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漏洩の加護  作者: なつみかん
第七章 ドワーフの坑道
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特別SS クリフトスの日記

活動報告に掲載した特別版です


 本日のミルキー様も素晴らしかった。


 朝の祈りを捧げる横顔は穏やかで、差し込む朝日が金色の髪を美しく照らしていた。旅の疲れなど少しも感じさせず、皆へ向けられる笑顔も普段と変わらない。


 その姿を見ているだけで、今日も一日頑張ろうという気持ちになれる。


 戦いになれば、力強い風の魔法で敵を退ける。傷ついた者がいれば、真っ先に駆け寄って治療する。そして夜には、皆のために笛を奏でてくださる。


 清らかで、美しく、優しく、それでいて芯が強い。


 さすがミルキー様である。


 この方とともに旅ができる私は、なんと幸運なのだろう。


 ……違う。


 今日は、このパーティーについて記録するつもりだった。


 私はこれまで、誰かとパーティーを組んで旅をした経験がない。


 ましてや魔王を倒すための旅である。


 同行を申し出た時には、もっと厳しく、張り詰めた日々になるものだと思っていた。


 一つの判断が仲間の命を左右し、いつ敵に襲われるか分からない。皆がそれぞれの使命を背負い、重苦しい空気の中を黙々と進んでいく。


 そのくらい真面目で、シリアスな冒険を想像していたのだ。


 私も相応の覚悟を決め、その心づもりで参加した。


 ところが、実際に始まった旅は毎日騒がしい。


 とりわけフミタロウさんとサンキチさんの二人には、緊張感というものが欠けている。


 普段なら、まだ分かる。


 しかし、この二人は戦闘中であっても変わらない。


 危険な状況でも普段と同じ調子で話し、時にはどちらが面倒な役目を引き受けるかで言い争いを始める。


 初めの頃、私は二人が危険を理解していないのではないかと心配していた。


 だが、そうではなかった。


 二人とも危険は理解している。


 理解したうえで、なぜか普段どおりなのである。


 特に困るのは、戦闘中に私の知らない言葉を使い始めることだ。


 先日、ひときわ大きな魔物が現れた時のことである。


「おい、サンキチくん! ボスキャラや! メテオぐらいの隕石落とす魔法かましたれ!」


「はあ? そんな魔法、使えるわけないでしょ! フミタロウさんが卍解とかしてください!」


「あほか! あれは死神の技や!」


 二人は、そのような会話を交わしながら魔物の攻撃を避けていた。


 まず、ボスキャラとは何なのか。


 メテオとは魔法の名前なのだろうか。隕石を落とすほどの大魔法を、なぜサンキチさんなら使えると思ったのか。


 そして、卍解とは何なのか。


 死神の技なら、なぜフミタロウさんに使わせようとしたのか。


 まったく意味が分からない。


 それでも二人の間では会話が成立しているらしい。


 私だけが取り残されたまま、戦闘は続いていった。


 以前、勇気を出してその場で意味を尋ねたことがある。


 するとフミタロウさんは、元の世界の文化や物語から説明を始めた。


 話を聞く前より分からなくなった。


 それ以来、戦闘中に尋ねるのはやめている。


 いつも後から、ミルキー様へこっそり意味を聞くことにした。


「先ほど、フミタロウさんたちが話していた言葉は、どういう意味なのでしょうか」


 私が尋ねると、ミルキー様は少し困った顔をされた。


「ごめんなさい。私もよく分かっていないんです」


 ミルキー様にも分からないことがある。


 それを知っただけでも、この旅へ参加した意味はあったと思う。


 ただ、その後でミルキー様は、分からないなりに一生懸命考えてくださった。


「でも、たぶんフミタロウさんたちの世界にある物語の話だと思います」


 そう言って丁寧に説明しようとしてくださる姿も、やはり素晴らしい。


 しかし、あの二人には、もう少し分かりやすい言葉で話していただきたい。


 私が理解できないことは仕方がない。


 だが、ミルキー様に困った顔をさせるのは許しがたい。


 ……また話がそれた。


 このパーティーには、もう一つ不思議な点がある。


 なぜか、すぐにトラブルへ巻き込まれる。


 町へ行けば事件が起こり、船へ乗れば騒ぎが起こり、薬草を探しに行けば断崖絶壁からつり下げられる。


 今回は何も起こらないだろうと思った時ほど、何かが起こる。


 最近ではフミタロウさんが「今回は楽勝やな」と言うたび、私は周囲を警戒するようになった。


 サンキチさんも同じらしい。


 二人とも普段は緊張感がないのに、こういう時だけ妙な危機察知能力を発揮する。


 よく分からない人たちである。


 けれど、本当に危険が迫った時、フミタロウさんは必ず仲間の前へ出る。


 サンキチさんは怖がりながらも、誰かを守るために魔法を使う。


 ミルキー様は、どれほど疲れていても傷ついた者を見捨てない。


 皆、普段は好き勝手なことをしているように見えるのに、戦う時には不思議と動きが重なる。


 私もいつの間にか、その中にいる。


 思い描いていた冒険譚とは、ずいぶん違っていた。


 静かで厳粛な旅ではない。


 毎日騒がしく、話の半分は理解できず、行く先々で面倒事に巻き込まれる。


 日記を書く時間さえ満足に取れない日も多い。


 それでも、明日はどんな一日になるのだろうと考えている自分がいる。


 パーティーを組むのは初めてだが――。


 どうやら私は、思っていた以上にこの旅を楽しんでいるらしい。


 もちろん、魔王を倒すという目的を忘れたわけではない。


 これから先、さらに危険な戦いが待っているだろう。


 その時こそ、私が皆を支えなければならない。


 特にミルキー様は、私が命に代えてもお守りする。


 いや、命を失えばミルキー様を守れなくなるので、生きてお守りする。


 それが最も重要である。


 なお、明日もミルキー様の演奏を聴ける予定だ。


 非常に楽しみである


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