53.開発部始動
目の前には金髪で派手な化粧をしている男がいる、こんななりでも薬品三課の課長だ。
「もうそんな時期になったかしら?」
「あぁ、来週の頭から移動する、もう引き継ぎは済ませてある、世話になったなオッサン」
「寂しくなるわ、アンタに悪態をつかれないと調子が出ないのよね、次の部署が嫌になったらいつでも戻ってらっしゃい」
基本的には良い人なんだよなぁ、見た目と話し方がおかしいだけで。
「スバルさんいなくなってしまうのね」
「私たち寂しくなります」
何故か俺は薬品三課の女性陣に好まれている様だ、こんな粗暴な女のどこが良いのだろう?
「今後もヴァイスブランドの品質管理を頼むよ」
「「はい」」
今や不動の人気となったヴァイスブランドの化粧品、立ち上げ時から携わっていたので今後を見守れないのが残念だ。
しかし化粧品製造の片手間でしか出来なかった開発を次の部署では主として出来るのはありがたい、それに去年会ったあの王子がどんな物を開発するのか興味深いな。
それにしてもまだ王国から戻らない様だがこのまま帰って来ないつもりかアイツは。
朝窓の外を見れば雪がチラついていた、今日から向かう場所は製造部ではなく開発部に変わっている、新たな気持ちで職場に向かう、どんな同僚が出来るのか? どんな物を作るのか? 不安と期待が混ざる中開発部の扉を開けた。
開発部はざっと見二十人ほどだった、最初にエルメスト部長が挨拶と開発部の説明をし、その後ユーリ課長が挨拶をするが、
「頑張って、面白い物を開発しよう!」
以上だった、直の上司はこの人なんだが心配だ、補佐をするべきアルはまだ戻って来ていない。
一課はその場に残り二課は隣に移動する、隣が二課の職場だ、ユーリ課長が扉を開くと端には書類用の机がいくつかあり、残りの広いスペースには作業台が並び棚には道具が並んでいた。
「おー! いいじゃない、いいじゃない」
ユーリ課長が作業台や棚をチェックし出した、まずは自己紹介なり何なりをした方がいいんじゃね?
こうしてグダグダのまま開発部二課はスタートした。
開発部二課は十人しかいない、課長は小人族で他にはエルフにドワーフ、それに獣人に人族とバラエティに富んでいる。
立ち上げから一週間経つが未だに名前も知らない奴もいる、今はそれぞれが好き勝手に自分の研究をしていた。
現在開発部一課は魔道具の改良と新しい薬の開発を目標に取り組んでいるらしい、まぁ俺も自分の事を進められるから文句はないのだが、二課はこのままで大丈夫なのか?
そんな中すぐに問題が発生した。
「ちょっとみんな集まってくれるかな?」
珍しくちびっ子課長が声を掛けてきた、皆が作業を中断して集まった。
「あのね、今期の予算がもうないんだって」
「今期って……今月?」
エルフの娘が質問した、もうすぐ月末だがそれなら今期とは言わない気がするが……嫌な予感がする。
「えーっと……あと三ヶ月くらいかな? だからこれから道具や素材の申請しても通らないみたい」
それぞれが好き勝手にやってんだ、そりゃそうもなるわな、俺の研究も素材がなければ滞ってしまうんだがどうすっかな。
次の日から明らかに皆の動きが鈍った、作業台でボーっとしてる者や机で書き物をしているがペンが動いていない奴、かくいう俺も暇を持て余している。
それはたまたまだった、開きっぱなしの扉の先に黒い影が動くのが視界に入った。
開発部に用がある人間なんてそうそういない、まだ何も成果を上げていないから、じゃあ何しに来たんだ? そうだ驚かしてやろう、暇だしな。
「オイ! 何の用だ!」
「ヒィ! すいません」
あっこの褐色の肌は薬品二課の課長じゃないか。
「いや、すまない、不審者だと思ったんだ、それで薬品二課の課長さんが開発部に何の用だい?」
「あっ、いやー課長補佐が戻って来てたりなんかしないかなーなんて……」
「なんだ、アル目当てに来たのか」
「めっ目当てとかじゃなくて、いや、その、話しをしたいなーとか思っちゃったり何だりして、あっ、いないなら帰ります、失礼しました」
「まぁ待ちなよ課長さん」
薬品二課の課長とは接点はなかったが、なんか面白そうじゃないか、どうせ素材がないと研究も進まないし、いい暇つぶしになりそうだな。
「俺もアルに興味があるんだ、ここは情報交換と行こうじゃないか」
課長と肩を組みながら話を続ける、
「ちょっと食堂にでも行って話し合おうぜ」
「あっ、その、どうしよう?」
「その人をいじめないで下さい、いい人ですから」
水色髪のエルフが話に割って入ってきた。
「別にいじめちゃいねえよ、ちょっと話しを聞こうとしただけだ、そういやアンタは元道具課だよな? アルの事知ってるか?」
「アルとは道具四課で一緒に仕事をしていた」
「丁度いいじゃないか、人族とエルフそれにダークエルフで異種族混合の女子会をしようぜ」




