へ出てくる者は少ない。それがこの街では普通の商い方だった。
だが、ダークエルフとエルフの歴史を知った今では、その光景が以前と少し違って見える。
「ここって、二百年前の争いで焼けた森の跡に造られた街やったな」
「事情を知ると、見え方が変わりますね」
フミタロウとサンキチが通りを眺めていると、店の奥でエルフの店主とドワーフの職人が木箱を挟んで仕入れの相談をしている。また別のところでは、人族の女性がエルフの店で薬を受け取り、何度も頭を下げている。
「今では当たり前のように見えるが、ここまで来るのに二百年かかった」
シルフィエの声には、わずかな苦みがあった。
「二百年か……人間には想像もつかんな」
「私たちにとっては、遠い昔ではない」
長命なエルフにとって、二百年前の争いは歴史書の中だけにある出来事ではない。実際にその時代を知る者が今も生き、失われた森や離れ離れになった者たちを覚えているのだ。
シルフィエは立ち止まることなく、大通りを進んだ。
「まず旅の物資を補充する。信用できる店へ案内しよう」
「それは助かるわ。俺らだけやと、また値段だけ見て変なん買いそうやしな」
「自覚はあるんですね」
サンキチの冷静な指摘を聞き流し、フミタロウはシルフィエの後を追った。
やがて彼女が足を止めたのは、大通りに面した二階建ての店だった。石造りの一階に木造の二階を組み合わせ、入口の上には背負い袋と杖を図案化した看板が掛かっている。
「ここなら、旅に必要な質の良いものがそろう」
「分かった。ここで揃えていこか」
一行が店へ入ると、革や乾燥させた薬草の匂いが鼻をくすぐった。
壁には雨具やロープが掛けられ、棚には傷薬、保存食、携帯用の調理器具が整然と並んでいる。旅人向けの店らしく、軽くて持ち運びやすい品が多い。
「いろいろありますね」
「品揃えもよさそうです」
ミルキーとクリフトスが棚を眺める一方、サンキチは商品の札を順番に確認していた。
「エルフの薬だけじゃなくて、ドワーフ製の道具も置いてありますよ」
「いろんな土地を行き来する旅人向けの店なんやろな」
店内を見回していたフミタロウの横で、カウンターに立つ人間の女性がシルフィエに気づいた。
「いらっしゃいませ。あら、シルフィエ様」
「久しぶりだな。サリーはいるか?」
「はい。店主なら奥におります。少々お待ちください」
女性が店の奥へ声をかけると、荷札を手にしたエルフの女性が姿を現した。人間の店員に普段の店番を任せてはいるが、サリーは自ら店頭へ出て客と話す、エルフとしては珍しい店主だった。
「どうしたの?」
そう言いながら顔を上げ、入口に立つシルフィエを見つけた途端、その目が大きく見開かれる。
「シルフィエ!」
「サリー。久しぶりだな」
サリーは手にしていた荷札をカウンターへ置き、嬉しそうに駆け寄った。人間を警戒して常に一定の距離を取るシルフィエも、彼女に対しては構える様子がない。
「本当に久しぶり。最近、全然顔を見せないから心配してたのよ」
「村を離れられなかった」
「やっぱり、オークのせい? 村の周辺で増えてるって噂を聞いたけど……大丈夫だったの?」
心配そうなサリーへ、シルフィエは小さくうなずいた。
「かなり大変だった。だが、もう解決した」
「そう……村のみんなは無事なのね?」
「ああ。心配してくれてありがとう」
サリーは胸へ手を当て、安堵の息を吐いた。
二人のやり取りを少し離れた場所から見ていたミルキーが、フミタロウへそっと顔を寄せる。
「お二人、仲がいいんですね」
「みたいやな。シルフィエさんが、あんな普通に話してるん初めて見たわ」
「聞こえているぞ」
長い耳をわずかに動かしたシルフィエに睨まれ、フミタロウは何も言っていないふりをして棚へ顔を向けた。
サリーとシルフィエは、エルフ王国で暮らしていた頃からの幼なじみだった。
シルフィエは生まれてからおよそ五十年を王国で過ごし、当時はサリーと同じ街で育ったという。しかし約二百年前、族長が自分を慕う一族を率いて王国を去ったことで、二人は離れ離れになった。
その後、成長したサリーは交易都市エルリーフに店を構えた。シルフィエがこの街を訪れた際、二人は偶然再会し、それ以来、彼女はエルリーフへ来るたびにサリーの店へ顔を出しているらしい。
「それなのに、今回はずいぶん間が空いたじゃない。本当に、もっと顔を見せてよね」
「分かった。今度はそうする」
シルフィエが素直に約束すると、サリーは満足そうに笑った。
「それで今日は、買い物?」
