45.アリス救出作戦
「まずはアリスを救出する事を最優先にします、だからガイ兄はもう少し待っていて下さい」
「だけどどうすんだ? アリスの居場所もわかんねぇんだぞ」
「普通に考えればサマルリア侯爵邸にいるはずです、そこに自分が潜入してアリスを連れ出します、上手くいっても、アリスがいなかったり自分が失敗した場合でも部隊を突入させて制圧しましょう」
「それでいいのか?」
「はい、時間もありませんし、アリスがいなきゃいないで人質には出来ませんからね」
「潜入はアル自らがするのかい? 危険じゃないのか?」
「塔の商品と魔道具で成功率を高めるつもりです、あと自分が行くのはアリスの顔を知ってるのと……カッコ良い兄の姿を見せたいじゃないですか」
「よし! 儂が行こう!」
「父上が行ける訳ないでしょ!」
「そうか……儂も娘にカッコ良いとこ見せたいなぁ……」
王が動いちゃダメよ。
「ではアリス救出作戦を開始します、まず塔に手紙を送る飛竜便と移動する馬車、それに必要なお金の手配をイグニス兄さん、お願い出来ますか?」
「よし、わかった」
「たぶん七日前後で準備が出来るので突入する部隊の編成と伝達などをガイ兄にお願いします」
「おぅ! 了解した!」
「まだ動かないと思いますが、連合国と法国を見張る役目をエルナーク兄さんお願いします」
「了解だ」
父上が物欲しそうにこちらを見つめている。
「父上は……玉座で王冠でも磨いてて下さい」
作戦会議から三日後には飛竜便が人材と魔道具を持って帰って来た。
「お久しぶりです、アルフレッド殿下」
営業部王国担当のロイヤルさんだ、今日も縦ロールが元気に揺れている、この人がバカ高いワインを送ったから苦労したんだけど今更文句も言えない、そしてもう一人
「どうも、薬品三課のスバルだ、よろしく、頼まれた魔道具はそこの箱に入ってるぜ」
言葉遣いは乱暴だが男装の麗人だ、薬品三課の課長はオカマだし、そういう趣味の人が集まっているのかもしれない。
「ロイヤルさん、スバルさん遠い所をありがとうございます、あなた達にお願いしたいのはある貴族夫人に化粧品を売って欲しいのです」
会議室で話しをするが自国のクーデター騒動に巻き込む訳にはいかないから詳しくは話さない。
「俺たちはその夫人に化粧品を売るだけでいいのか?」
「そうです、行く時の馬車に自分と数名を護衛として乗せてくれれば良いです」
現地に着いたら魔道具で何とかする行き当たりばったり作戦だ。
「私たちには詳しく話してはくれないのですね……」
「ロイヤルさん達を信用してない訳じゃありません、ただ国の問題にあなた達を巻き込みたくないんです、身の危険を感じたなら自分の事を話して何も知らなかったと言って下さい、皆が無事に帰るのを優先して下さい」
潜入した後は結果がどうであれ兵士が突入するからそれまで無事でいてくれれば良い。
作戦実行するため王都を出発する、見送りはない、イグニス兄さんは普段の執務がありガイ兄は現地で軍を指揮している、エルナーク兄さんも一番近い法国の国境に赴いている、柱の影から父上が恨めしそうに覗いているがアレは見送りにカウントしない。
王都から馬車で二日かけてサマルリア侯爵邸に着いた。
まずロイヤルさんとスバルさんが馬車から降り、続けて認識阻害ローブを着た護衛役の五人が後を追う、自分は姿隠しのマントを羽織り裏口に向かった。
屋敷の裏口にも警備はいたが椅子に座って居眠りをしてる、どうやら裏口警備は休憩ポイントみたいだ。
この姿隠しのマントはよく見ると空間が歪んで見えるので昼間はバレやすい、なのでなるべくすれ違うのも避けたい。
居眠り警備員の脇を抜け静かにドアを開け屋敷に侵入した、長い廊下に左右に多くの部屋、全てを調べている暇はない、人を監禁するなら地下か上階の隅の部屋が選ばれるだろう。
少し調べてみたが地下に降りる階段は無さそうだ、地下がないなら上か、そして三階に上がると突き当たりの部屋の前に警備員が二人立っているのが見えた、あの部屋だろうな。
一度一階まで降りて仕込みをしよう、何度かメイドと遭遇したが壁に張りついて息を殺してやり過ごすした、普段通る通路の壁をじっくりは見ないよね、バレた時の備えはあるがなるべく使いたくはない。
厨房近くの空き部屋に入り込み煙玉を取り出す、この前の会議では紫色の少量型を使ったが、今日は白色の大量型だ、ついでに黒色大量型も使おう。
煙玉と言えばギーさんにきちんと謝ってないなぁ、いや、まずはこの場を切り抜けてからだな、無事塔に帰れたら謝罪しよう。
魔力を流し煙が出始めたのを確認したら床の隙間から下に落とす、これで火事を演出出来る訳だ。
急いで三階まで戻り先程の部屋が見える通路の角で待機する。
三階までは聞こえないが下では騒ぎになっているはず、その騒ぎであの警備員が離れてくれれば部屋を調べられるんだが……聞こえなきゃ意味ないじゃん! 三階で煙玉を使うべきだったか?
そう思った時に階段の方か煙から上がってきた、さすが大量型。
煙を見て警備員二人が話し合い一人が階段に向かう、だが一人残ってしまった、使いたくはなかったがコレの出番だ。
「痛っ! 何だ? …………あれっ?」
ドサリッと警備員が倒れる、静かに近づき呪いのナイフで斬りつけたのだ、まさか塔もコレを貸し出してくれるとは思わなかったよ、マントとナイフの凶悪コンボである、使いたくなかった理由はナイフで眠らせた人を起こす方法が塔に連れて行くしかないからだ、後処理がめんどくさい。
幸いにもドアに鍵は掛かっていなかった、すぐに中に入ると広めの寝室で窓に鉄格子がはめてある、ベッドの上には捜していたアリスが座ってこちらを見ていた。
カッコよく兄が助けに来たよ、感動の対面だ。
「ヒッ! ……ナイフが浮いて……とうとう私殺されてしまうの?」
あぁマントとナイフを装備しっぱなしだった、失敬。




