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09.有能な営業マン

 カイトの言葉によって皆が黙る、湯の流れる音とセイリューさんのブツブツ声だけが聞こえる、そんな中、親方が口を開く。

「秘密にしておる訳では無いが、あまり皆の前で言う物では無いのぉカイトよ」

「はい……すいません」

 親方がカイトを嗜める。

 聞いていたとしても自分にどうにか出来た訳ではない、結果的にユーリ課長と造った冷風機が四課存続に繋がっただけだ。

「お前さんとこのミストとユーリそれにジャンは同期なんじゃよ、ユーリはあの性格じゃからよく問題を起こしてのお、儂がよく面倒見とったんじゃ、あやつは開発に関しては天才的じゃから同期の助けになると思うて話を持って行ったわけじゃ」

 ユーリ課長とジャン係長が四課に良くしてくれるのは課長代理の為な訳か。

「アル、悪かったな」

 カイトが謝ってくる。

「別に気にしてないよ、知ってた所で何が出来た訳じゃないし、それにこれからは冷風機が四課の主力商品になるんだろ」

 今のところ四課は冷風機作りがあるから問題はないはずだ。

「営業部に持って行って十日ほどか、そろそろ来る頃かのぉ」

 親方が何か言っている、この時はまだ分かっていなかった。



 翌日

「課長、コレ風出ないんですけど……」

「あぁここの魔道回路が途切れてるな、引き直せば大丈夫なはずだ、あと代理をつけろ」

 今日も手探り状態ながらまったりと作業をしている道具四課。

「この梱包済み商品は第二倉庫に運びますね」

 相変わらず力仕事や荷運びは数少ない男の仕事だ、でも大丈夫、今日は台車があるからゴロゴロ押して行けばいいだけ、楽ちんさ!

「私も行こう、私が台車を使うから君はこっちを持ってくれ」

 そりゃないよ課長代理!


 倉庫に向かう途中、課長代理が台車から手を離しこちらを向く

「キチンとお礼を言えていなかったからな、魔道具開発お疲れ様、そしてありがとう」

 課長代理が頭を下げる。

「いえいえ、開発は大変でしたがユーリ課長も頑張ってくれたので何とかなりました」

「今回の件、君とユーリ、ジャンには感謝しかないな」

 そう言うと再び台車を押し始める。

 それから倉庫までの行き帰りの間、道具四課について語ってくれた。

 道具四課は一年で結果を出さないと解散すること、最初の半年ほどは忙しい雑用の中皆で会議をしたり新しい物を作ろうとしたが結果が出なかったこと、その頃にはもう諦めて解散を待つしか出来ない状況だったこと、道具四課がなくなったら課長代理は塔を辞めるつもりだったことなどだ。

 自分が四課に来た時はもう半年は過ぎてたみたいで冷風機開発出来たのはギリギリだった様だ。

「確定ではないが冷風機作りの仕事があるから道具四課は継続するだろう、アル君とユーリ達のおかげだ」

 当面の間は道具四課が無くなることはなさそうだ。


 四課に戻ると何やら騒がしい。

「なるべく早く持って行きたいんだ、それぐらいの在庫はあるだろ?」

「在庫はありますが今課長が戻って来ますから少々お待ちくださ……あっ課長! 営業部の方がお見えです」

 アンナさんが対応してるのは営業部の人らしい。


「課長さんですか? 私営業部、法国担当主任のサイゼです、早速ですが冷風機を至急二百台ほど融通して頂きたい」

 線の細い金髪の男が課長代理に話しかける。

「道具四課課長代理のミストです」

 キッとアンナさんの方を見る、代理を付けろ、と心の声が聞こえる。

「詳しい話しはあちらで聞きましょう、どうぞ」

 道具四課に応接室なんて気の利いた部屋なんかないから部屋の隅にあるテーブルに案内している。


「アンナさん、営業の人にお茶とか入れた方がいいですか? 二課ではどうしてました?」

「営業の人が直接道具課に来る事ってないからわからないよ、そう言えばあの人さっき私には百台って言ってたのに課長には二百台って言ったよ、なんで?」

「そう言う営業戦略なんじゃないですかねぇ、最初に無茶な事を言って徐々に譲歩するみたいな? 課長代理が四課の責任者だから吹っ掛けたとか? なんにせよ自分はお茶を入れてきます」

「なるほど〜営業戦略ね、後輩君、営業戦略でお茶っ葉は半分にしよう、茶葉も安くないから」

 せこい営業戦略だな。


 営業部の人に薄いお茶を出した後、新たな来客者が現れた。

「失礼するぞ、俺は営業部、連合国担当主任のガストだ、責任者はどこだ?」

 今度の営業は赤い髪をした軍人の様な男だ。

「課長は今、他の営業部の方と話してますので少々お待ち下さい」

 アンナさんが対応している、こう言う時に限って係長も主任もいない、まぁガッカリ長はいなくていいか、ややこしくなりそうだし、あと代理をつけないといい加減課長代理に怒られますよ。


 白の塔のある自由都市サロニアは三国の中心にある、と言う事は……。

「失礼します、ワタクシ営業部、王国担当主任のロイヤルと申します、今回王国でとても良い商談がまとまりましたわ、責任者の方はいらっしゃる?」

 次の営業は金髪を縦ロールにした貴族風の女性だ。


 営業の人達が皆冷風機を売り込んでくれたのだ、これが親方の言っていた事か、塔の営業は優秀な様だ。

 ありがたいけど道具四課のキャパオーバーだよ。

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