表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/31

宝荘

 舞蘭のいびきも収まって、明け方になってようやく、うとうとしだす。

 そして夢を見た。ああ、ここは地底湖か、何故だか俺は潜っている。まだ初心者のスクーバ・ダイバーなんだぞ。無理は出来ないし、そのうえ運動音痴なんだ。そんな状況なのだが真っ暗な湖を深く深く潜っている。そして湖の底に何かを見つけた。

 あれは何だ。金塊か、いや、違うな。なにやら動物のような、ああ、あれは人間じゃないか。俺は急いでそこまで潜っていく。だが、もどかしいように体が動いてくれない。うう、やはり初心者にはきつい。

 それでもようやく人体らしきものの近くまで来た。うつ伏せになって湖底に沈んでいるようだ。俺はその人間を起こす。うつ伏せだった身体が反転して、その人間の顔があらわになる。

 何と、それは俺自身だった。

 なんでだ!

 その瞬間に後ろから首を絞められた。く、苦しい。た、助けてくれ。俺はもがく。もがくが首はどんどん締まっていくではないか。く、苦しい。た、助けてくれ。

 はっとして目が覚めた。ところが目が覚めても相変わらず首が苦しい。

 俺の首には舞蘭の桜島大根のような足が乗っていた。俺はその大根を避ける。

「おい、舞蘭、起きろ、朝だぞ」

 寝ぼけ眼で舞蘭が起きた。

「え、もう朝か……」一瞬ここがどこかわからないようだ。周囲をきょろきょろ見ている。そして何を言うかと思ったら、「さあ、朝飯だ」そう言うとどんどん歩いて出て行った。

 俺に対する感謝はないのか、まったく呆れるしかない。


 朝食後、昨日おかみから聞いた宝荘を訪ねることになった。先方にはおかみさんから、あらかじめ電話をしてもらった。神照島の民宿は前頭港に4軒あって、ほとんどが港近くにある。宝荘は黄金荘からは数百メートルの場所にあった。

 黄金壮ほど大きくはないが、2階建てのアパートのような宿だった。

「おじゃまします」

 江南を先頭に中に入って行く。

 すぐにおかみさんらしき女性が顔を出した。

 年の頃は50歳ぐらいだろうか、黄金壮のおかみとは同年代に見える。

「黄金壮のおかみさんから紹介されました、江南と申します。少しお話を聞かせてください」

「はい、聞いてます。今、お茶を出しますね」

 おかまいなくと言ったが、おかみさんは厨房からお茶とお茶菓子を用意してくれた。

 舞蘭はさっそくその黒糖のお菓子を頬張っていた。さっき朝食を食べたばかりなのに……。

 江南が全員の紹介と名刺を渡してから口火を切る。

「ひと月前にこちらの宿に、弊社の記者がお世話になったと聞きました」

 おかみは名刺を見ながら言う。

「あの人、週刊ジャーナルの記者さんでしたか」

「ええ、フリーの記者なので、週刊誌の名前は出さなかったのかもしれません」

「そうですね。記者だとはおっしゃってましたね」

 舞蘭が質問する。

「それでこちらからいなくなったと聞きました」

「ええ、戻らないかもしれないとは言ってましたね。なんでもいったん内地に戻るっておっしゃってましたから」

「内地ということは鹿児島ですね」

「そうです。こちらで調べた内容を確認したいと言うことでね」

 内容を確認とは何だろう。舞蘭の質問は続く。

「彼は神照島の金塊を探していたんですよね」

「そう言ってました。でもそれは無理みたいだと早々にあきらめていましたよ」

「島の周辺を調査したんですよね」

「そのようです。島唄や島民にも熱心に取材していましたから」

「あきらめたのに何を確認しようとしたんですか?」

「この島の秘密がわかったとか言ってましたよ」

「この島の秘密?」

「ええ、それで古い話を知ってる人間はいないかという話でした。昔の話ならここに住んでいた曾祖母が知ってるかもと話をしたら、是非にと言われるので紹介しました。曾祖母は内地の施設にいるんです。それで記者さんは出て行きました」

「曾祖母さんですか?」

「ええ、もう90歳を越えて何かあったら大変だということで、内地の施設に移ってもらったんです」

「その記者は何を知りたがったんですか?」

「なんて言ったかな、確か繁りとか、なんとか言ってたかな」

「繁り夜ですか」

「ええ、ええ、そうです。繁り夜です」

 話がつながった。行方不明の記者は『繁り夜』をしらべていた。つまりはそれが特ダネにつながったということだ。

「そのおばあちゃんの居場所はわかりますか?」

「ええ、わかりますよ」そう言うと奥に引っ込んでいく。

「舞蘭、話がつながったな」

 舞蘭は例の笑顔を見せる。

「俺たちも鹿児島に戻るのか?」

「いや、それをやってる余裕はないだろ。我々の目的は1週間での宝探しだ」

「じゃあ、後でやるのか?」

 舞蘭は答えないが、笑みを浮かべる。何か策はあるようだった。

 おかみさんが持ってきたパンフレットを、舞蘭はスマホに撮る。曾祖母の名前も確認した。

 これで聞き取りは終了したということで、おかみさんに挨拶して宿を後にする。舞蘭は颯爽と歩く。

「じゃあ、いったん宿に戻るか」

「これからどうする?」

「おそらく警察が何かを掴んだはずだ」

「警察がか?」

 何だろう、警察が何かを掴むことができたのだろうか。そして舞蘭は何かわかっているのだろうか。確かに舞蘭は確信に満ちた顔をしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