42.王族会議
帰りたくないなぁ、とは言えもう城門は見えている、いまさら引き返せない。
目立たぬ様、城の裏手に回る、王族の帰還なのにコソコソするのには理由があるのだ。
裏門も普段より警備兵が多い、事情を説明して中へ入れてもらうとすぐに王に取り継いでもらえた。
「よくぞ戻って来た、アルフレッドよ」
玉座には冠をかぶった王が座っていた、いつもなら多くの人がいる謁見の間であるが、部屋には王である父と第一王子であるイグニス兄さんの二人しかいなかった。
「ただいま戻りました陛下、で、何が起きたんですか? あぁ陛下は説明が下手なんで殿下にお願いします」
「お前は王である父を敬え!」
「冗談ですよ、身内しかいなかったんで、お久しぶりです父上、それにイグニス兄さん」
結局すぐに王の私室に移動した、謁見の間を使う意味はなかった。
「そんな事ないぞ、王の威厳を保つ為には必要なんだ」
「父上、よく自分の考えてる事がわかりましたね?」
「父親だしな、それに人の顔色をうかがうのは得意だ」
王の威厳とは……。
執事がお茶を用意し、すぐに出ていく、部屋にはまた三人になった。
「それで、何があったんですか? 自分は内乱が起こりそうだと聞いたのですが?」
「それはだな……えーっと……イグニス説明してやってくれ」
やはり父上は説明が苦手なんだろう。
「父上も疲れているんだよ、ゲホッ……悪い、私も最近体調がすぐれなくてね」
イグニス兄さんは少し病弱ではあるが内政にはめっぽう強く宰相と共に王を支えている、色白で痩せ型だったが久しぶりに会った兄さんはさらに痩せていた。
「簡単に言うと、サマルリア侯爵領にアリスが滞在しているんだ、と言うか軟禁されているんだよ、サマルリア卿はアリスを王に立てて新王国として独立しようとしていると言う訳さ」
アリスは一番下の妹で自分も含め兄達や父上にも可愛がられている存在だ。
「独立なんて不可能ですよね?」
いくら王族とはいえ、継承権第五位の王女を王にしても周りは認めないだろう。
「あぁ無理だな、サマルリア卿が何をしたいのかがわからないんだ、だけどアリスというカード手にしてるから迂闊に手は出せないんだよ、今はガイが軍を展開して牽制してっゲホッ……すまない」
「儂の可愛いアリスを攫いおって! サマルリアの奴め! ガイストンもさっさと攻め込めば良いものを」
「だからそのアリスがいるからガイも慎重に行動しているんじゃないか」
第二王子ガイストン兄さん、通称ガイ兄が軍を率いて出ている様だ、ならば第三王子のエルナーク兄さんは何処にいるのだろう?
「エルナーク兄さんはいないの?」
「エルナークは周辺国を訪れてるよ、今日あたり戻って来るはずだ、ガイにも一度戻る様、伝えてあるから皆が集まったら話し合おう」
これでアリス以外の兄妹が全員集まる事になる。
「よくぞ戻った、ガイストン、エルナークよ」
また謁見の間である、陛下の両隣には自分とイグニス兄さんが控えている。
「おっ、アルじゃねえか、久しぶりだなぁ」
いきなりガイ兄が話しかけてくるが陛下の手前一応黙っておく。
「ただいま戻りました陛下、詳しい報告は後ほど、久しぶりだねアル、戻って来るとは聞いていなかったから驚いたよ、父上、謁見の間は話しづらいから移動しましょう」
「お前らー! 儂は王なの、一番偉いの! もっと敬えって!」
民や臣下の前ではしっかり王をしているが、息子達の前では残念な父親だった。
王の私室に王と四人の王子が揃っている、だが王女である妹が足りない。
「こうして皆でお茶をするのはアリスのティーパーティ以来だね、肝心のアリスはいないけど」
イグニス兄さんの言うアリスのティーパーティとはアリス主催の父上と子供達だけのお茶会である、名付けたのは自分だ。
母親同士の仲が悪く、兄妹の関係もギクシャクしている時にアリスが六人だけでお茶会をしようと提案したのだ。
その後たびたびティーパーティは開催され父上と兄妹の絆は深まった、アリスが提案しなかったらこんなに仲良くならなかったかもしれない。
「ガイストン何故アリスを連れ戻して来なかった!!」
「いや、無理だろ、アリスがどこにいるかもわからねぇし、今は最低限の兵でサマルリア領を包囲してる状態だ」
「ガイ兄は良い判断をしたね、法国と連合国を周ったけど、うちの国に内乱の兆しがあるのは気付いてるみたいだった、迂闊に兵を動かすと両国が動くかもしれないね」
「じゃあどうすれば良い?! あぁアリスよ……」
父上は頭を抱え、イグニス兄さんは咳き込み、ガイ兄とエルナーク兄さんは考え込んでいる。
「あの、父上、兄上達、自分に考えがあります」
ここまでは予想通りです副塔長、ナムさん。




