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49.次期部長と係長

「…………コン………おい………コン……キーコン……街に着くぞ」

「……小兄……?」

「何だ寝ぼけてるのか? もうすぐ街に着くぞ」

「あぁ悪い、んー」

 馬車の中で座ったまま寝ていたらしい、固まった身体を伸びをしてほぐす。

「懐かしいな、お前に小兄と呼ばれるのはいつ以来だ?」

 前は小兄やら兄上と呼んでいる時もあったが今は呼び方も変わった。

「もう十年以上は経つな、お前は長いこと俺の事をコンと呼んでいたな」

「ずっとそう呼んでたからな、だがそのデカい図体はコンって感じがしないから途中で変えたんだよ、キーコン係長」

「そっちも小兄では威厳もないからな、ク(・)ラ(・)ン(・)次期部長殿、それともクランベルド・ディ・カルヴァス皇子殿下とお呼びしましょうか?」

「よせよせ、塔でその名を呼ばれたら副塔長に殴られそうだ」



 

 ここはオルタニア王国北側にある街だ、これより先は村や集落しかない、その先にカルヴァス帝国との国境がある。

「それよりも考えは変わらないのか? 冒険者や傭兵を雇うならこの街が最後の機会だぞ」

 今は二人で行動しているがこれから戦闘を仕掛けるのにクランは人を増やさない考えだ。

「雇わなくても大丈夫だろう、帝国の兵の運用法は時代遅れだ、ならば俺とお前とアレがあれば問題ない」

 馬車に乗せて来たのは俺たちがいつも製作している魔剣だ、作ってはいるし、テストもしているが実戦では初めて使う事になる。

「魔剣の登場で戦のやり方は激変している、帝国兵に現代の戦を見せてやろう、だから心配するな、じゃあ俺は酒場に行ってくる、王国北部は美人が多いと噂だからな」

 クランはそれだけ言うと走って行ってしまった、まだ宿も決めてないのにどこで落ち合うんだよ!



 街はそれほど大きくなかった、宿も四つしか無く値段や質的に泊まれそうな宿は一つに絞れた、ここで部屋をとっとけばクランも来るだろう。

 とりあえず二人部屋を確保してベッドに横たわる、まだ日は沈んだばかりなので寝るには早すぎるし、俺は酒が飲めないのでクランを探しに行く事も出来ない。

 クランは心配するなとは言ったが早ければ二日後には帝国兵と鉢合わせる事となる、相手の規模はわからんが本当に二人でどうにかなる事なのか?

 それに魔剣を貸し出し国境に行く許可を出す塔もどんな魂胆があるかわからない。




「いろいろ面白い話が聞けたぜ」

 クランは夜遅くに戻って来た、女性や他の人と話し、情報や情勢を聞き出したのだろう。

 クランは情報を集め、精査し扱うのが上手い、女好きなのも事実だが。

 帝国からの王国出兵を知ったのもクランの情報網に引っかかったからだ。

「まず帝国兵だが二百人ほどの部隊らしい、思ったより数は少ないな」

 こちらは二人、単純に百倍いる、少ないとか言うな。

「それに南側ではクーデター騒ぎが起こっている様だな」

「クーデター騒ぎ? 北は侵略、南はクーデター、王国も大変だな」

「だが好都合だ王国軍の大半は南に行ってしまってるからな、帝国への対処が遅れたのもそれが原因だろう、侵略問題を解決すれば王国にも恩が売れるな」

 そのためには帝国兵を二人でどうにかしなければならないのだが、そんなに上手く行くのか?




「おっ、いるいる、情報通りだな」

 街から二日かけて帝国兵の駐留する場所まで辿り着いた、今は木陰から偵察中だ。

 一応手元には火の魔剣が三本ある、剣と名は付くが魔力を通せば上級火魔法が出現する兵器だ。

「本当にやるのか?」

「当たり前だ、さぁ作戦開始と行こうか!」

 


 派手な音を立ててテントの一つが燃え上がる、兵士たちが慌てているが火を消そうにも水場は近くにない。

 続けて別なテントも燃え上がった。

 兵士たちは消化を諦め、集まり隊列を組む、攻撃の飛んで来た方向に五十人の編隊を三つ作り盾を構えて前面と左右どちらから攻撃が来ても対応出来る様にしていた、後方に残った部隊に指揮官がいるのが見え見えだ。


「やはり帝国の戦い方は古臭い、あんな風に固まったらいい的だな」

 俺たちは攻撃を仕掛けると同時に移動している、相手は前面に兵を押し出しているがもうすでに後方に回り込んでいた。

「攻撃は前後左右だけじゃないことを教えてやらなきゃな、おいキーコン、あの前の三部隊に上から攻撃してやれ」

「上に向かって撃つのか? 距離感が掴めないから上手くはいかんぞ」

「混乱させられれば別に当たらなくてもいい」

「了解だ」

 俺は上空に向かい魔剣を構え魔力を流す、落下地点を予測して三発発射した。

 一つ目の部隊の前方に落ち火柱が上がる、二つ目の部隊は後方の何人かが火に巻き込まれている、三つ目の部隊は密集したど真ん中に落ち、火に包まれた兵たちが暴れてパニックに陥っている。

「上手いじゃないか、直撃した部隊は使い物にならんだろうな」

「しかしこれで五回使った、あと四回だか間に合うのか?」

 この火の魔剣は一本につき三回しか使えない、今回持って来れた魔剣は三本だ。

「あぁ予定通りだ、ここから直撃しなかった部隊の手前に二発打ち込む、その間に我々は指揮官殿に挨拶をしに行こう」




 クランは堂々と歩きながら後方にいた部隊に近づいて行く、俺も魔剣を構えながら後に続く。

「やぁやぁ、帝国兵の諸君、指揮官殿はどちらかな?」

 帝国兵は唖然としていた、そりゃ不審者がいきなり話しかけたらこうなる。


「お前たちは何者だ! あの攻撃はお前たちの仕業か?!」

 気を取り直した兵士が怒鳴る。

「そうだ、と言ったら指揮官に会わせてくれるかな?」

「なっ?……何を言っている?!会わせるわけな……」

「余の部隊を攻撃したのはお前らか!」

「皇子に刃を向ける不届者が」

 偉そうな奴とその取り巻きが兵士の間から現れた。

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