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焦りの礫

 

 この大会で優勝するには、トーナメント戦で全て勝ち上がること。

 八つのチームがランダムに振り分けられ、初戦の対戦チームは前日に運営から告げられる。


 要は、いかに相性の悪いチームから遠く配置されるかの運試しから始まり、残りの三回をどう勝ち進めるかが重要な鍵となっている。

 対策は練習試合を経て用意してはいるが、それは味方も敵も同じだ。


 大会全体の緊張が張り詰めた一戦目。

 気がつくと試合は終了していて、敵を照準に捕らえた覚えもなければ、上手く言葉を発せていたのかすら思い出せない。

 それは、私と行動を共にしていたにゃろちゃんがよく理解してくれていたようで、細かい指示や報告をかけてくれていた声だけは鮮明に残っていた。


 動揺をそのまま表に出してしまった私と、まるで違う動きを見せたのは、やはりノワール・シャーロックと宵闇マオだった。

 こういったゲームの大会に慣れているとはいえ、終始落ち着いた様子で安定したクオリティを保ち、敵の手の内を明かしながら薙ぎ倒していく二人の鮮やかな功績で、私たちのチームは危なげもなく勝利した。


 要注意人物である倉嵜朔夜(くらさきさくや)と当たらなくてよかったと、心底安心する。


 《とりあえず、みんな一回戦目お疲れ》


 《お疲れさま》


 《うす》


 《おつにゃろ〜!》


「お疲れさまっ」


 まだ心臓がドクドクしているせいで、全身に脈が響いている。


 《勝てたことに今は喜んで、また次の試合は切り替えていこう。のひちゃん、試合中は『ごめん』よりも、先に繋げる報告を優先すること。後からいくらでも反省できるから、チームで勝つことを頭に入れておいて》


 マオさんからの指摘で、曖昧だった自分の言動を把握することができ、すっと背筋が伸びた。


「ごめんなさい…わかった!」


 《のひちゃんとにゃろちは特に不意を突かれやすいポジションだし、俺たちも敵チームのそこを狙ってる。倒されることは悪いことじゃなくて、情報を取るっていう大事な役割だからね》


 罪悪感を感じさせないような優しいフォローを含めた言葉に、じんと目頭が熱くなったが、自分の至らなさや情けなさは実戦にぶつけるべきだと、このチームに教わった。


 次こそは、誰かに結果の行方を頼ることなく、自分の力でも勝ってみせる。


 唇を噛み締めて臨んだ二回戦。


 敵は最後の練習試合で敗北したチームだ。

 全戦を通して見ると勝ち越してはいるが、真新しい記憶はコンディションに影響しやすい。


 気を抜けない一戦になると、五人はマウスを握り直した。


 《のひめ!にゃろ!前に出るぞ!》


「もう出る!?」


 《にゃろたちは行けるけど…敵がまだ一人しか見えないにゃろ!》


 《雹牙、今敵エリアに何人いてる?》


 《俺は一人見てる!多分二人しかいねえよ!俺が一人、のひめとにゃろ二人でもう一人と撃ち合ってエリア取れる!あとはノワールさんに任せればっ…》


 《焦るな雹牙!ノワール、お前から視認できる敵はいるか?》


 司令塔であるマオさんの指示は、戦況によって優先度は上下するが、基本的には従順に動くよう全員の共通認識であった。


 確かに、雹牙くんは必要以上に焦っているように見える。


 《まだ。俺の方には見えない。もしかしたら四一陣形かも》


 《あいつらが守りを固める動きはしないだろ!?》


 《待て、状況が変わるまで攻めるな!》


 《チッ…》


 はっきりと雹牙くんの舌打ちが聞こえ、その苛立ちは伝播した。


 《焦んな。勝てるから》


 きつい口調でこの場を制圧すると、マオさんは呆れを隠すことなく、キャラクタースキルで敵エリアを索敵し始める。


 敵エリアには私とにゃろちゃんが視認した敵が一人、雹牙くんが視認した敵が一人、そしてノワールの予想通り、かなり後方で身を潜めている二人の敵が、マップに記されていた。


 《ノワール。雹牙と合流して倒せる敵から攻めていってくれ。のひちゃんとにゃろちは二人の援護を。俺はここのエリアに近づいてくる敵を見つけて、全員で殲滅しよう》


 《了解》


 《…んだよ、いんのかよ》


 《はいにゃろ!いくよ、のひちゃん!》


「うん!」


 五人は一斉に動き出し、敵エリアを攻め込むノワールと雹牙くんの回復と、援護射撃に徹した。

 敵エリアにいた四人は難なく倒しきり、あとは四十五秒、この場で待機すればいい。


 …このラウンドは勝てそうだ。


 《………見つけられない。もう一人はどこにいる?》


 マオさんが呟いた一言で、緩んだ糸が勢いよく引っ張られる。


 《隅は全部確認したの?》


 味方エリアに引き返しながら、ノワールが問いかける。


 《ああ。残りのキャラクターが…一定時間透明化を持つスキルだから、早くしないと…》


 《索敵スキルは………そうか》


 マオさんの索敵スキルは序盤の敵の戦法を見抜くために一回、そして勝利を確実にするために味方エリア内を確認するために一回、そういう使い方を続けてきた。


 しかし、敵エリアに攻め込むために残りの索敵スキルを使用していたため、残り一人の敵がどこにいるのか、分からない状態になっていたのだ。


 私たちが敵エリアに侵入してから三十九秒。

 それよりも先にこちらのエリアに敵が侵入しているとしたら…。


 画面上部に表示されているタイマーを祈るように見つめる。


【ROUND LOSE】


 四十三秒が一秒先に進む前に、それが映し出された。



四一陣形とは、味方エリア四人で守備を固め、一人が敵チームエリアに侵入する作戦のやつです。

四十五秒で敵エリアから味方エリアに移動するのは可能っていう感じの設定です。ただ、四十秒近くかかるのでそこから敵を倒すことができるか…ムムッて感じですね。


私はAPEXというFPSゲームが大好きなので、こういうゲームはしません。見るのは好きです。面白いから。

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