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46.新たな問題

「ごめん、ごめん、俺だよ」

 ナイフをしまい、マントの顔の部分だけずらす。

「アル兄!」

「アリス助けに来たよ、今は時間がないんだコレを着て」

 懐にしまってあったもう一枚の姿隠しのマントをアリスに着させる。


「アル兄が何で……」

「とにかく今は見つからない様にここを出よう、お互い見えないからアリスはマント越しにコッチの裾を掴んでおいて」

 アリスは黙って頷く、ここまで来たら、後は脱出するだけだ。



 一階はボヤ騒ぎで慌ただしかった為、あっさり外に出る事が出来た、帰りの足は特に用意してなかったから徒歩で裏通りを進んでいる。

 姿隠しのマントは一応着たままだ。



 屋敷から離れ、落ち着いた時にアリスが口を開く。

「まさかアル兄が助けに来てくれると思わなかったわ、ありがと」

「皆、心配しているよ、妹に少しはカッコいい所を見せられたかな?」

「ふふっ、助けに来たのがアル兄だとわかった時、まるで王子様の様だったわ」

「一応王子だしね、部屋にいたアリスも捕らわれた姫みたいだったよ」 

「あら? 私も一応お姫様よ」

「ははっそうだね」


 この後はアリスとたわいのない話をしながらガイ兄のいる所に向かった。




 この後の制圧戦はガイ兄の担当だ、ロイヤルさん達が夜中に街道を抜けたのを確認してから一気に制圧に動いた。

 制圧戦はあっさり済みサマルリア侯爵は捕らえられた、そもそも成功の見込みの少ない事をなぜ企だてたのか? それをこれから尋問して聞き出す訳だがどうも妙だ、この戦いで誰が得をするのか? 今は考えてもわからない。




 戦闘中は自分とアリスは軍に保護されていたので、制圧戦後に軍と共に王城に帰還する事になる。

 もうすぐ出発の時間だが自分達のいる天幕にオーステッド軍長が入ってきた、後ろにはガイ兄もいる。

「御無事でなによりですアリス姫殿下!! そしてありがとうございますアルフレッド殿下!! 殿下のおかげで制圧がスムーズに済みました!!」

 体もデカいが声もデカい、彼がこの制圧戦の指揮官であり軍務大臣でもある、偉い人が第一線にでる必要はあるんですか?


「この作戦成功でガイストン殿下の名声も上がりますなぁ!!」

「俺の名声など、どうでもいい、アリスが無事に戻り内乱は小さく済んだ、国的にはこの戦闘自体なかった事にしたいぐらいだ」

「いやいや、この時代に求められるのは強き王です、ガイストン殿下の武勇は皆に伝えねば!」

「……まぁいい、国境の警備が薄くなっている、早く戻り部隊を再編し直さなければならん、準備を進めておいてくれ」

「了解ですぞ!」

 軍長だけがドスドスと出て行く。


 天幕には自分とアリスそれにガイ兄だけになった。

「おかえりアリス、無事でよかった」

「ただいまガイ兄、絶対助けに来るのはガイ兄だと思ってたのに、アル兄が来てビックリしたわ」

「アルがアリスにカッコいいとこを見せたいと言うから花を持たせてやったんだ、アルはカッコよかったか?」

「カッコよかったわ! まるで王子様みたいだったの!」

「よかったなアル、王子様みたいだってよ、お前は王子っぽくねぇからな」

 一応王子ではある、一応ね。


「それとオーステッド卿の言った事は気にしないでくれ、お前達にははっきり言っておくが、俺は王になる気はない、イグニス兄上こそ王に相応しいと思っている」

 ガイ兄がなる気はなくても周りがほっとかないんだよなぁ、オーステッド軍務大臣は公爵でもあり、ガイ兄の派閥の一番の権力者だ、ガイ兄を王にしたいのだろう。

 そうだ! 自分もはっきり言っておこう。

「ガイ兄、自分も王になる気はありません」

「お前が王……想像できんな」

「アル兄が王様? 似合わな〜い」

 王子っぽくない人は王にも向かない様だ。



 馬車に乗り王城に向かって出発したがすぐに行軍が止まった、しばらく待ったが動かないので馬車を降り近くの兵士に聞いてみると、

「どうやら隣国が攻めてきたらしいです」

 まさかの答えが返ってきた。


 連合国と法国は塔の策略で動けないはず、問題を無視してまで攻め込んで来たと言うのか、法国なら国境にエルナーク兄さんがいるから心配だ。

 アリスと馬車の外で待っているとガイ兄がやって来た。

「悪りぃ、二人は先に王城に戻ってくれ、最低限の護衛は付ける」

「どっちが攻めてきたんですか? 法国ならエルナーク兄さんが……」

「どちらでもない、北の帝国だ」

 そのパターンは聞いてないよ!



「でも帝国とは不可侵条約があるし道も狭かったですよね?」

「そうだな、国交もあまりないし、馬も通りづらい道しかない、だが王国領内に帝国兵が現れたらしい」

 帝国とは大きな山脈で隔てられている、唯一接している部分は王国北の辺境と帝国南の辺境を繋ぐ狭い道しかない。

「部隊を三つに分けた、一つは俺が率いて帝国との国境に向かう、念の為もう一つは法国との国境、最後の一つは連合国の国境に向かうが、お前たちその部隊と行動して途中から王城に向かってくれ」

 

 王国内の問題はまだ終わらないが、この遠征と言うか出張は期間を延ばしても問題ないよね? 選択を間違えると副塔長のパンチが飛んできそうだ。

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