「この者たちの案内人の仕事で立ち寄った」
シルフィエが後ろにいる四人を示す。
「人族の案内をしてるの?」
「ああ。東の島までの往復だ」
「へえ……」
サリーは興味深そうにフミタロウたちを順番に眺めた。フミタロウ、サンキチ、ミルキー、そしてクリフトスへ視線を移し、意味ありげに口元を緩める。
「ふーん。まあ、人族にしては、いい男が一人いるみたいだけど」
そこでシルフィエへ身を寄せた。
「隅に置けないわね、シルフィエ」
「は?」
何を言われているのか分からず、シルフィエが目を瞬かせる。
一方のフミタロウは、さりげなく姿勢を正した。
四十歳の落ち着きというものが、ようやく正当に評価されたのかもしれない。
だが、サリーはその前を何事もなかったように素通りし、クリフトスのもとで足を止めた。
「はじめまして。私はサリーよ」
「はじめまして、クリフトスと申します。よろしくお願いします」
クリフトスが爽やかに微笑むと、サリーの機嫌は目に見えて良くなった。
「ええ、こちらこそ」
そしてすぐにシルフィエを振り返る。
「いい男じゃないの! ちゃんと紹介しなさいよ!」
「馬鹿! そんなんじゃない!」
慌てて否定したシルフィエは、深いため息をついた。
「はぁ……フミタロウ、サンキチ、ミルキー、クリフトスだ」
「よろしくお願いします」
四人がそれぞれ挨拶したが、サリーの視線はほとんどクリフトスから動いていない。
フミタロウは隣のサンキチへ顔を寄せた。
「また、このパターンやな、サンキチくん」
「そうですね」
特に慰める様子もなく即答され、フミタロウは黙って買い物を始めた。
ミルキーは薬品の棚から小瓶を手に取る。
「傷薬は、これでいいですか?」
「ああ。それは品質がいい」
シルフィエの確認を得て、籠の中へ入れる。
その横では、サンキチとクリフトスが保存食の袋を数えていた。
「保存食は、このくらいあれば足りますよね」
「帰りの分も考えて、少し多めにしておきましょう」
東の島まで行ったあと、同じ道を戻ってこなければならない。途中で補給できる保証もないため、荷物が重くなりすぎない範囲で余裕を持たせることにした。
フミタロウは雨具の棚の前で、ほかより明らかに安い雨よけ布を見つけた。値札を確認し、一枚持ち上げる。
「これでいいんちゃう? 安いし」
「それはやめておけ」
すぐにシルフィエから止められた。
「雨に濡れれば、すぐに使えなくなる」
「雨よけやのに?」
「軽い霧雨程度なら防げる。だが、長く降られれば水を吸って重くなり、すぐ破れる」
「そうなん?」
フミタロウは安い布と、その隣にある丈夫な雨具を見比べたあと、おとなしく棚へ戻した。
「安いのには理由があるんやな」
「値段しか見てませんでしたよね」
サンキチが呆れると、フミタロウは悪びれもせず答えた。
「わからんもんは、詳しい人に聞いたらいいんや」
「最初からそうしろ」
シルフィエの突っ込みに、ミルキーが小さく笑った。
一行が買い物を続ける中、シルフィエは店の一角を見て足を止めた。
「ん?」
そこにはドワーフ製の金属工具や携帯用のランタン、調理器具などが並んでいた。しかし商品は棚の端へわずかに残るだけで、空いた場所が目立っている。しばらく補充されていないのか、板の表面には薄く埃が積もっていた。
「ドワーフの品が、ずいぶん減っているな。仕入れが遅れているのか?」
尋ねられたサリーの表情が曇る。
「……遅れているんじゃないの。仕入れを減らしてるのよ」
カウンターの人間の女性も、不安そうに店の外へ目を向けた。通りを行き交うエルフたちの視線を気にしているようだった。
「なぜだ?」
「シルフィエたち、これからエルフ王国を通るんでしょう?」
「ああ」
「だったら、先に話しておいた方がいいことがあるわ」
サリーは声を落とした。
「今、王国を通り抜けるのは、あまりおすすめしないわよ」
「なぜだ?」
「ドワーフや人族との交流をやめて、エルフは森の中だけで生きるべきだと唱える高官たちがいるの。その人たちの勢力が、最近になって強くなってきてる」
「王国には昔から、そういう者がいただろう」
「今は、その声が前よりずっと大きいのよ。王まで考えに流され始めているわ」
「王が……?」
シルフィエの表情が険しくなる。フミタロウたちも買い物の手を止め、二人の話へ耳を傾けた。
「今の王国では、人族やダークエルフが目立てば、何かと厄介なことに巻き込まれるかもしれない」
「馬鹿なことを。今さら交流なしで、不便な生活に戻るつもりか?」
