47.交渉人
オルタニア王城に向かって馬車が走る、ガイ兄が言った通り必要最低限の護衛だけだ、一度アリスを攫われたことを思えば心許ないが緊急事態なので仕方ない。
道中、特に問題なく進むのだがうるさい人が同乗している。
「ガハハ、ガイストン殿下は流石ですぞ! この間の訓練では…………」
オーステッド卿が延々とガイ兄を褒め称えているのだ。
「なので次の王にはガイストン殿下が相応しいですな! 民も強き王を求めているはずですぞ!」
「それはどうかと思いますが? 王位継承権第一位はイグニス兄上ですよ」
ガイ兄を褒めるだけなら聞き流していたが、王に相応しいまで言ってしまうと問題だ。
「いやー、アルフレッド殿下は手厳しい、軽い冗談と思って聞いて下され」
口ではそう言うが目は笑っていない、こう言う人が一番怖いよ。
「よくぞ……よくぞ無事戻った、アリスよ」
何事もなく王城に着きお決まりの謁見の間である、しかし今日は家族だけではない、玉座に座る父上の右隣にはイグニス兄上が立ち、反対側に宰相であるキルトン公爵が立っている、跪く自分とアリスそれにオーステッド卿の左右には名前も知らない貴族達が並んでいた。
「今この場にはいないガイストン、それにアルフレッド、アリス救助に手を貸してくれた事に感謝する。
そしてオーステッド、軍を率い、アリスを救助しサマルリアを捕らえた功績、見事である」
「陛下! これらの功績はすべてガイストン殿下のお力があってこそです」
皆がいると父上も王の風格がある、それにしてもオーステッド卿はこんな場でもガイ兄を持ち上げるなぁ。
謁見自体はすぐに済み、次に帝国への対策会議が始まる、その為に貴族が集まっていたのだ。
自分やアリスは会議には参加しない、政治に関わっていないからね。
「アル兄〜、これからどうなるの?」
「わからないよ、その辺を会議で話し合っているんだし、ガイ兄とエルナーク兄さんが行ってるから何とかなるんじゃない?」
王城に戻ってから数日経っている、会議は連日続いているしエルナーク兄さんも法国の国境から帝国の国境へと向かった、そんな中、自分とアリスは王の私室で優雅にティータイム中である。
「おーアリス今日もかわいいのぉ」
ドアを開け父上が入ってきた、時折会議を抜け出しサボりに来るのだ。
「お父様、帝国との交渉はどうなりました? ガイ兄とエル兄は無事なの?」
「おうおう、戦線にでている兄達を気遣うアリスは優しいな、部屋で茶を飲んでくつろいでる兄に聞かせてやりたいのぉ、なぁアルフレッドよ」
くそー、自分が行っても何も出来ない事を知ってるくせに!
「そんなお前に朗報だ、お前も帝国との国境に行くんだ」
「えっ? 自分が? 嫌ですよ、行く訳ないじゃないですか」
「帝国がお前をご指名だ、諦めて行ってこい」
「自分を指名? それはたぶん何かの間違いですね」
「交渉はオルタニア王国第四王子アルフレッド・オルタニア本人のみとする、それ以外は認めない、だそうだ、良かったな、お前も役に立つ時が来たぞ」
「アルフレッドは国にいない事にしましょう」
「つべこべ言わずに行けって! もう連日終わらない会議をするのに疲れたの! 向こうが名指しするくらいだから何かあるんだろ! 早く行って何とかしてこい! これは王命だ!」
父上も疲れで限界が来てるらしい、行きたくないけど国境に向かうしかない様だ。
馬車に揺られる事五日、ようやく帝国との国境近くまでやって来た、この辺りは田舎で街はなく家が点々とあるだけだ、そんな中でも少し大きめの集落の集会所に帝国対策本部がある。
外には多くのテントが設置してあり兵士たちが忙しそうにしている。
集会所の中にはガイ兄とエルナーク兄さんと他数名がいた。
「おぉ、やっと来たか」
「やぁアル、お疲れ様」
正直来たくはなかったよ。
「それで自分が名指しで呼ばれているんですよね?」
「そうだ、お前じゃなきゃ交渉の場すら作る事が出来ん」
「それ本当に自分なんですか? 第四王子を人質にしようとしてるとか?」
「だったら俺たちでもいいだろ」
それもそうだ。
「護衛は付けてやるから帝国と交渉してこい」
「いや、ガイ兄、簡単に言うけど他国と交渉なんてした事ないし、何を要求すれば良いの? と言うか今どんな状況なの?」
この後エルナーク兄さんに状況説明をしてもらった。
帝国兵が王国領に侵攻。
いくつかの村を占拠。
帝国兵は約二百名ほど、しかしここで何故か帝国兵が襲撃を受けていた、王国側の防衛ではない。
帝国兵沈黙、村は占拠されたまま、なのでこちらから交渉を持ち掛ける。
交渉するのは第四王子アルフレッド以外は認めないと返事あり。
その後帝国側に動きはない。
「説明を聞いても全然わかりません、誰が帝国を襲撃したの? それに何で自分なの?」
「知らねぇよ、だから理由を聞いてこい、お互い求める物がわかんねぇと交渉しようもないだろ、あとお前は仮にも王子なんだから軽はずみな事は言うなよ」
王国には内乱鎮圧に来ただけなのに、他国との交渉なんて想定外だよ。
結局自分が行くしかないので護衛を引き連れて帝国軍のいる場所に向かう、がすぐ近くだったので心の準備をする暇もない。
護衛が第四王子を連れて来た事を告げるとすぐに天幕に案内されたが、中には第四王子一人で入って欲しいと言ってきた。
受け入れられないと護衛が言っているが自分は了承して中に入ることにした、わざわざ自分を呼び寄せたんだ、いきなり殺されたりはしない……よね? 早まったかな。
広い天幕の中には何故か見覚えのある二人がいた。




