05.新商品
「アル、これ商品になるんじゃないか?」
簡易クーラーを前にカイトが提案する。
「板に魔石は付けるし、あっ棒の形や板の形も工夫すればもっと良い物が出来るかも」
ケビンも意見を出してくる。
ただ思いつきで作った物だ、売り物にするにはどのような仕組みが効率がよい? 原価は? 売値? デザイン? それらを企画書にして……面倒くさいな、よし! なかった事にしよう。
「じゃあみんな棒と板を元の場所に戻して帰ろう」
「何言ってんだ! 売れるってコレ、これから暑くなるんだし道具四課の商品にすりゃいいじゃねえか!」
「そうだよ、もったいないよ、棒を暖かい物にすれば寒い時期にも使える物が出来るよ」
ケビンの奴クーラーからエアコンにクラスチェンジしやがった。
「ほう? 面白い物があるのう」
長湯をしていた親方が出てきた。
「親方からも言ってやって下さい、コレ商品になるって、アイツ絶対めんどくせぇって思ってるだけですから」
ギクリ、ソンナコトナイヨー。
「この棒をもっとこう……格子状とかにすればもっと効率よく寒風や温風を出せるはずだよ」
ケビンもうお前が企画しろ。
板に魔力を流して親方にも体験してもらう、腕を組んで冷風を浴びながらじっと考え込んでいる。
「儂らの鍛冶場はとても暑い、倒れる者も出るほどじゃ、少し位の冷気じゃあ鍛冶場の温度は下がらんが休憩場所にコレがあったら皆、喜んでくれるんじゃあなかろうか」
現場の声は重い、面倒くさいとか言いづらい。
「だが、道具四課の新人が一から企画したんじゃあ時間がかかる、そこでじゃ、この件、儂に預けてみんか?」
誰かに任せられるならそれに越した事はない。
「親方お願いします!」
「悪い様にはせん、改良や申請なんかは得意な奴らに任せればええ、儂にはそういったツテがあるだけじゃ、話はここまで、儂は飲みに行くぞ」
「ありがとうございます、お願いします」
親方はさっさと服を着て飲みに行った。
翌日、朝礼も終わり作業の準備をしていると
「失礼します、ミスト課長代理、アルと言う名の新人はいるかい?」
子供ほどの背丈の人が四課を訪ねてきた、道具三課でたまに見かける人だ。
「君が三課から出てくるなんて珍しいな、アル君ならそこにいるぞ」
小さな青年が近づいてくる。
「君がアル君かい? あぁよく荷物を運んでくれてる子だね、いつもありがとう、僕は道具三課係長コロン・ジャンだ」
こちらも立ち上がり挨拶を返す。
「道具四課アルフレッド・オルタニアです、アルと呼んで下さい」
明るめの茶髪に碧い瞳が見上げてくる、背丈は子供だが顔立ちは青年である。
「アルフレッドでアル君ね道四の新人アルとしか聞いてなかったから心配だったんだ、小人族に会うのは初めてかい? こう見えても君の何倍も生きているはずさ、あっオルタニアって事は王国の関係者かな? 僕の氏族は王国領に住んでいるんだ、いやー懐かしい僕も姉さんも一時期そこに住んでたんだよ西側の湖に近い所さ、それでこの塔に来る時にね……それで……その時……」
「おいジャン、悪い癖が出てるぞ」
課長代理が話を遮った。
ビックリだ、永遠とマシンガントークが終わらないかと思った。
「ああすまない、話出すと止まらなくなるんだ、それで君に会いに来た理由は風呂に置いてある魔道具の事なんだ」
おお! 親方仕事が早い、簡易クーラーを作ったのは昨日なのにもう話がついてるのか。
「さっそくだが警備の詰所に一緒に来てくれるかな?」
ええー! 何かダメだったの?
ジャン係長に連れられ警備詰所に向かう、何が良くなかったのだろう? ちょっと棒と板を魔改造しただけだよ。
詰所近づくと何やら騒がしく言い争っている声が聞こえる。
「だーかーらー! 魔道具を見たかっただけなんだよ、男の人の裸なんかはどうでもいいの!」
「そう言われましても、規則は規則なので……」
「それに見られたって減るもんじゃないじゃん!」
「いや、男性の更衣室に女性が入るのが問題であって……」
詰所ではピンク髪のポニーテールの子供がマッチョな警備員に吠えている、マッチョだが兄貴ではない。
「もう! 話にならない! あっジャン遅いよー!」
どうやら道具三課の関係者らしい、子供ではなくジャン係長と同じ小人族かな?
「恥ずかしながらあの人が僕の姉さんであり道具三課課長のコロン・ユーリです」
子供課長、威厳も何もない。
ジャン係長の考察。
事の発端は一枚のメモ紙だ。
朝、道具三課にメモが届いた、メモを読んだ姉さんが勢いよく飛び出して行く、不審に思った僕は残されたメモを読むと道具四課の新人アルが面白い物を作った、風呂の更衣室にある魔道具を三課で商品化して四課の手柄にして欲しい、などの事が書いてあった、姉さんの性格からして製作者に会うよりも現物を見に行くだろうと予想し大浴場に向かうと警備員に連行される姉さんを発見、これは面倒な事になった、製作者も交えて弁明しなければならない。