シルフィエは空いた棚を見ながら吐き捨てた。
エルリーフにはエルフの薬だけでなく、人族の保存食やドワーフの道具が集まる。それぞれの種族が作ったものを持ち寄ることで、以前より便利で豊かな暮らしが成り立っているはずだった。
「それでもいいって人が、増えてきてるのよ」
サリーの声には疲れが滲んでいた。
「他種族の品を扱う店から買うなって言い出す人までいるわ。人族を雇っていることも、よく思われていない」
その言葉に、人間の女性店員がわずかにうつむく。
「それで、仕入れを減らしたのか」
「ええ……」
サリーは自分が築いてきた店内をゆっくり見渡した。
「このまま風当たりが強くなったら、この店もいつまで続けられるか分からないわ」
さまざまな種族の良い品を、旅人なら誰にでも売る。それがサリーの店の方針だった。その店から他種族の品が消え、人族の店員まで辞めさせられれば、残るものは彼女が作りたかった店とはまるで違うものになる。
「なんか、だいぶ不穏な雲行きやな」
「さっさと通り抜けた方がよさそうですね」
フミタロウとサンキチの言葉に、サリーはカウンターの下から地図を取り出した。
「東へ抜けるなら、王都の近くを通るのが一番早い」
シルフィエが地図の中央を指す。
「今は避けた方がいいと思う」
サリーは王都へ続く街道ではなく、その南側を大きく迂回する道を指でなぞった。
「少し遠回りになるけど、この道を使って。王都だけじゃなく、大きな街にも近づかない方がいいわ。できるだけ人目の少ない道を選んで」
「分かった」
「その道で、東まで抜けられるん?」
フミタロウの問いに、シルフィエは地図へ顔を近づけ、川や丘の位置を確かめた。
「ああ。遠回りにはなるが問題ない」
エルフの暮らす集落へ続く道を避ければ、余計な衝突も減らせる。必要な物資はすでにここでそろえるため、王国内の街へ立ち寄る必要もなかった。
「ありがとう、サリー。その情報、助かった」
「いいわよ。私とシルフィエの仲じゃない」
サリーはいつもの明るい笑顔を作ったが、その奥にある不安までは消えていなかった。
買い物を終えると、人間の女性店員が傷薬、保存食、雨具などを袋へ詰め、カウンターへ並べた。
「お待たせしました。こちらで全部です」
「ありがとう」
フミタロウとサンキチが荷物を分け、ミルキーとクリフトスも中身を確認する。
「これで補給は終わりですね」
「忘れ物ないな?」
「今回はフミタロウさんに確認させない方がいいと思います」
「紹介状のこと、まだ言うん?」
サンキチに言い返しながら、フミタロウは袋を背負った。
店の入口では、サリーがシルフィエを待っていた。
「本当に気をつけてね。何かあったら、無理に先へ進まないで」
「ああ、分かっている」
「それと、今度は用事がなくても顔を見せなさいよ」
「善処する」
サリーは呆れたように笑う。
「そこは素直に『分かった』でいいの」
「……分かった。次は顔を見せる」
「よろしい」
サリーと女性店員に見送られ、一行は店を出た。
「いってらっしゃい!」
「またな、サリー」
シルフィエは一度だけ振り返り、幼なじみへ手を上げる。それから再び先頭へ立ち、エルフ王国へ続く東の門へ向かった。
エルリーフの東端に設けられた関所は、巨大な樹木と頑丈な木柵を組み合わせて造られていた。門の上には弓を持ったエルフが立ち、地上でも槍を手にした衛兵たちが出入りする者を監視している。
シルフィエを先頭に一行が近づくと、若いエルフの衛兵が前へ出た。
「止まれ」
一行の行く手を遮り、シルフィエと、その後ろにいる四人を順番に見る。
「エルフ王国へ、何の用だ?」
「この者たちを連れて、東へ抜ける」
「人族を四人も連れてか?」
衛兵の視線には、隠そうともしない疑いが浮かんでいた。
「正式な許可は得ている」
「ならば、紹介状を見せろ」
シルフィエが手を差し出す。
「ミルキー」
「はい、これですね」
ミルキーは荷物の決まった場所から、迷うことなく書状を取り出した。前日の騒ぎを思い出したフミタロウが、少し気まずそうに視線をそらす。
シルフィエは受け取った書状を若い衛兵へ差し出した。
「族長から預かった正式な紹介状だ」
「確認する」
若い衛兵は封に押された印を見たあと、書状を開いた。
内容へ目を走らせていた指が、署名の部分で止まる。正式な印と、そこに記された名を何度も見比べ、目を見開いた。
「なにっ!? この署名は……!」
紹介状から顔を上げ、シルフィエとフミタロウたちを交互に見る。
