特別SS クリフトスの日記
活動報告に掲載した特別版です
本日のミルキー様も素晴らしかった。
朝の祈りを捧げる横顔は穏やかで、差し込む朝日が金色の髪を美しく照らしていた。旅の疲れなど少しも感じさせず、皆へ向けられる笑顔も普段と変わらない。
その姿を見ているだけで、今日も一日頑張ろうという気持ちになれる。
戦いになれば、力強い風の魔法で敵を退ける。傷ついた者がいれば、真っ先に駆け寄って治療する。そして夜には、皆のために笛を奏でてくださる。
清らかで、美しく、優しく、それでいて芯が強い。
さすがミルキー様である。
この方とともに旅ができる私は、なんと幸運なのだろう。
……違う。
今日は、このパーティーについて記録するつもりだった。
私はこれまで、誰かとパーティーを組んで旅をした経験がない。
ましてや魔王を倒すための旅である。
同行を申し出た時には、もっと厳しく、張り詰めた日々になるものだと思っていた。
一つの判断が仲間の命を左右し、いつ敵に襲われるか分からない。皆がそれぞれの使命を背負い、重苦しい空気の中を黙々と進んでいく。
そのくらい真面目で、シリアスな冒険を想像していたのだ。
私も相応の覚悟を決め、その心づもりで参加した。
ところが、実際に始まった旅は毎日騒がしい。
とりわけフミタロウさんとサンキチさんの二人には、緊張感というものが欠けている。
普段なら、まだ分かる。
しかし、この二人は戦闘中であっても変わらない。
危険な状況でも普段と同じ調子で話し、時にはどちらが面倒な役目を引き受けるかで言い争いを始める。
初めの頃、私は二人が危険を理解していないのではないかと心配していた。
だが、そうではなかった。
二人とも危険は理解している。
理解したうえで、なぜか普段どおりなのである。
特に困るのは、戦闘中に私の知らない言葉を使い始めることだ。
先日、ひときわ大きな魔物が現れた時のことである。
「おい、サンキチくん! ボスキャラや! メテオぐらいの隕石落とす魔法かましたれ!」
「はあ? そんな魔法、使えるわけないでしょ! フミタロウさんが卍解とかしてください!」
「あほか! あれは死神の技や!」
二人は、そのような会話を交わしながら魔物の攻撃を避けていた。
まず、ボスキャラとは何なのか。
メテオとは魔法の名前なのだろうか。隕石を落とすほどの大魔法を、なぜサンキチさんなら使えると思ったのか。
そして、卍解とは何なのか。
死神の技なら、なぜフミタロウさんに使わせようとしたのか。
まったく意味が分からない。
それでも二人の間では会話が成立しているらしい。
私だけが取り残されたまま、戦闘は続いていった。
以前、勇気を出してその場で意味を尋ねたことがある。
するとフミタロウさんは、元の世界の文化や物語から説明を始めた。
話を聞く前より分からなくなった。
それ以来、戦闘中に尋ねるのはやめている。
いつも後から、ミルキー様へこっそり意味を聞くことにした。
「先ほど、フミタロウさんたちが話していた言葉は、どういう意味なのでしょうか」
私が尋ねると、ミルキー様は少し困った顔をされた。
「ごめんなさい。私もよく分かっていないんです」
ミルキー様にも分からないことがある。
それを知っただけでも、この旅へ参加した意味はあったと思う。
ただ、その後でミルキー様は、分からないなりに一生懸命考えてくださった。
「でも、たぶんフミタロウさんたちの世界にある物語の話だと思います」
そう言って丁寧に説明しようとしてくださる姿も、やはり素晴らしい。
しかし、あの二人には、もう少し分かりやすい言葉で話していただきたい。
私が理解できないことは仕方がない。
だが、ミルキー様に困った顔をさせるのは許しがたい。
……また話がそれた。
このパーティーには、もう一つ不思議な点がある。
なぜか、すぐにトラブルへ巻き込まれる。
町へ行けば事件が起こり、船へ乗れば騒ぎが起こり、薬草を探しに行けば断崖絶壁からつり下げられる。
今回は何も起こらないだろうと思った時ほど、何かが起こる。
最近ではフミタロウさんが「今回は楽勝やな」と言うたび、私は周囲を警戒するようになった。
サンキチさんも同じらしい。
二人とも普段は緊張感がないのに、こういう時だけ妙な危機察知能力を発揮する。
よく分からない人たちである。
けれど、本当に危険が迫った時、フミタロウさんは必ず仲間の前へ出る。
サンキチさんは怖がりながらも、誰かを守るために魔法を使う。
ミルキー様は、どれほど疲れていても傷ついた者を見捨てない。
皆、普段は好き勝手なことをしているように見えるのに、戦う時には不思議と動きが重なる。
私もいつの間にか、その中にいる。
思い描いていた冒険譚とは、ずいぶん違っていた。
静かで厳粛な旅ではない。
毎日騒がしく、話の半分は理解できず、行く先々で面倒事に巻き込まれる。
日記を書く時間さえ満足に取れない日も多い。
それでも、明日はどんな一日になるのだろうと考えている自分がいる。
パーティーを組むのは初めてだが――。
どうやら私は、思っていた以上にこの旅を楽しんでいるらしい。
もちろん、魔王を倒すという目的を忘れたわけではない。
これから先、さらに危険な戦いが待っているだろう。
その時こそ、私が皆を支えなければならない。
特にミルキー様は、私が命に代えてもお守りする。
いや、命を失えばミルキー様を守れなくなるので、生きてお守りする。
それが最も重要である。
なお、明日もミルキー様の演奏を聴ける予定だ。
非常に楽しみである




