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Pomegranate I  作者: Uta Katagi
第五章 約束

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可愛いプチ

 「ただいま!」

 会社から戻って、自宅のアパートの玄関ドアのカギを開錠して扉を開けると、プチが玄関まできて迎えに来てくれた。小さなしっぽが左右に揺れていて可愛い。足元までやって来てこちらを見上げている姿が何とも愛らしいので、しゃがみ込んで頭を撫でてあげた。


 「ミー!」

 プチは声を上げた。まるで、『おかえり』と言ってくれているような気がした。詩が通勤用のパンプスを脱いで玄関からリビングルームに向かうと、プチも一緒についてきた。詩は仕事用の黒いショルダーバッグをパソコンのあるデスクのところに置きに行った。プチはデスクの方ではなく、いっちゃんの実家から譲り受けた茶室の図書館の資料が入っている収納ケースの方に向かい、その前にちょこんと座った。


 最初の数日間は蚤が付いているかもしれないということだったので、ペットショップで購入したケージに入って貰っていたが、今はリビングルームのその場所がプチの定位置だ。収納ケースの前に座り込んで詩の様子を伺っているその姿は、まるで真理の書を守る番人のようだ。そのプチの格好が何かに似ているなと詩は思ったが、このときはまだ思いつかなかった。


 何とも不思議なネコちゃんだった。今までネコちゃんを飼ったことはなかったが、プチの雰囲気から佐藤さんが言うようにネコは本当に神様の使いなのかもしれないと詩は思った。


 「プチ、お腹空いたよね。今からご飯にするからね。」

 そういうと、またプチのしっぽが左右に揺れるのが見えた。どうも、声ではなくて、しっぽの動きでコミュニケ―ションを取っているみたいだ。そのしぐさがどこまでも可愛い。詩は、何よりも先にプチの夕飯の準備をするためにキッチンの方に向かった。

 

 先日の動物病院の診察の際、詩は先生にネコちゃんの食事についても詳しく聞いてみた。そのとき、先生から教えて貰ったことは、猫は穀物が消化できないとのことで、人間が食べるものは健康に良くないということだった。特に、調味料はネコちゃんのからだに良くないらしい。なので、私の食べ物を分けてあげたり、私がネコちゃんに料理することは出来ないことがわかった。結局、先生からは栄養バランスが良い子猫用のペットフードを与えるだけで良いと聞き、詩はネコちゃんのご飯のことで悩むことはなさそうだとわかって少し安心した。


 ただ、食事の回数は少し問題になった。つまり、プチはまだ子猫で成長期なので、食事は1日3回が好ましいと動物病院の先生はアドバイスしてくれた。けれども、詩は平日、仕事があるので朝と夕方しかプチと一緒に過ごせない。


 正直に先生にその話をすると、先生はしばらく手元にあるネコちゃんの診察結果を見た後、こう言ってくれた。

 『このネコちゃんは飼い猫と同じくらいにすくすくと育っていて、少なくとも生後半年以上は経過していると思われます。なので、もし時間を取るのが難しければ、成猫と同じようにそろそろ1日2回の食事でも構わないですよ。』


 詩は安心した。もし、十分にご飯を与えられないことになると、可哀想だけれども、自宅でネコちゃんを保護することはできないと思ったからだ。もちろん、実家に猫を預けることは考えられない。


 詩は先生にお礼を言い、動物病院を出た後、近所のスーパーに隣接するペットショップに向かった。子猫を自宅で保護するために葉音から聞いた必要なものを購入するためだ。詩がお店に入ってうろうろしていると、慣れない手つきで子猫を抱っこしている様子が目立ったのか、若葉色のエプロン姿の店員さんが声をかけてきた。


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