54.女子会
目の前テーブルには色とりどりのケーキが並び、それと香りの良い紅茶も置かれている。
三番街にあるカフェ・グランシェル、ここは個室もあり夜遅くまでやっているカフェだ。
塔の食堂で話をしようとしたが業務中にゆっくり話しをする訳にもいかないので、仕事終わりにカフェで待ち合わせる事にしたのだ。
個室には三人しかいないのにテーブル上のケーキは十五個、頼みすぎだろ。
紅茶で乾杯をする訳じゃないがまずは挨拶か。
「今日は集まってくれてありがとう、改めて俺は元薬品三課のスバルだ」
「あたしは薬品二課課長のギージャムよ、ギーでもギージャムでも好きなように呼んで」
「私は元道具四課のルイ……で、これは何の集まりなの?」
「ギージャムがアルに会いたがっていたし、俺も少し仕事の関わりがあったんだ、アイツはいつ戻ってくるのかとか、どう言う人物なのか聞いてみたくてな」
「そう……いつ戻ってくるかは私は直接聞いてないけどもうすぐ戻るらしい、一課のエルね……エル課長から少し聞いた」
「そうか、アイツの立場上もう戻って来ないのかと思ったぜ」
「あたしは会いたいとかじゃないの! ちょっと話がしたいだけよ、それでアルの立場って?」
「ルイはアルの身分を知ってるかい?」
「知ってる、でもアルはその事を言わなかった、私も他の人から聞いて知った」
「じゃあ俺たちの口から言う訳にはいかないな」
「えっ? なんなの? 気になるじゃない!」
「まっその辺も含めて本人に会ったときに聞いてみろよ」
その後はルイから道具四課でのアルの仕事ぶりや会議でアルが暗躍していたらしい事、俺はアルが王子と言う事をぼかしながら王国で化粧品販売の依頼を受けた事、そしてギージャムがアルに助けてもらって猫好きな事、他は他愛のない話で盛り上がった。
気付けばテーブルのケーキは全てなくなり、時間もかなり経っていた。
「あたしこうやって友達? じゃないかもしれないけど皆でスイーツとか食べるとか初めてなの、すごく楽しいかも」
「ギージャム、それはボッチだった事を告白してる様なもんだぞ、なんか可哀想になるな」
「ギー……不憫な子……」
「ちょっと! 二人ともそんな事言わないでよ!」
「まぁ機会があればまた女子会をしようか、俺も面白かったしな」
「スバルよろしく、私も楽しかった」
こうして定期的に女子会を開催する事が決まった。
「ギージャムはアルに惚れてるな」
「そうなの? 全然わからなかった」
女子会から数日が過ぎている、相変わらずやる事がないのでルイと雑談をしていた。
「しかし開発二課はこのままで大丈夫なのか?」
「たぶんダメだと思う、でも予算がないと出来る事は限られる」
そうなんだよな、やろうと思えば出来る事はいくらでもあるが一度始めた研究を途中で止めるのは気持ちが悪い、皆同じ気持ちだろうからこの状況なんだ。
ちびっ子課長の方を見れば何だかわからない鱗を均等に並べていた、ああして見ると完全に子供だな。
「あら? 開発部の皆さんは暇なのかしら?」
金髪の女が部屋に入って来た、会議で文句を言っていた道具課の女か。
「あの人は道具二課のカタリナ、他の職場にケチを付けるのが趣味の人、道具四課の時もよく嫌がらせされた」
ルイが説明してくれた。
「どこにでもいるよな、ああいう奴は」
前の薬品二課にもそういう奴はいたが会議で副塔長にぶっ飛ばされてたな、今はギージャムがまとめてるから薬品二課もいい方向に変わったみたいだな。
「で? ユーリ課長は何をしてるのかしら?」
「見てわからないの?! 今いいところだから話し掛けないで!」
ちびっ子は鱗を並べる事を続けていた、少しは体裁を繕えよ。
「ユ、ウ、リ、課長、えいっ」
カタリナが反対側から鱗を一つ倒すとパタパタと全てが倒れた。
「あーっ! 何て事するんだ!」
「よく分かりました、開発部二課は仕事もしないで遊んでいる事が、これは総務に報告させていただきます」
カタリナはそう言ってから部屋を出て行った、さすがにマズイ状況になった気がする。
「だから予算がないと開発も進まないんだって!」
「皆が必要な物を申請したら足りなくなります、そこを課長の貴女が割り振らないと……」
翌日には総務部の少女が来てちびっ子が叱られていた、傍目には子供の喧嘩にしか見えない、まぁ総務の言い分が正しい。
結局今回は厳重注意で済んだが今のままでは二課の解散もあり得る。
「道具四課の時はアルが何とかしたんだろ?」
「そう、アルが冷風機を開発して道具四課は持ち直した」
「今回もどうにかしてくんねーかな」
ルイと話をしていると、扉が開き、
「遅くなりました、開発部二課課長補佐アルです、立ち上げに間に合わなくてすいません」
何とかしてくれそうな奴が戻って来た。




