やっぱり
嵐のような女の子だった。
振っていた手を下ろし、空を見上げる。
今日は天気が良い。
「ごめん、待たせた。緑茶とほうじ茶、どっちがいい?」
肌寒さを感じてきた私を察して、暖かい飲み物を買いに行ってくれていた颯人くんが戻ってきた。
ほうじ茶を指差し、お金を返そうとするが、頑なに断られる。
「そういえば、さっき妹さんが来たよ」
颯人くんはお茶を吹き出しそうになっていたが、熱さであまり口に含めていなかったおかげか、ゆっくりと飲み込んだ。
「ハァ!?何でっ…、てか、千愛のこと見たことあったっけ?」
「ないけど、似てたから。目元とか、雰囲気とか」
「…似てねえけど。なんて言ってた?」
「よく分からないけど、颯人くんは妹さんからとても好かれてるんだなって。そういう会話したかな」
「んだそれ。全然わかんねえし、全然好かれてねえよ」
妹の千愛さんっていう人は、私たちに最初からついてきていたんだろうか。
ブラコンって架空の種族だと思っていたから、本物を目の当たりにして言葉が奪われてしまったせいで、上手く話せなかった。
こう言っては失礼かもしれないが、可愛いかったな。
お兄ちゃんが誰かにとられちゃうのが寂しいのだろう。
『彼女』という立場になって現れたのは驚いたが、必死になっていたのかと思うと、それも愛らしい部分だと頷ける。
「………颯人くんは、きっと本当に良い人なんだね」
「は?疑ってんのか」
「ううん。妹さんと会って、よりそう思えた」
「…?」
一番身近な家族にあれだけの熱量で想われるのなら、それは羨ましいものだ。
私にはなかったから、両親からすると相当性格の曲がった愛嬌のない子供だったのだろう。
「なあ、海美」
「ん?」
体温が奪われた両手を温かいペットボトルで覆いながら、お茶を飲もうと口をつける前に、名前を呼ばれる。
「俺はあの人みたいに平行線を望んでない。ちゃんとした返答を待ってるから」
“あの人”とはうじくんのことで、“返答”とは告白のことだろう。
颯人くんは、私と今以上の関係を求めている。
「…うん。わかった」
彼の言葉は直球すぎて、たまに困ってしまう。
だけど、よく消化しきれない感情を曖昧にする私にとって、彼くらいが丁度いいのかもしれない。
差し伸ばされた手に、自分の手を重ねる。
そして、当然のように彼は私の手を握ってくれる。
距離が近いだなんて考えもせず、躊躇もせず、私に触れたいという彼の本心が滲み出ている証なのだろうか。
―――それが恋なんだ。
「待って!」
身を預けようとした刹那。
声がした方向から腕を掴まれ、颯人くんと繋いでいた手が離れる。
決して強くはない力で引っ張られたかと思えば、後頭部に硬い感触が当たった。大きな影に覆われながら、頭上を見上げる。
瞳に映った人物に、何故か胸の辺りが熱くなった。
「ごめん、やっぱり俺っ…最低な男だった」
「うじくん…」
颯人くんと向かい合ったうじくんは、私の腕を掴んだ手を離さなかった。




