08.動き出す道具四課
「おはよう! 後輩君久しぶりー!」
久しぶりの道具四課の扉を開けると直ぐアンナさんが挨拶をくれる、三課への出向期間が十三日で一日気絶してニ日寝込んだから……とにかく久しぶりだ!
「ねぇねぇ魔道具開発どうなった? 出向どうだった?」
「良い道具が出来たと思います、出向と言うか魔道具開発は二度としたくありませんね」
開発を続けてたら絶対に体を壊す。
「でもー、ユーリ課長優しくてかわいいから楽しかったんじゃなないの?」
「普段は知りませんが開発に対してはとても厳しい人ですよ」
開発中は厳しいし、チビッコだし、男の更衣室に突撃するし、あれ? 良い所がないぞ?
「もう少し優しくするから、また僕と一緒に魔道具開発しようよ!」
背後に書類を抱えたユーリ課長が立っていた、良かった余計な事を言わなくて……。
ユーリ課長は真っ直ぐミスト課長代理の机に向かい
「ミスト〜!これが仕様書と発注と申請とその他の書類ね」
ミスト課長代理の机に大量の書類が置かれる。
「この魔道具は絶対売れるよ! 塔内に置いた試作品も評判良いし、それにもうジャンが営業部に持って行って売り込みしてるよ!」
ミスト課長代理はガタリっと椅子を倒しヨロヨロとユーリ課長に近づくと跪きユーリ課長を抱きしめる。
「ユーリ……」
「この商品が軌道に乗れば四課は忙しくなるよ、二課の奴らにも言ってやらなくちゃ、四課は新商品で忙しいのであなた方の仕事をしている暇は無い! ってね」
小さな課長が課長代理の頭を撫でながら話す。
「ユーリ……あ……ありがとう……ジャンも……本当にありがとう……」
ユーリ課長の小さな胸に顔を埋め課長代理が静かに泣き続けた。
冷風機が四課を大きく変えるかもしれない、いろんな物を削って開発した甲斐があった。
商品化を促したカイト、それに便宜を図ってくれた親方にお礼を言わないと、ケビンは……あいつはいっか。
あれから一週間が過ぎた、四課では本格的に冷風機作りが行われている。材料が課に届きそれを組み立てたり魔力付与したり動作確認など仕事は多岐に渡る。
他の課の雑用は未だに回ってくるが三課のジャン係長が根回しをしてくれて徐々に少なくなってきている。
「ガッケリーナ係長、この魔道回路の繋ぎ方が間違えているぞ、図面通りにしてくれ」
「ンマー! こっちの方がいいじゃない!」
「これでは正常に作動しない」
「だったら自分でやったらいいじゃない! もう疲れたから休憩するわ!」
三課の係長は優秀なのにウチの係長はガッカリ長だった。
「便利な魔道具だがダンジョンには持って行けんな」
冒険思考な主任や
「孫が暑くて寝付けんといかんから、さっそく購入して送ったわい」
「まあまあ、うちの息子夫婦にも送ろうかしら? 涼しい風を受けて熱い夜を過ごせば孫の一人や二人増えるかもしれないわぁ」
ガハハ、オホホ。
マイペースな老人コンビなど、まだ発注が少ないから余裕がある。
毎日残業していたが今日は定時で上がって風呂に行こう、時間がズレるといつもの面子が揃わないのだ。
大浴場更衣室に入るとケビンがじっと冷風機を見つめている。
「ケビン、ウチの新商品壊すなよ」
更衣室には盗難対策として鎖で繋がれるいる冷風機が二台設置してある
「あぁアル、これを開発したアル達はすごいね、僕も頑張ろうってね」
そう言って服を脱ぎ浴場に消えて行く。
薬品一課の新薬開発は難航していると噂で聞いている、四課の新商品開発を見て何か思う所があるのかも知れない。
浴場に入るといつもの面子が揃っていた、長湯の親方や不規則に来るケビンは何度か会っているが、カイトと兄貴は久しぶりに会う。
「冷風機いいじゃん! ウチの課にも置いてあるけど評価高いぞ!」
「訓練所の休憩場所にも設置してあって訓練後、皆が群がってるぞ、筋肉を冷やすのに丁度良いからな!」
全てジャン係長の戦略である、冷風機が完成したらすぐに塔内の色々な場所に設置し評判を聞き、評価と商品を営業部に持って行ったらしい、自分が寝込んでいる間に。
三課の係長なのになぜここまで四課に良くしてくれるのだろう?
「カイトありがと、お前が商品になるって言ってくれたのがきっかけだった、三課と四課を繋いでくれた親方も本当にありがとうございます」
「だから売れるって言っただろ」
「儂は自分に出来る事をやっただけじゃ、感謝される事はなんもしとらん」
「兄貴もありがとうございます、軍部の備品を横流しした事は黙っておきます」
「ハッハー……マジで言うなよ」
「ケビンお前のおかげで睡眠時間と体力がなくなった、ありがとう」
「えっ? 怒ってる? 感謝してないよね? ねぇ?」
風呂仲間のおかげて四課は新たな道を進み始める事ができた、新商品は風呂で生まれる、と言う格言を作りたいくらいだ。
「これで四課存続が確定した訳か」
カイトが不穏な事を言う。
「四課ってなくなりそうだったの?」
「えっ? お前知らなかった? マズイ……四課の人間が知らないと思わなかった……」
四課は思ったより崖っぷちに立っていたらしい。




