41.ダークエルフの葛藤
「今度こそ会議を再開したいと思います」
副塔長が荒らした会議室を整えたらすぐに会議が再開した。
道具二課の三人と私はローブを脱いで席に戻っている、薬品二課の席は私一人になった。
「先程の投票結果ですがレックスさんの投票は無効とさせて頂きます、改めて薬品二課課長、部長候補を選んで頂けますか?」
「でも……私は、課長も塔も辞めるので……」
もう宣言してしまったし、今更課長だからって選ぶのもおかしな話だ。
「この会議で総務は製造部の事には関与してませんから貴女は課長のままです、それに塔は優秀な人材を簡単には手放しません」
「優秀? 私が? でもダークエルフだし……」
「先程副塔長も言いましたが塔では種族も身分も問いません、貴女は優秀なダークエルフです」
私は認めて欲しかったんだ。
さっき副塔長が言ったのと今のこの少女の言葉で私の心は救われた、いや、すでにアル君の「肌の色が違うだけ」と言われた時からかもしれない。
「さぁ部長候補を選んで下さい、ギージャム薬品二課課長」
「私は………」
あの波乱の会議から一週間経っていた。
私は朝から製薬場に来て準備をしている。
結局私は塔を辞めなかった、正確には辞めさせてもらえなかった。
レックスとアドバンその他数名が逮捕されてしまった為薬品二課は人数が不足していた、元々二課のポーションの三割程は私が作っていたので今辞められたら困ると引き留められた。
仕事量は多いが今は問題はない、なぜなら
「おはよう、ギージャム課長、今日は帝国への納品分を終わらせようか」
憧れのエルメスト課長が手伝ってくれるからだ。
あの会議で部長候補に私はエルメスト課長を選んだ、もちろんエルメスト課長は開発部部長に決まっているのは知っていたがそれでも彼女を選んだのだ。
そしてポーション生産向上の技術の素晴らしさを語った、語り過ぎた、今思えば恥ずかしいほどに。
私の票がエルメスト課長に入った事で道具一課のクラン課長が部長候補に決まった。
会議後にエルメスト課長が薬品二課へのサポートを提案してくれた、次の日から毎日課長自らが手伝いに来ている。
「しかしこの技術をあれだけ絶賛してくれるとはな」
「あの時は混乱してまして……でも素晴らしい技術なのは確かです」
「私の作った技術をこれだけ上手く活用してくれるのはギージャム課長だけだろうな」
「そっそんな事ないです、私はポーション作りが好きなだけです!」
「好きなだけではこれほどの仕事は出来ないだろ、大した物だ」
「あっありがとうございます」
今は課長同士だけだが、これから一課と二課は上手くやっていけるかもしれない。
「まぁ今年いっぱいまでだが出来る限り手伝いに来るつもりだ」
そうだったー! 薬品一課は無くなるんだった、せっかく仲良くなれたのに……悲しい。
会議の後はエルメスト課長には毎日会っている、部長とは話し合った、総務部にも挨拶をしに行った、怖かったけど副塔長にも感謝を伝えた、だがアル君とはまだ会えていない。
アル君から何も聞いていない、あの会議はどこまで彼の手のひらの上だったのだろう、だから道具四課を訪ねた、今は合併して三課か。
いざ扉の前に立つと緊張してきた、私は彼に会って何を聞きたいのだろう、会議の真相? ダークエルフの事? 感謝を伝えたいの? それとも……。
考えがまとまらなかったので戻ろうと思ったら扉が開いてしまった。
「「あっ」」
扉から赤毛の女性が出て来た。
「あーっと、薬品二課の課長さんですよね? 道具三課に何か用ですか?」
「あっあの……」
ここで、アル君に会いに来ました、と言うのはおかしな事だろうか?
「あの……ミッミスト課長! ミスト課長と話しをしに来ました」
同じ課長同士なら不自然ではないはず。
「ミスト課長とー? アポなしでー?」
疑われてしまった、ちょっと無理があったか。
「アンナ……どうしたの?」
女性の後ろからエルフの女の子が声を掛けてきた。
「あールイちゃん、この人がミスト課長に会いたいんだって」
「この人は……エルね……エル課長が良い人だって言ってた、だから案内してあげて」
「ルイちゃんがそう言うならいっか、じゃあこちらにどうぞ」
案内されたテーブルで待っていた、誰を待っているのだろう。
赤毛の女性は可愛らしかったなぁ、人族はああいう子が好きなんだろうなぁ、エルフの子もエルメスト課長とは違った可愛らしさがあったな、色も白かったし、はー何で私の肌の色は……。
「お待たせしました、ギージャム課長、道具課を訪ねてくるなんて珍しいですね」
ミスト課長も仕事が出来る風の美人さんだ、頼りになる上司なんだろうなぁ。
「その……先日の会議でご迷惑をお掛けしたのでそのお詫びというか謝罪というか……」
「気にする事はないです、ギージャム課長は自分の意見をはっきり言ったじゃないですか、それに薬品への造詣も深く私も勉強になった」
うぅ恥ずかしい、あの時は熱くなって語り過ぎた。
「今日はそれを言いに来たのですか?」
「うっ……あの、実は……アル君……アル君に会いに来ました」
「あーアル君なら仕事の都合と、……まぁ家庭の事情で国に帰っています」
「ふぇ? じ、じゃあ今はいない?」
「んー今もいませんが、たぶん今年いっぱいは帰って来れないんじゃないですか」
あーもう! せっかく来たのに! 何かイライラモヤモヤするこの気持ちはなんなのよ!
ここまで読んで頂きありがとうございます。
これからは更新頻度は極端に落ちますが少しずつでも作品を続けていきたいと思います。




