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06.鬼の副塔長

 白の塔の塔内規則はたくさんある、喧嘩はダメとか塔の不利益になる事はしないなど当たり前の事から、塔六階以上は立ち入り禁止や他の種族を見下さないや自国に有利になるような輸出は禁止などもある。

 その他にも、塔内恋愛は自由であるが男性寮への女性の立ち入り禁止、女性寮への男性も立ち入り禁止だ。

 更衣室や大浴場も同様で罰則は厳し目にしてある、これは男女間のトラブルを軽減する為の処置に思われる。


「だって、あんな時間に人がいると思わないじゃん!」

 子供課長が更衣室に向かったのは朝である、確かに普段なら殆ど人のいない時間帯だか今日に限って軍部が朝練をしていて訓練後に風呂に入りに来ていたのだ。

 そんな中着替える男性に脇目も降らず一直線に魔道具に向かう子供のような女性、そりゃあ捕まるわ。


「何で僕に声を掛けないんだ、言ってくれれば持って来たのに、どうして更衣室に飛び込んじゃうんだよ!」

「面白そうな魔道具ってどんな物か気になるじゃん!」

 ギャーギャーと姉弟喧嘩が始まった。


 これって自分いらないんじゃ? 魔道具作っただけだし後は子供課長の問題であり擁護しようもない、困り顔の警備員に聞いてみる。

「この後あの人どうなるんでしょうか?」

「規則では罰金もしくは解雇になるのですが、さすがに厳しすぎるので今警備長が上役に相談しに行ってます」

 さすがにクビは可哀想な気もする、その時辺りの空気が張り詰める、喧嘩をしていたコロン姉弟も場の雰囲気に飲まれて口をとざす。

「アアッ? どんな揉め事だ?」

 新たに現れた女の人が場を支配した。


 スラリとした長い手足にはプロテクターを付け格闘家の様な格好をしている、ショートの黒髪からは一本の白い角が覗いていた。

 見た目は綺麗な女の人だが纏っている空気が重い、連れて来た警備長が事の顛末を説明している。

「んだよ! くだらねぇ、そこのちっこいピンク、お前、号持ちじゃなかったか?」

 子供課長を指指す

「前に塔長から……百六号と言われた事があります」

 課長が答えると

「じゃあ塔にとって有用って事だ、お咎めなしだ」

「しかし、規則では……」

 警備長が話しかけた瞬間、吹っ飛んで後ろの壁に叩きつけられた、女は殴り終えた姿勢をしていたが、殴るモーションも殴る瞬間も見えなかった。

「俺がお咎めなしって言ってんだ! なんか文句あんのか? あぁ?」

 残された警備員が高速で首を横に振る。

「なーんか面白い面倒事かと思って来たのになぁ、俺は戻るぞ」

 嵐の様な女が去っていった。

 残されたのは無罪放免となった子供課長と白目を剥いて鼻血を流している警備長だ、可哀想に。



 道具三課作業室

 あの後更衣室の魔道具は回収し気絶した警備長は警備員に任せ道具三課の作業室にやって来た。

「姉さん無茶しないでよ」

 ため息をつきながらジャン係長が呟く。

「ごめんごめん、まさか副塔長が出てくるとは思わなかったよ、お陰でお咎めなしで済んだね」

 あのやばい女の人は副塔長だったのか。

「ジャンと一緒に来たって事は君がこの魔道具を作ったアル?」

「道具四課のアルフレッドです、アルと呼んで下さい」

 家名まで名乗ると面倒くさい事になるのでこれからはアルフレッドだけにしよう。

 魔道具を作ったとは言っても作ったのは風の出る板だけで後は棒と組み合わせただけなんだよね。

「僕だって時間があればこのぐらい思いついたはずさ、冷却棒を開発したのは僕だしね、ただ風魔法を外付けにする発想がなかっただけだよ、魔石は少ない方がスマートだから、そうだ冷却棒改もあるんだよ、ちょっと待ってて、今持って来るから」

 そう捲し立てると作業場の奥に走って行く。


「姉さんは魔道具開発に一家言あるんだよ、プライドも高いからこの組み合わせが思いつかなかった事が悔しいんだろうね」

 そう言って板に魔力を流し棒に風を送る。

「それにしてもこの風魔力付与ヘッタクソだなー」

 最初にしては上手いって言って貰えたんですよ! それでも。


「これが冷却棒改さ! 魔石に魔力を流してっと……どうよ!」

 ドヤ顔で披露するが、見た目は既存の棒とあまり変わらない。

「姉さんコレ廃番にするって……」

「確かにこっちの方が冷気が多く出てますね、あっ、なんかボタンありますね」

「あっ! ダメだよ!」

 係長の制止の声が掛かる前にボタンに触れると

 ビョウ! と目の前を冷気の固まりが通り過ぎた。

「氷の魔剣を参考にして一気に冷やす方法を考えたの、どう? 凄いでしょ!」

 凍った前髪がパラパラと床に落ちる、冷気の当たった木の壁は白く凍りついている。

「一気に冷やすと言うか直撃したら怪我するんじゃないですか?」

「姉さん安全性に問題があるから作るのはやめたはずだよね?」

 二人に白い目で見られたユーリ課長は

「わかった、次は炎熱棒改を持って来るね」

「「それはダメ!!」」

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