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51.皇子と王子

 指揮官用の広い天幕の中、今は俺とクランしかいない、これから王国と交渉するのに護衛もつけないのはクランが望んだからだ。


「もうすぐだな、第四王子が来るのは」

「第二第三王子もいたのに何で第四王子なんだ?」

「知り合いだし、立場や求める物が近いからかな? 向こうはどう思っているか知らないが」

 クランは第四王子を知っているのか、それを利用するつもりなんだな。


 

 しばらくしてテントの外が騒がしくなったので到着した様だ。

 こちらは護衛がいないが、相手も一人で入る様要求した、一国の王子がそんな提案を呑むだろうか?

 そんな心配をよそに王子は一人で天幕に入ってきた。



 彼は俺たちを見ると驚いた表情を浮かべていた、俺も同じ表情をしているのだろう。


「やぁやぁアル君久しぶりだね、とりあえず席に着いてくれ、今飲み物を用意しよう、キーコンそこのコップとそっちにワインがあるんだ、取ってくれるか?」

「あっ……ああ」

 俺は言われるがままコップとワインを用意した、まだ頭が混乱している。

 彼はカイトの友人のアルだよな?

 


 俺とクランが横並びに座り反対側に王子が座った、テーブルの上には俺の入れたワインが置かれている。

「あの……何でクラン課長がいるんですか? ここは帝国の陣地ですよね?」

 まず向こうが口を開いた。

「そうだな、順番に行こうか、まず俺はクランベルド・ディ・カルヴァス、カルヴァス帝国の皇子だ、それにこっちが俺の護衛などをしているキーコンだ君にはキーコン係長と言った方がしっくりくるかな? 君を指名したのは王国との交渉をスムーズにするためだ」

「えっ!? クラン課長って帝国の皇子なんですか?」

「そうだ、君は王国の王子なんだろ?」

「はい、んんっ、私はオルタニア王国第四王子アルフレッド・オルタニアです、帝国との交渉をしに来ました」

 帝国の皇子と王国の王子の奇妙な会談が始まる。



「まず俺は君の事をアル君と呼ばせてもらうよ、一応公式の場だが俺たちしかいないからな、君も好きなように呼んでくれ」

「わかりました、じゃあ慣れているクラン課長とキーコンさんと呼びます、あっ、キーコンさんも皇族なんですか?」

「いや、違うぞ、帝国貴族の生まれではあるがな、それと俺は君の事をアルと呼ばせてもらうが構わないか?」

「えぇもちろん構いません」

 俺は場によって使い分ける自信がない。



 まず帝国はこれ以上戦争を続ける気はない事、そしてこれから二国をどの様な関係に持って行くかを話し合った、最終的な決定権は皇帝と国王にあるので草案をまとめるだけだ。




「この国道の整備を帝国と王国で行って二国の友好を深める、これで二国間が行き来しやすくなって国交も回復するはずだ」

「そうですね、これで話は大体まとまりましたね、これらを帝国側のクラン皇子の提案として王国に提出しますね」

「こちらも王国のアルフレッド王子との共同提案として皇帝に奏上しよう」

「あっ、自分の名前は入れなくていいです」

「ん? なぜだ? 君の成果になるぞ? これが通れば王位継承権も上がるかもしれないぞ?」

「あの、自分王になりたくないんですよ、それに優秀な兄たちもいますから」

「まさか……王子に生まれて王を目指さない人間がいるとは……いやいや新しい発見があったな、だが君の名を削ることは出来ない」

「えー優秀なクラン課長が全部考えた、でいいじゃないですか」

「帝国の皇子と王国の王子が親しい関係で友好条約を結ぶ流れだろ? 王子の名前がないのはおかしいじゃないか」

 クランとアルの間で認識のズレが生じていた。

「それはそうなんですが……そうだ! 兄上、第二か第三王子の名前にしましょう」

「アル君とは塔で一緒にいた時に親しくなった流れにするつもりだからそれは却下だ」

「だったら……」

「アル諦めろ、クランに口で勝つことは出来ないぞ」

「そんなー!」



 そしてこれから文書作りだ、二人の会話内容を走り書きした物を要約して書かなければならない、書いた俺が言うのも何だが字が汚過ぎて読めない部分もある、これを清書するのはなかなかに骨が折れる。


 三人で書き物を始めてすぐ外が騒がしくなる、今日は他に訪問者はいないはずだ。

 

「クランベルド様! キーコン様! 緊急事態です!入ってもよろしいでしょうか?!」


 兵士を天幕に招き入れすぐに報告をさせる。

「ブラド皇子が脱走し、暴れ出して手がつけられません!」

 あの小太り髭皇子か、簀巻きにしておいたのによく逃げ出せたな。

「皇子と言えども罪人だ、少々手荒に扱っても問題はないぞ」

「いえ、物理的に止められないと言うか……我々はアレが本当に皇子なのか判断出来ないのです」

 どう言う事だ? 俺は剣を装備し一応魔剣も腰に差す、あと一回使えるはず。

「クランとアルはここで待っていてくれ! 俺が様子を見てくる」

 そして天幕を飛び出した。

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