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07.冷風機

「おはようございます、って姉さんアル君徹夜したの?」

 ジャン係長が朝の作業場に入ってきた。

「だって後一息で目処が付きそうだったから最後まで仕上げたかったの、でもでも出来上がったんだよ、ホラ!」

 そう言って大小二つ、円柱を半分に切った様な物を指差す、冷風機が完成した。

 ユーリ課長の更衣室突撃事件から十三日経っていたらしいが記憶は曖昧だ。



 事件後、ユーリ課長の開発に直ぐ取り掛かりたい意向で道具四課から三課に出向になった、まだこの時は魔道具開発を甘く見ていた。



 初日

「この開発なら十日位で形にしたいね、それ以上掛かると業務に支障をきたすからね」

 いつまでも開発に時間は割けないよね、十日が長いか短いか知らんけど。

「まずはいろんな形の物を三十個位設計してみよっか」

 この日は夜中まで掛かった。


 ニ日目

「アルの魔力付与した物は売り物にならないから、練習してもらおっかな、この金属板に均一に魔力付与して剥がすを繰り返すの、魔力切れまでね! 時間が空いたら昨日設計した奴の長さや厚みも考えておいて、僕は他の課に備品を調達しに行ってくるね」

 この日も夜中まで掛かった、魔力は切れなかった。


 三日目

「ある程度道具が揃ったからガンガン作って行こう! アルは作りながらこの棒の端と端を魔道回路で繋ぐ練習もしといて! 魔力付与の練習も忘れずに!」

 気付くと日付はとっくにに変わっていた。


 四日目

 試作品を作り続けている所にカイトがやって来た。

「四課に行ったらこっちだって聞いたからな、ほらっ差し入れだ」

 小さな箱にはサンドイッチが入っていた、持つべきものは風呂仲間である、カイトが近づいてきて小声でで囁く。

「ユーリ課長ってカワイイよな、他の課でも人気あるんだぜ」

 見た目は子供だよ、このロリコンめ! じゃあ伝えてやろう。

「ユーリ課長! カワイイですって!」

「ばっ! やめろお前!」

「ありがとう、君もカッコいいよ」

 対応は大人の女性だった。

 そして今日は夜が明け始めていた。


 五日目

 致命的な欠陥が見つかる、温風と冷風を両方出そうとすると著しく耐久性が落ちるのだ。

「うーん、時期的に温風は切り捨てて冷風一本に絞ろうか、じゃあ全部やりなおしね!」

 えっ! マジ!

 もう明け方が普通になってきた。


 六日目

 冷風機の試作品を作っていると今度はケビンがやって来た。

「これ差し入れだよ、あの後ね色々考えたんだけど、出る風の強さを変えられたら良いかなーなんて……」

 バカ! 余計なことを……恐る恐るユーリ課長の方を振り返る。

「そうだよ! 風に強弱あった方が便利じゃん! なんでこんな簡単な事に気づかなかったんだろう! アル! 魔道回路全部引き直すよ!」

 地雷を踏み抜きやがった!

「ケービーンーお前も手伝え!」

「あっあの僕もう戻らなきゃ、がっ頑張ってね」

 ケビンは逃げ出した、アイツ余計な置き土産していきやがる。

 もう明け方を通り越して明るい、ケビンの所為だ。


 七日目

 黙々と試作品を作る、今日は四課のバレル主任が差し入れを持って来た。

「おっいい面構えになってんな、迷宮の最奥に着いた時の仲間と同じ様な顔してるぞ」

 ここは白の塔最奥のボス部屋です、もう頭がうまく働かない。

「嬢ちゃん、うちの課長代理が、全て任せてしまってすまない埋め合わせは今度する、だそうだ、後コイツはバンバンこき使ってくれ」

 もう使われすぎて何もでませんよ。

「りょーかーい! ミストによろしくね! あとアルは良くやってくれてるよ!」

 ユーリ課長の優しさが沁みる、でも開発には手を抜かず今日も帰りは夜が明けていた。


 八日目

 筋肉が登場した。

「今のお前に足りないのは筋肉だ!」

 兄貴はいつも筋肉の事しか言わないじゃん!

「そんなお前にこの薬をやろう、飲むと筋肉が付きハイになり疲れが吹っ飛ぶぞ!」

 小さな錠剤をくれる。

「ヤバイ薬じゃないんですか?」

「ヤバくない! 軍部の支給品だ! 戦場で戦線離脱してもこの薬を飲めば戦線復帰できるらしいぞ、使った事はないが」

 使った事ないんかい! 微妙な所だがありがたく受け取ろう。

「早く開発を終わらせて風呂に来い! いつもの面子が揃わんとしっくりせん!」

 兄貴から激励の言葉をもらった、ありがたい。

 今日は早く帰れた、だってまだ日が昇ってないもん。


 九日目

 今日は誰も来ない、それでいい。

 黙々と試作品を作る、だいぶ絞り込めて来た気がする、僅かだが終わりが見えて来た。

 気付けば夜が明け始めている、時間感覚がおかしい。


 十日目

 体と頭が限界を迎えてる、兄貴から貰った薬を飲む。

 頭が冴え体が動く、そして笑いが漏れる。

「ハッハッハー!」

 やっぱヤバイ薬なのでは?

 もう試作品も数台まで絞り込まれ本格的に終わりが見えて来た時、扉からケビンが顔を覗かせる。

「あっあのさ、あの後考えたんだけど……」

 すかさず近くに置いてあった冷却棒改のボタンを押し扉のケビンを狙う。

「うえっ? 攻撃魔法? えっ? なんで?」

 冷気は扉に当たった、ちっ!外したか!

「お前は開発が終わるまで入室禁止! それ以上何かを言えばこの棒が火を吹くぜ!」

 吹くのは冷気だけどね。

「わっわかったよ、アルまたね」

 ふぅ、最悪の事態は免れた。

「あのエルフ君の意見、聞きたかったなー」

 もうやめて! せっかく見えた終了への道を閉ざさないで!


 十一日目

 ついに小型冷風機と大型冷風機が出来上がった。

 後は最終調整と細かい仕様を設計図に書き込めば終わりなはずだ、そしてもう明け方である。

「ここまで来たらもう最後まで仕上げちゃう?」

 ユーリ課長が目をキラキラさせながら言ってきた、

断りづらい、このちっこい体にどんだけ体力があるんだ?


 十二日目

 結局そのまま作業を続けて今できる全ての事が終わった時

「おはようございます、って姉さんアル君徹夜したの?」

 ジャン係長が朝の作業場に入ってきた、その後少ししたら気絶したらしい。

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