↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/66

ふたつの影

 

 ーーー約束の時間まで、まだ三十分も早い。


 しかし、俺が想いを寄せている人はその場に姿を現した。


「三浦さん…」


 木の陰で身を隠している変質者の名は、氏家瑛二(うじいええいじ)、俺だ。

 昨夜、突然雹牙から連絡が来たと思えば「ノワールさんがいかなくても俺はいきますよ」という宣戦布告のようなものを受けた。


 詳細を聞いてみると、まさに今日、雹牙と三浦さんが一緒に映画デートをするという話だった。

 特に返信はしなかったが、三浦さんの性格上、どう考えても雹牙が無理に連れ出していることは確実だろう。


 雹牙に限って、三浦さんが本気で嫌がるようなことはしないと思うが、今日の起こりうることを知ってしまってからは、一睡もできていない。


 それどころか、心配になるあまり、こんな尾行紛いなことまで…。


 絶対に二人に知られないよう、細心の注意を払おう。


 固く自分の心に誓い、雹牙に手を繋がれたまま引っ張られていく三浦さんの後を追った。



 ーーー同時刻。


 金色の髪を家から尾行し、目的地に着いたらしく足を止めたその男に気づかれないまま、建物の影に隠れる。


 ………怪しい。


 私、千原千愛(ちはらちあ)の兄である千原颯人(ちはらはやと)の言動がらいつになく可笑しいのだ。

 家とネカフェの行き来しかしない兄が、なーんかお洒落なアクセサリーなんかつけて、いつも無造作な金髪の髪もセットしちゃって、こんな朝早くから出掛けるなんてありえない。


 絶対に女だ!

 この可愛い妹の私を放って、どこの馬の骨かも分からない女に引っかかってやがんだ!


 普段は喧嘩の絶えない兄妹だが、本当は兄のことが大好きである。

 そんな素振り見せてこなかったから、本人は気づいていないが、もしも嫌いだったら兄貴の家に週四で通ったりしない。


 兄貴はつり目で雰囲気は厳ついが、鼻筋も通っているし、小顔で色白で、身長はさほど高くないが、ゲーマーにしては程よく筋肉はあるし、かっこいいほうだ。


 口は悪いけど、困っている人には必ず手を差し伸べる優しい性格だし、捨てられている野良猫を見過ごせずご近所さんに飼ってもらえないかとインターホンを押しまくっていたことも知ってるし、ご飯の時間だって「いただきます」と「ごちそうさま」を忘れない。

 いい兄貴で、いい男なんだ。


 変な女に騙されていいわけがない!


 ギシギシと歯を軋ませていると、兄貴は遠くで何か見つけたようで、ある人物に駆け寄り肩を掴んだ。


 やっぱり………女だ。


 深く帽子を被っているが、背格好や体格で女性だとわかる。

 二人は何か話していたが、すぐに兄貴がその女と手を繋ぎ、歩き出した。


 まるで兄貴から手を引いているように見えるが、絶対に計算している。か弱い女アピールで、兄貴の気も引こうとしてるんだ!

 許せない…!


 二人の姿を見失わないよう、建物、植物、人、あらゆるものに紛れながら、二人の背中を追いかけた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。