会合
本日の天気は曇りのち雨。
時刻は午前四時。
夜と朝の境目を決めるのが難しい時間に、予め指定されたエニコード内で作られたサーバーに五人のVtuberが集っていた。
《初めましてー。宵闇マオです。セヴラル所属です。よろしくお願いしまーす》
《同じくゼウラル所属、ノワール・シャーロックです。よろしくお願いします》
《氷柱雹牙です。よろしくお願いします》
《ぶいげーみすと所属、猫永にゃろでーす!お願いしまーす…にゃろ!》
「…く、海月のひめですっ!よろしくお願いします!」
唯ならぬ緊張感が漂う回線の中、張り詰めた糸を緩ませるような笑い声がした。
《いやぁーまさかこんな面子で大会に出られるなんて、本当に誘ってよかったよ。ノワールと雹芽は同じ事務所だから知ってるけど、猫永さんと海月さんはなんて呼べばいいかな?》
Vtuberの活動歴が最も長い宵闇マオという男は、慣れた口調で問いかけてきた。
この異例の会合は、今度開催されるVtuber活動者限定のカスタム大会『Vtuber頂上戦線』のチームメンバーが初対面する“顔合わせ”と呼ばれるもので、所謂ミーティングだ。
うじくんとは日頃から仲良くしているつもりだが、ノワール・シャーロックとして直接こうして関わったことはない。
お互い表と裏のギャップが大きいと理解はできているが、まるで他人のようだ。
《にゃろはみんなににゃろちって呼ばれてるけど、にゃろは何でもいいにゃろ》
猫永にゃろ…さんは『ぶいげーみすと』と呼ばれるゲームが得意なVTuberを中心に構成されている事務所だ。
初めて言葉を交わしたが、メリハリのある高い声と独特な語尾が特徴的な女の子。
私の住処が深海だとしたら、彼女は太陽の下だろう。
《じゃあ、にゃろちね。海月さんは?》
「私は…のひちゃんって、よく呼ばれているので、そんな感じで呼んでいただければっ…」
《えー硬い硬い!敬語は挨拶だけで、今からはタメ口で話そうよ!》
「はい…じゃなくて…うんっ。頑張る」
《俺とノワールと雹牙は、適当に呼んでくれていいから!大体みんな名前で呼び合ってるから、困ったら誰かと呼び方を合わせてよ》
《にゃろ》
「わかった!」
猫永さ…にゃろちの相槌は「にゃろ」なんだ…。
素を一切見せず完璧なロールプレイに、私はいちいち関心を寄せる。
《ま、今日はこんなところかな。夜も遅い…てか、もう朝か。次みんなが揃う時は配信に乗せて、視聴者のみんなに知ってもらう感じで。それぞれ実力もまだちゃんと見てないけど、個人的に俺が一緒にゲームしてみたかった人を選んだんだ。楽しく、でも真剣に、大会を楽しもうぜ》
《うん。わかってるよ、先輩》
《フン、俺は勝ちに行く》
《にゃろはいつでもガチアンドピースにゃろ!》
「頑張りま…頑張る!たくさん頑張る!」
雨が降り出す前に、私たち五人が見据える未来を、ともに胸の内へ秘めた。




