55.課長補佐のお仕事
やっと戻って来やがった、ちびっ子を当てにしてたら開発部二課はなくなっちまう。
「えーっと、皆さんは特に何もしてないみたいですけど休憩中ですか?」
いきなり痛い所を突いてきた。
「アル久しぶり、それと遅い」
「ルイさんお久しぶりです、いきなりなんですが今の開発部二課の状況を教えて下さい、なんかユーリ課長は忙しそうだから」
ちびっ子の方に目をやるとまた鱗を並べていた、アイツ懲りねぇな。
「なるほど、わかりました、とりあえず皆さん集まって下さい」
皆がアルの前に集まるがちびっ子はまだ鱗と戯れている、アルが無言で近づいてカタリナと同じく鱗を倒すとパタパタと全てが倒れていく。
「あーっ! 何をするん……ってアル?」
「ユーリ課長、お久しぶりです、まずこっちに来て下さい、説教はそれからです」
「久しぶりー、って説教?」
「そうです、それにしても立ち上げから三週間でここまでひどい状況になるとは……」
「みなさんお疲れ様です、初めましての方やお久しぶりの方もいますね、自分はアルフレッドです、アルと呼んでください、一応この課の課長補佐になります。
それでですね、どうして予算がもうないんですか? おかしいですよね? 誰か説明出来ますか?」
皆黙っている、好き勝手にしてきた自覚があるのだ、アルが穏やかにキレている。
「じゃあこちらから聞きましょう、まずカイト、どんな物を開発しようとしてる?」
「なんで俺からなんだよ?!」
「お前が一番聞きやすいからだ」
「そうかよ、いいぜ、俺はもっと威力のある魔剣を作りたいんだ、そのための魔石を手に入れたんだが耐えられる剣がないんだ、ミスリル以上の剣が手に入れば何とかなりそうなんだ」
「それでその魔石はいくらしたんだ?」
「あー金貨二枚くらい……だったかな?」
「経理に問い合わせるから嘘をついても無駄だ、もう一度聞くぞ、いくらした?」
「…………金貨五枚」
「それにミスリル以上の素材が欲しいと、わかりました、では次の人」
こうしてアルは次々と方針と購入した物を白状させていった、もちろん俺やルイも。
「……わかりました、では最後にユーリ課長、貴女は開発よりも二課を管理する立場ですよ」
「だって面白そうな素材があったら欲しくなるじゃん!」
気持ちはわかる、俺も欲しい素材を片っ端から申請したからな。
「それで何を購入したんですか?」
ちびっ子はさっきまで遊んでいた鱗を取ってきた。
「これだよ! これ! ワイバーンやリザードマンそれに龍の鱗も混じってるんだって」
「それで、いくらしたんですか?」
「五十個で金貨三十枚、安いでしょ?」
「わかりました」
金貨三十枚は安くない、それにさっきからアルの、わかりました、が恐ろしい。
「さてみなさん、開発費は無限にある訳じゃありません、現に予算がもうないんですよね? みなさんの開発している物で目処が立ちそうなのに絞って進めてみます、まずは一つづつ完成させてみましょう、あとどうするかは少し考えてみます」
なんかアルが上手いことまとめたが、なんか、もっと簡単に利益の出る物を作って解決するのかと思ってたぜ。
「コレは薬草かなー?」
「違う、ただの雑草だ」
「スバル、探してるのじゃないけど、水月草があったから詰んどいた」
「いいぞ、素材としても使えるし売ることも出来るな」
「スバルちん、スバルちん、このキノコは?」
「あぁ、それはカマラ茸だな、素材にならないし毒があるから捨てとけ」
「はーい」
ちびっ子課長と俺とルイ、それにウサギの獣人のフェルで素材収集のため森に来ている。
アルが「皆さんやる事がないなら申請するだけじゃなく自分で素材を取ってきましょう」とか言い出したからだ。
