43.ミッションインポッシブル
「後輩君、総務部の人が呼んでるよ」
「わかりました、すぐ行きます」
オルタニア王国に帰る前、塔での出来事である。
指定された六階の小会議室に赴くとナムさんと副塔長が座っていた。
「お疲れ様です、副塔長、ナムさん」
ナムさんには最近、兄貴が配っているマッチョピンバッジを付けてもらっているから認識出来る。
「お疲れ様です、急に呼び出してすみません、とりあえず座って下さい」
二人の正面に座る、この位置なら副塔長のパンチは届かないだろう。
「何かありました?」
波乱の会議は三日前に終わった、クラン課長が部長候補に決まり、薬品二課から捕まった人が何人も出た、その報告かな?
「お前の国で内乱が起こりそうだってよ」
予想の斜め上を行く答えだった。
「オルタニア王国ですよね? 内乱? どう言う事ですか?」
「詳しくはわかりませんが別に王を立ててクーデターを起こそうとしている様です」
父上は良政を敷いてるし、反乱が起きそうもないのだが。
「そこでだ、お前が行って事態を収集してこい!」
「えっ、無理ですよ、副塔長が行って片っ端からぶん殴れば収まっ! あっ痛っ!」
副塔長に脛を蹴られた、足長いですね。
「お前は新商品を開発して四課を救ったよなぁ?」
「いや、あれはたまたまでして……」
「倉庫で化け物退治もしたよなぁ?」
「退治したのは副塔長ですよね?」
「それにこないだの会議を上手い事まとめたよなぁ?」
「あれは、皆が協力してくれたから……」
「だから、国に戻って騒動を収めてこいって言ってんだ!」
えー理不尽! そんなの解決出来るわけないじゃん!
「何もアルさん一人に任せるつもりはないです、塔も協力しますので」
「塔がですか? 軍部を派遣してくれるとか?」
「いえ、塔が表立って介入する事はありません、しかし裏からサポートする事は出来ます。
今、連合国は北の紛争地帯に異変があり目が離せない状態です、法国は南のフィンネル国との確執が生じて緊張状態にあります、どちらもいずれは収まるでしょうが塔の力で長引かせます」
「連合国と法国の問題を長引かせる事に意味があるんですか?」
「あります、王国内部に不和が生じれば両国が攻め入るきっかけになります、今は小康状態ですが三国は常に領土争いをしていますしね、自国に問題があるうちは他国に構ってる暇はないでしょう」
「お前はその隙に問題を解決しろって事だ」
なるほど、他の国が攻めて来るなんで考えてなかった、自分がこの世界で生まれてから大きな戦争はなかったから。
この他にも塔がサポートに動いてくれる事を聞かされたが、自分でどうにか出来る気がしない。
それでも母国が危機の時に一応王子の自分が帰還しない訳にはいかないだろう、はー帰りたくない。
そして現在の王の私室。
「あの、父上、兄上達、自分に考えがあります」
ここまでは予想通りです副塔長、ナムさん。
自分は皆に連合国と法国に問題がある事と白の塔が協力してくれる事を説明した。
「連合国と法国の件は私も知っていたよ、すぐに解決しないとなるとこちらも動きやすい、しかしなぜ白の塔はオルタニア王国に協力的なんだ? あの塔は一つの所に肩入れするのを嫌がるはずだが?」
「それは……なんでだろう? 自分は早く騒動を収めてこいとしか言われてないんだけど……」
エルナーク兄さんの言う通りだ、手伝ってもらう事に何の疑問も抱かなかった、自分がいるから……なんて自惚れる気はない、きっと何か意図があるのだろう。
「まぁ今は塔が協力的なのはありがたいな」
「すぐにサマルリアに攻め込む訳には行かないのか? 部隊をサマルリア周辺に待機させたままだと、連合国、法国だけじゃなく北の帝国に西の魔族領などの国境警備が薄くなっている、他が動く前に早めに決着を付けねぇと!」
軍に強い影響力のあるガイ兄の意見だ。
「ガイ、それは待ってくれ、まだはっきりと声明を出した訳じゃないのに武力で鎮圧するのは収まった後に他の貴族達に不信感を抱かせてしまう」
イグニス兄さんの言う事もわかる、だがこれでは動けない。
「アルフレッド…………その……塔の力で何とかアリスを救い出す事は出来ないのか?」
父上が疲れた顔を上げて聞いてきた、そうだよ、今は父上の大事な娘、自分達の可愛い妹を助ける事が一番だ。
「父上、自分に任せて下さい! 塔の力と、つてで何とかしましょう」
自分一人では出来る事は少ない、ならば周りの人達と道具を頼ろう。
さぁアリス救出作戦を開始しよう。




