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祈りの頭 打ち据えよ

 舞蘭は雷雲寺に行こうと言う。

 俺は警察がうじゃうじゃいるところには行きたくなかったが、取材もあってその提案に従う。あくまで舞蘭の取材が主なのだ。


 行ってみると、雷雲寺はいつもの静かな寺では無かった。

 寺全体を照らすようにライトがたかれ、境内や寺は昼間の明るさになっていた。周辺には非常線が張られ、立ち入り禁止処理も取られていた。

 どこで聞きつけたのか大勢の野次馬らしき島民たちが寺を囲んで、うわさ話をしていた。

 俺たちも非常線手前まで行ってみる。

 寺からいつも島田と一緒にいる若い刑事が出てきた。

 彼は舞蘭に気付いてこちらに来る。

「守須さんの言ったとおりになったよ」

 刑事は参ったとばかり、頭をかきながら話す。舞蘭とは顔なじみだ。

「警備はしていたんですよね」

「もちろんだよ。私と島田警部、他数名で寺の周辺を警備していた」

「それでも和尚は殺されたんですか?」

「和尚に危険が迫っているかもしれないと話はしたんだ。島唄との関連性はわからないが、警戒をしてくれとね」

「和尚は何と?」

「心配ご無用だと言ってね。我々が周辺を警備することは許可してくれたんだが……」

「和尚はどんな風に殺されたんですか?」

 若い刑事は不思議そうな顔をする。

「それが変なんだ。5時過ぎだったかな、和尚は本堂で日課のお経を読むと言って閉じこもった。我々は本堂、ここでは金堂というらしいけど、その周辺を見回っていたんだ。そうしたらいきなり、和尚が叫び声をあげた。私が最初に本堂に入ったんだが、和尚は前のめりに倒れていて、頭が血まみれで……仏具も転がっていた。あれは何といったかな。金属製の桶みたいな、叩くと音がするやつ」

「桶みたいなといえば、?(きん)ですね。お経を唱える時に鳴らすものです」

「そうそれだ。血も付いてたから、あれで頭を一撃だったと思う」

「頭のどの辺ですか?」

「血まみれだったからはっきりとはしないが、多分、後頭部だな。正確には監察医の報告を待つしかないけど……」

 そこへ例の鬼瓦が顔を出した。俺たちと話をしている刑事に気付く。

「おい、荒木、何してる」

「あ、はい、すいません」

 真っ赤な顔で島田警部がこちらに来る。

「部外者に余計な話をしてるんじゃないよな」

「ああ、はい……」

 荒木はどぎまぎしている。舞蘭が質問する。

「島田さん、犯人は見つかりましたか?」

 島田はいつものように眉間にしわを寄せて、睨むように言う。

「これからだ」

「周囲に警察官がいたんですよね」

 普通の子供なら島田ににらまれたら、すくむはずだが、舞蘭は全く動じない。

「まあ、そうだ」

「犯人が見つからないのはおかしくないですか?」

 島田はむっとして言う。

「悪いが無駄話をしている暇はない。今、本堂の周辺を捜査中だ。おい、荒木、行くぞ」

 島田たちは舞蘭の追及を避けるように現場に戻っていく。

「警察にはわからないだろうな」

 舞蘭がつぶやく。

「本堂に抜け穴なんか、あったんですかね」

「さあ、どうかな。その点は警察が調べてくれるだろう。じゃあ我々は帰るとするか」

「はい」

 車に戻ろうとして俺は思い出す。

「和尚さんが亡くなったなら、舞蘭が聞きたかった繁り夜についてはもうわからないね」

「そうだな」

「そうなると自治会長さんに聞くしかないか」

「さて、話してくれるかな」

 そういう舞蘭は、いつもの悪魔の笑みを浮かべる。

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