朝露
ーーー六時間にも及ぶ死闘の末、優勝チームは決まった。
《…惜しかったにゃろね》
「………そうだね」
私たちのチームは、三回戦で今大会最強と噂されていた倉嵜朔夜率いるチームと対峙し、五ラウンドを勝ち取ることができたが、圧倒的な実力差に敗北した。
敗因は単純なもので、倉嵜朔夜というVTuberの実力に対抗できる人がノワール・シャーロックしかいなかったこと。
そして、そのノワール・シャーロックを倉嵜朔夜と真っ向から対面させることなく、他の四人でノワール・シャーロックをロックしながら身動きを封じ、その間に倉嵜朔夜が私たちの場所を探し当て、最後は二人の一騎打ちで終わらせるというゲームメイクを繰り返された。
この戦法はこの日初めて行われたもので、対抗策はその場凌ぎ。
かなりパワープレーな敵チームの戦略ではあったが“チームで勝つ”と掲げていた私たちにとって、いちばん戦いづらい相手となった。
《まあ、色々思うことはあるけど、負けは負けだもんなぁ》
マオさんはやっと肩の力が抜けたのか、いつものような語気はない。
《勝ちへの執着の差だね。俺が全部朔夜さんに勝てれば良い話だったんだけど…》
《なに湿気てんすか。あいつらはチームを信じず倉嵜朔夜…さんに全部任せただけっすよ。俺らのマオさんは俺らを信じて戦ってくれたし、それは勝ちよりもかっけぇことっすよ。だせぇ勝ち方せずに良かったです、俺は》
《お前なぁ、また炎上するぞ》
男のプライドなのか、はたまた友情なのか、談笑し合う三人の傍らで、私は涙を堪えていた。
たくさん練習したし、ゲームへの理解を深めるために色んな動画も見て勉強したけど、それでも私の実力はまだまだチームの貢献には足りなかった。
私じゃない他の誰かだったら、勝てたかもしれない。
何も出来なかった自分を静かに責めていると、小さい嗚咽のような声が聞こえた。
《うっ……でも、やっぱり、悔しい…っ!にゃろが、もっとにゃろが…強かったら…っ》
大粒の涙を流しているのだろうにゃろちゃんは、すぐに音声をミュートにする。
「にゃろちゃん…」
にゃろちゃんはこのゲームが本当に好きだと、いつも楽しそうに私に話してくれていた。
いつも隣で私のことを支えながら、皆の力になろうと誰よりも声を出し、誰よりもチームを励ましてくれた。
そんな彼女の中で最後に残ったのが自分への無力さだなんて、そんな悔しいことがあっていいのだろうか。
私も堪らず、瞳から押さえきれないほどの雫を流す。
《にゃろちは強かったよ!上手くなったし、のひちゃんもよくここまで頑張ってくれた!ノワールも安定した強さを見せてくれて俺まで安心したし、雹牙だってプレッシャーの中よく戦ったじゃん!》
《………》
《…んだよ、泣かせる気かよっ》
《うぅぅ〜、マオくん…にゃろ泣いちゃうにゃろ…》
この五人で勝ちたかった。
本気で挑んだ初めての大会で、ずっと一人で活動をしてきた海月のひめにとって、初めて仲間と呼べる存在ができたからこそ、悔いが残る思い出にしてしまった。
勝たせてあげられなくてごめん、なんて図々しいことは言えない。
だけどーーー。
「私も…この五人で戦えたから…頑張れたよ。ありがとう、みんな」
《のひちゃぁん!こちらこそ、ありがとう…にゃろぉ!》
《俺もこの五人だから、最後まで諦められなかった。ありがとう》
《…みんな、ありがとな》
《ありがとう!俺たち五人が最強だったから、こんなに楽しいゲームができたよ!誘ってよかったし、来てくれて本当にありがとう!》
五人は配信が終わった後も、夜が明けるまで、育ててきた思い出に水を撒いたのだった。




