四つの面の意味
そう思った時、プチが足元にやってきた。可愛いので抱き上げると、いつものように膝の上に乗ってきた。きっと、構って欲しいのだと詩は思った。芽依ちゃんが言うように、プチは安らぎを与えてくれる使者だ。
そんな詩とプチには目もくれずに、しばらく芽依ちゃんは丹念にファイルを読みふけっていた。やがて好奇心が満たされたのか、残りの頁をペラペラと最後まで捲って、芽依ちゃんはファイルを閉じた。
「詩ちゃん、いっちゃんは凄いよ。」
芽依ちゃんが、いっちゃんのことを褒めてくれた。
「そうかな。」
詩も凄いと思っているが、少し照れくさいので謙遜して控えめに答えてみた。それを知ってか、芽依ちゃんは続けて言葉を繋いだ。
「本当に凄いよ。彼独りでこれを纏めたとすると、もはや人間とは思えない。」
詩は嬉しくなってニコッと笑っておどけてみせてみた。
「魔法使いみたいでしょ?」
今度は、芽依ちゃんはいたって真面目にこう言った。
「確かに魔法を使えても不思議ではないね。どうも神様の秘密も知っているみたいだし。」
芽依ちゃんは、そう言って研究レポートのファイルをテーブルの上に戻した後、もう一冊のファイル、 「Wahrheit」、日本語で「真理」というタイトルのファイルに目を向けた。
「こっちのファイルが、このレポートを纏めた真理の書なのね。なんだかドキドキする。」
芽依ちゃんは、次にそのファイルを手に取った。
「こっちも見てもいい?」
「もちろんよ。見てみて。」
彼女はそのファイルを慎重に開いた。そして、最初の頁にある目次を眺めていた。第1章は四つの面。第2章は八つの稜。第1章は、芽依ちゃんと語り合った内容で、既に二人の共通認識になっている。そう、この世界には、物質と精神の有無で決まる四つの面がある。以前、芽依ちゃんが書いてくれたメモによるとこうだ。
北の面:code00 物質0、精神0
西の面:code10 物質1、精神0
南の面:code11 物質1、精神1
東の面:code01 物質0、精神1
つまり、北の面は物質も精神もない虚無の世界、南の面は物質も精神も存在する生命が謳歌する世界、西の面は物質だけが存在し精神が存在しない世界、東の面は精神だけが存在する天国の世界だ。
詩がレポートで学んだ複素数の話しでいうと、物質はリアルを意味する実部、精神はイマジナリーを意味する虚部と捉えると、まさにこの世界は複素数の世界になる。神様やエルフは目には見えないけど、虚部として存在していて、実部である物質と共に存在している。人間でいうと、身体は物質だけど、心は精神でありお互いに連携しながら存在している。まるで哲学や宗教のような話だが、第1章が伝えていることはそういうことだと詩は思っている。
参考: 第四章真理 codeの意味