ちびっ子とフェルは役に立たず、俺とルイが採取を続けている。
「あっ、あった、ガレの花」
ルイが目当ての花を見つけた。
「やったー、ルイちんありがとう、これで研究を進められるよ」
フェルの開発しようとしてる避妊薬が一番完成に近かった、まずこれを仕上げて少しずつ実績を積んでいく、これがアルの考えみたいだ。
採取も済んだ帰りの馬車の中、
「フェル、既存の薬じゃあダメなの?」
ルイが質問していた。
「アレは人族用だから獣人の種族によって効きが弱かったり強かったりするの、獣人は発情期があるし、多頭妊娠すれば体に負担がかかるからね、全種族に安全に使える薬にしたいんだ」
「そんなんだ、上手く出来る様、私達も手伝うから」
「ルイちんありがとうー、この花でだいぶ完成に近づくと思うの」
フェルは先程採取した花を大事そうに握りしめていた、へー、フェルは獣人女性の事を考えてんだな。
「どんどん完成させて早く僕の開発も進めたいな!」
自分の事しか考えていないちびっ子の研究はたぶん最後になるな。
採取から数日でフェルの薬は完成した、俺たちも手伝ったがほぼ出来上がっていたしな、仕様書も書けたし後は薬品二課に生産を依頼して営業部に売ってもらうのだが……薬品二課と言えば。
「おい、ルイ、ギージャムにアルが戻って来た事を伝えたか?」
「……忘れてた」
「丁度いいや、おーいフェル、薬品二課には俺たちが行ってくるわ」
「りょーかーい」
依頼ついでにアルの事も報告してやろう。
薬品二課の製薬場はいろんな匂いが混じった香りがした、ギージャムは奥で作業をしている様だ。
他の塔員に許可をもらって奥へと進む。
「ギージャムおつかれさん」
作業に没頭しているギージャムの肩を掴んで話しかけた。
「わっ! あぁスバルにルイじゃない、ビックリさせないでよ、それでどうしたの? もしかして女子会のお誘い? いつ? 今日でもいいわよ!」
誘ってやらなきゃ可哀想になるな。
「お誘いじゃなく依頼だこの薬を製造して欲しいんだ」
仕様書を渡す。
「えっ? そうなの、そっか……んー、避妊薬みたいね、……ほー、なるほど、あぁ良いじゃない……これを混ぜるの? ほぅほぅ大体わかったわ」
ギージャムは仕様書を見ただけで理解したようだ。
「アンタたちが持って来たって事は開発部が開発した物なのね?」
「そうだ、俺らじゃなく別な奴だけどな、薬品二課に量産をお願いしにきたんだ」
「了解したわ、この薬は薬品二課が責任持って量産するわ」
「あぁ頼む、それとアルが戻って来てるぞ」
ギージャムはバサリと仕様書を落とした。
「ギーに伝えるの忘れてた、ゴメン」
「べ、別にい、いいわよ、アンタたちこれから開発部に戻るのよね? アタシも行くわ、その……そう! 仕様書について聞きたいのよ」
わかりやすい奴だ、アルを前にするとどんな反応をするのか見ものだな。
三人で開発部に向かうと扉の前でアルと黒髪の女が話していた。
「ア、ア、ア、ア、ア……」
何かギージャムから変な声が漏れている、アルたちもこちらに気づいた様だ。
「あぁスバルさんにルイさんお疲れ様です、それにギーさんお久しぶりです」
「お疲れさん、薬は薬品二課に頼んだぜ、あとギージャムがお前に話があるってよ」
「自分も話と言うか謝りたい事があるので丁度良かったです」
さぁギージャム、お膳立てはしてやったぞ。
「アル……その人は誰?」
ルイがアルの隣にいる女の事を聞いた。
「この人は……」
「私はアルフレッドの婚約者のミレーネよ、よろしくね」
予想外の答えが返って来やがった。
「こっ、こっ、こっ、こっ、こっ……」
ギージャムが鶏みたいになってやがる。
「まぁ……ギージャム、ご愁傷様」
「ギー…………負けるな」
「うっ、うるさい!」




