↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
45/60

44.俺たちは商品を売るだけ

「こちらが新商品の美容液となりますわ」

「まぁ、これが噂の……ヴァイスブランド……今どのくらい商品を持ってきてるの? 全て買い取らせてもらうわ!」

 夫人は瓶を手に取ってうっとり眺めている。

「ありがとうございます、他の商品も馬車に積んでありますので後程お持ちします」

「セバス、化粧品は私の部屋に運んでおいて頂戴」

「かしこまりました、奥様」




 サマルリア領主邸の控室に俺とロイヤルさんの二人になった。

「ふう、ここまでは順調だなロイヤルさん」

「私達に出来るのはここまでですわ、あとはアルフレッド殿下がどうにかして下さるわ」

 俺たちに作戦の詳細は明かされていない、もし失敗した時に何も知らなかった、で通す為に。

 知っているのはこの屋敷で何かを探していると言う事だけだ。


「殿下も、もう少し私を頼ってくださっても良いのに……」

 ロイヤルさんはアルを信頼しきっている様だか俺はそうは思わない、塔の作る人気の化粧品、ヴァイスブランドを使って屋敷に入り込むまでは良いが、少人数でどうにか出来るとは思えない。



「失礼します」

 控室に執事のセバスさんが来て、俺たちの前に座った。

「奥様は化粧品類を大変気に入った様子です、その他の商品も全て買い取らせていただきます、それでは目録に記してあった金額ですが……」

 ここからの商談はロイヤルさんに任せた、俺は薬品三課であり、営業部ではないからだ。



「ではこの金額で購入いたします、こちらにサインをお願いします」

 どうやら商談はまとまったらしい。


「支払いは後ほどするのですが……あの護衛の方々の格好は……いささか怪しすぎるのではと……」

「その説明は俺がしよう、彼らはヴァイスブランド専属の護衛だ、だから顔が知れ回るとマズイんだ、今はヴァイスブランドの製品を襲ってでも欲しがる輩もいるからな」

「それであの様な格好を……失礼いたしました」

 セバスさんには納得してもらえたが説明の半分は嘘だ。

 俺たち以外全員、認識阻害のローブを着て顔を見えなくしている、確かにヴァイスブランドは人気で襲撃された事もあるが護衛にあんなローブを着させてはいない。


 しかし支払いが終われば帰る事になるが、このままでいいのだろうか?

 すぐに部屋の外が慌ただしくなり、ノックとともに扉が開かれる。

「セバスさん! 火事です!」

「どこがですか? まさか倉庫ではないでしょうね?」

 入って来た男に質問しながらこちらを見た、持ち込んだ商品が燃えたなら俺たちが真っ先に疑われる。

「いえ、厨房の脇の部屋です」

「そうですか、あなた方はここから動かないで下さい」

 俺たちに言いながら窓に駆け寄る、窓からは俺たちが乗って来た馬車が見える、護衛役も馬車の脇に待機しているはずだ。

「一、ニ……三、四……五人、全員いるようですね」

 おや? アルも含めて六人のはずだ、最初から一人隠れていたのか、いなくなった一人がこの騒動を起こしているんだな。

「カノン、あなたはこの二人と馬車の護衛を見ていなさい! 私は現場に向かいます! すいませんがお二人はここにいて下さい」

 言い切ると急いで部屋から出て行った。




 しばらくすると、青白い顔をしたセバスさんが戻って来た。

「あの……あなた方は……、カノン、二人はずっとここにいましたか?」

「はい、部屋から出ていません、それに護衛の方も五人とも馬車の周りから離れてません」

「そうですか……その……あなた方は何故……今この屋敷に商品を売りに来たのですか?」

「私たちはた(・)ま(・)た(・)ま(・)近くを通る時に奥様が化粧品を欲していると聞いて来ましたわ」

「そっ、そうですか……その……誰かを探しているとか……そんな話は聞いた事はありませんか?」

「商品を買って下さる方はいつも探していますわ、それ以外は特にはないですわね」


 その後も要領を得ない質問をした後セバスさん達は諦めて出て行った。


「殿下は無事かしら? 結局どうなったんでしょうね」

「さぁ? あの執事の慌てっぷりなら、この屋敷から何かだか誰かを持って行く事には成功したんじゃねえのか?」

「これから私達はどうしたらいいのでしょう?」

「金を受け取って帰ればいいんじゃね? もう俺たちに出来る事は何もねぇよ」



 その後は夕方まで引き止められ、さらに入念な身体検査、馬車に至っては分解してまで調べられた、もちろん元に戻してもらったが。

 屋敷を出る頃にはすっかり夜も更けてしまった。

 馬車の中は行きよりも一人少なくなっている、いなくなったのはアルだった、俺たちも護衛役の人達も何が起きたか把握できていない。

 しかしアルからは、どんな事態になっても無事に帰る事を優先して下さい、と言われたのでこのまま帰るのが正解なのだろう。



 終わってみれば王国の侯爵家に商品を売って帰って来ただけだ、ダイアナ課長に「ちょーっと王国まで行ってくれるかしら?」と言われたのがいけなかった、断りゃよかった。

 アルが塔に戻って来たら今回の詳細を聞こう、まぁ俺も来年には開発部に行くからその時でもいいか。

 王国の王子であり、塔の出世頭、彼のもとで働くのが楽しみで仕方がない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。