「まさか、本物の紹介状を持っているとは……貴様ら、何者だ?」
「この者たちは、正式な我らの客人だ。森を抜けたいだけだ。通してもらおう」
シルフィエは一歩も引かず、堂々と答えた。
若い衛兵は紹介状を確認したあとも、警戒を解こうとはしなかった。むしろ本物だと分かったことで、顔に浮かぶ不快感が強くなっている。
「ダークエルフが人族に媚びを売るとは――エルフの恥だな」
「なに……?」
シルフィエの表情が一変した。
低い声とともに衛兵へ詰め寄る。
「今の言葉、取り消せ!」
「事実を言っただけだ」
若い衛兵は槍へ手をかけた。
「王国の門前で騒ぎを起こすつもりか?」
「侮辱したのは、お前だ!」
シルフィエの手も腰の剣へ伸びる。周囲にいた衛兵たちが一斉に身構え、門の上の弓兵までこちらへ視線を向けた。
「シルフィエ、落ち着け」
フミタロウが素早く二人の間へ入った。
「ここで揉めたら、向こうの思うつぼや」
「だが、こいつは……!」
「腹立つんは分かる。でも、剣抜いたら俺らが悪いことにされる」
ミルキーとサンキチもシルフィエのそばへ寄り、剣へ伸ばした腕を押さえる。反対側では、ほかの衛兵たちが若い衛兵を制止した。
「何を騒いでいる!」
関所の奥から飛んできた一喝に、その場の全員が動きを止めた。
現れたのは、年長のエルフだった。衛兵たちがすぐに姿勢を正したところを見ると、この関所を預かる衛兵長らしい。
「紹介状を見せろ」
「しかし、この者たちは――」
「いいから渡せ」
若い衛兵は不満そうな顔を残しながら、紹介状を差し出した。
衛兵長は封の印を確認し、書状を開く。署名だけで判断せず、最初から最後まで落ち着いて内容を読み終えると、紹介状を丁寧に畳んだ。
「正式な紹介状だ。何も問題はない」
「ですが、ダークエルフと人族を王国へ入れるなど……」
なおも食い下がる若い衛兵を、衛兵長は厳しく見据えた。
「お前の考えを、王国の決まりより優先するな。通してやれ」
「……承知しました」
若い衛兵は納得していない様子だったが、命令には逆らえない。槍を引き、一行の前から退いた。
衛兵長から紹介状を返されたシルフィエは、それを後ろにいるミルキーへ差し出した。
「すまなかったな」
「いいえ。預かっておきます」
ミルキーは再び書状を大切にしまった。
やがて、木々の間を塞いでいた大きな門が、重い音を立てて開いていく。
門の向こうには、巨大な樹木に覆われた深い森が広がっていた。長い年月を生きた木々が空を覆い、奥へ延びる道には昼間でも薄暗い影が落ちている。
シルフィエを先頭に、フミタロウたちは門をくぐった。
背後や関所の上から、何人ものエルフが冷たい視線を向けている。その中には、先ほどの若い衛兵と同じ考えを持つ者もいるのだろう。
「入るだけで、えらい苦労したな」
フミタロウが肩越しに門を振り返る。
「まだ入口だ。気を抜くな」
シルフィエは前方の森から目を離さず、短く警告した。
こうして一行は、他種族を拒み始めたエルフ王国へ足を踏み入れた。
サリートラベル用品店
エルリーフの大通りに店を構える、旅人向けの用品店。
店内には傷薬、保存食、雨具、ロープ、ランタン、調理器具など、旅に必要な品物が幅広くそろえられている。
エルフの薬品、人族の保存食、ドワーフ製の金属工具――種族を問わず、質の良い品を仕入れるのが店主サリーの方針である。
エルリーフのエルフ商人は、人間を雇って店頭の対応を任せるのが普通だ。サリーも人間の女性店員と店を切り盛りしているが、自ら客の前へ出て接客する、数少ない例外でもある。
しかし現在は、エルフ王国内で他種族との交流を拒む動きが強まっている。その影響で、ドワーフ製品などの仕入れを減らさざるを得なくなった。
「サリー様、ドワーフ製のランタンが残り二つです」
「分かったわ。しばらくは大切に売りましょう」
人間の女性店員とともに残り少ない在庫を管理しながらも、サリーは店を訪れる旅人へ明るい笑顔を向ける。
「種族に関係なく、旅人なら誰でも歓迎よ!」
ただし、扉を開けてクリフトスが姿を見せた瞬間だけは、その笑顔が明らかに一段明るくなった。
「もちろん、素敵なお客様は特に大歓迎!」
「ありがとうございます」
クリフトスが爽やかに礼を返す。その後ろで、人間の女性店員が淡々と付け加えた。
「それは店主個人の方針です」
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