57.支援者
「アル兄、もう白の塔戻っちゃうの?」
「もうって言うか、やっと帰れるよ」
「帰るって、こっちが家族のいる城でしょ」
帝国との交渉後はクラン課長と共に帝国と王国を何度も行き来し、さらに交渉、商談、謁見など忙し過ぎる日々を過ごしていた。
落ち着いた頃には年も明け、開発部の立ち上げの日も過ぎてしまった。
副塔長たちは国の騒動を収めてこい、と言っていたのでここまで長引いてしまっても席が無い、なんて事にはならないはずだ。
今はアリスとのんびりとお茶をしてるが明日には塔に帰るつもりでいる。
「じゃあさ、送別会にお茶会をしようよ、丁度エル兄もガイ兄も城にいるの」
「わかった、久しぶりのアリスのティーパーティだね」
兄上たちにも挨拶出来て都合が良いな。
「皆の者、よくぞ集まった……」
「お父様、そう言うのはいいです、今日は私が主催ですから」
「……はい」
お茶会には陛下である父上、イグニス兄さん、ガイ兄にエルナーク兄さん、自分とアリスの六人だ、全員揃ったアリスのティーパーティは久しぶりだね。
「みんな集まってくれてありがとう、アル兄がまた白の塔に行っちゃうから今日は送別会なの、じゃあお茶会を始めましょ」
このお茶会は執事もメイドもいないので自分とアリスでお茶を淹れていく、皆でお茶をしながら談笑していたのだが父上が面倒な話題を持ち出した。
「今回の件でガイストンの派閥が勢いづいての、ガイストンを次代の王に推す動きがあるのだ」
「父上、俺は王になる気はないぜ、イグニス兄上こそ王に相応しい人だ」
「そうなんだが、イグニスの内政やエルナークの外交は皆の目には入りづらいからな、内乱を収め帝国との国交を繋いだお前は目立つんだ」
「帝国との交渉はアルの手柄だろ?」
「オーステッドの奴が全てガイストンのおかげだと吹聴しているのだ、アルは今まで表に出てないし後ろ盾の貴族もいないから、いない事になってるな」
あの声も体もデカい軍務大臣か、別にガイ兄の手柄でも構わないよ。
「オーステッド卿も面倒な事をしてくれる、何とか帝国の方だけでもアルの手柄に出来ないのか?」
「アルにも貴族が付けば帝国の件はアルの手柄に出来るだろう、だから中立を貫いていた公爵にお願いしたら快く引き受けてくれた、お前は戻る前にマルカス公爵に会ってこい」
貴族の後ろ盾なんかいらないよ、でも受けない事にはさらに面倒な事になりそうだ。
しかも現マルカス公爵は経理にいたマルカス係長の息子でミレーネさんの父親でしょ、まぁマルカス領は塔への帰り道にあるから寄ってから行きますか。
「やあ君がアルフレッド殿下か、ミレーネから聞いてるよ、私はスコット・マルカスだよろしく」
なんか想像してたのと違って軽い感じの人だな。
「アルフレッド・オルタニアです、今回はご支援頂くようで挨拶に伺いました」
「うーん、硬い、硬いよ、殿下、ミレーネから聞いてると言っただろ、もっと素の君でいいんだよ、権力を持ちたくないんだろ? そのために僕が手を挙げたんだから」
この人はどこまで考えてる? もしも自分が王になった時に権力を持ちたいから自分の後ろ盾になるのではないのか?
「僕も君と同じで権力には興味がないんだ、父上から受け継いだマルカス領さえあればいいんだよ、今下手に第二王子が台頭すると国が割れてしまうかもしれないから、力を分散させるためにも君に肩入れするわけだ、疑問は解けたかい?」
「なるほど、わかりました、じゃあ帝国との国交を繋げたのは自分の事だとマルカス公爵から公表して下さい、それでガイストン兄上の功績が半分くらい自分の物になるはずです」
本当は功績なんていらないんだけど。
「オーケー、オーケー、話が早くて助かるよ、公表するにあたって帝国と交渉した事を詳しく教えてくれるかな」
この後はマルカス公爵と話し合い正式に後ろ盾になり、自分を支援する事となった。
「じゃあ、そう言うわけで殿下はウチの娘と婚約してくれるかな?」
「なんでですか!?」
「だって中立を保っていた僕がいきなり殿下の後ろ盾になるのは不自然だろ? 娘と婚約してくれれば皆、納得するだろうし、それにあの娘はまだ外で働く事を諦めていないんだ」
「ミレーネさんは納得してるんですか?」
「もちろんだ、寧ろミレーネから言い出した事だ、これでまた塔で働けるってな、前に殿下とミレーネは恋人のフリをしたこともあるんだろ? 似た様なものさ」
恋人のフリと婚約ではだいぶ違う気がするが……。
「これで王国は安定するし殿下は功績を上げ綺麗な婚約者を手に入れたわけだ、いいこと尽くめじゃないか」
他に選択肢もないしそれでいくしかないか。
「いずれは解消しますがそれでお願いします」
「オーケー、オーケー、婚約の手続きなんかはこちらでやっておくから殿下はミレーネと白の塔に向かってもらって構わないよ、なんならミレーネもそのままもらってもいいんだよ」
「そんな娘をお土産みたいに言わないで下さい」
こうして問題を抱えたまま塔に帰る事になった。
「お父様はそんな事を言ってたの?」
「軽い冗談じゃないですか?」
随分と長く話してしまった、結局王国に着いてから妹を救出し内乱が収まった事、クラン課長が帝国の皇子で帝国との国交を繋げた事、そしてミレーネさんと婚約にいたるまでの全てを話した。
別に悩んでいた訳ではないがスッキリした、たまに全てをぶちまけるのも大事だね。
「なるほどなぁ、俺が化粧品を売ってる時に妹を救ってたのか、それと道具一課の課長が帝国の皇子なんだな」
クラン課長ごめんなさい、自分と一緒で隠してた訳じゃないから許してくれるよね。
「アルは偉いね、自国のために働いて……」
ルイさんそんな大層な事じゃないですよ、流されるがままなんです。
「アルが王子で、王子と皇子で、王子と公爵令嬢が婚約して……」
「おい、ギージャム? 大丈夫か?」
「だ、大丈夫よ、ちょっと情報が多くて混乱してるだけ」
「なぁミレーネさん、この後時間はあるかい?」
「ん? 大丈夫よ」
「じゃあちょっと女子会をしようか、まだお互いの事を良く知らないからな」
「えぇいいわよ、でも女子会って事は……」
「アルは帰っていいぞ、おつかれさん!」
「えっ? まぁいいですけど、言いたい事は言えましたし」
女性同士で話しをした方が上手くまとまるのかな?
それでも帰れと言われるのは悲しい。




