40.ダークエルフと悪魔のローブ
「何が間違えているのですか? クラン課長四票、ハスラー課長四票、選ばなかったのが二票ですよね?」
「一票は有効ではありません」
誰の票? やっぱり薬品二度のかな。
「まさか私が入れた票が無効と言うのですか? 確かに正式には課長ではありませんが薬品二課内で決まった事ですし、今この場は製造部の会議ですよ、総務部は関与しないはずでは?」
「そうだ、総務部は口を出さねぇって言ったよな!」
すかさずアドバンが同調した、最初に確認を取ったのはこの為だったのね。
「はい、製造部に関する事、これには口を出しません、しかし塔の利益や塔の者に害する事なら話は別です」
少女の答えは分かりづらい、どう言う事?
「私達が何かしたと言うのですか? 明確な理由がないのなら黙っていて下さい」
「そうだ! 猫なんて連れて来やがって!」
なんだと?! ついでに白虎ちゃんが不用みたいに言うな! この虎野郎!
「それを立証する為の道具がこちらです」
少女がテーブルの上にある白い布を半分ほど剥がすと幾つかのローブが置いてあった。
「これを着て頂きたいのは、薬品二課と道具二課の方です、前回の会議では信用されてない、と言われてましたね? これを着れば信用もされます、それと私も今後、会議には関わりません」
何でローブを着るだけでいいのかわからない。
先に動いたのは道具二課だ。
「それを着るだけで信用してもらえるならいいでしょう、ほら前に行くぞ」
ハスラー課長ら道具二課三人が前に出る、薬品二課も行くべきだがレックスとアドバンは動こうとしない。
「アンタら何してんの? 前行くよ」
塔を辞める私にはもう信用なんぞいらないが薬品二課を名指しされたからには出ない訳には行かない。
「そうですね……行きましょうか」
「おい、アレは……」
「ただのローブでしょう問題ありません」
なーんか二人でコソコソしてるけど、こう言う時は堂々としてればいいんだ、辞めると決めた私に怖い物はない。
壇上に六人が上がる。
少女の隣に何故かアル君もいた、アル君はこちらを見たが私は目を逸らしてしまった、我慢の出来なかった自分が恥ずかしかったからだ。
二人はローブをこちらに手渡してきた、受け取った私達は直ぐに羽織った。
六人はローブを着たが特に何もない、強いて言うのであれば顔が見えない様、認識阻害が付与されてるぐらいだ。
「ローブの入手先は言えません、それとそのローブとセットでこちらも手に入れました」
少女が半分残った白い布を剥がすとそこには変な形をしたナイフの様な物があった。
「ヒッ!」
それを見たとたんレックスとアドバンがローブを脱ぎ捨てた。
「お二人どうされました? 何故ローブを脱いだのですか?」
「いや……その……一度着ましたし……もう良いでしょう」
「もう着る気はないのですね?」
二人は黙ったままだ。
「そろそろ呼んでおきましょうか、白虎ちゃん、お願いします」
少女は白虎ちゃんにお願いをした、白虎ちゃんは頼まれてもその場を動かず伸びをしている、ヤバ! かわいい!……って結局どうなるの、この状況。
「すいません、ローブにゴミが付いてますよ」
気付くとアル君が横に立ってローブに触れている。
「アル君……ごめんなさい、私は……」
「ギーさん、先に謝っておきます、多分熱くはないんで気にせずそのまま立ってて下さい」
ん? えっ? 熱い?
すると先程アル君が触れていた部分から紫の煙が出始めた。
「なんてものを持ち込んだんですか!」
レックスはテーブル上のナイフを掴みこちらに向かって構えた、アドバンも威嚇しながこちらを睨んでいる。
すぐに三人の警備員が私を守る様に前に出た。
私は訳がわからずにアル君の言う通りに突っ立っていた。
「お前ら動くな! それとゆっくりそのナイフをテーブルに戻せ!」
「あなた達こそ早くそこの女を取り押さえなさい! もう手遅れです!」
「何を言っている?! いいからナイフを置け!」
「もう時間がありません! すぐに化け物になります! そうなるとこの部屋にいる人達はただでは済みませんよ!」
レックスが話した時にバァン! と激しい音を立てながら扉が開き、女性が入ってきた。
「丁度いいタイミングだったみたいだなぁ、面白ぇ話しも聞けたしな」
「副塔長お疲れ様です、言質は取れました」
少女が声を掛ける。
「あぁ俺も聞いた、ローブを着てる奴は……四人、まぁいいか」
女性は副塔長だった、何度か見かけた事はあるけど話した事はないな、今だに私のローブから煙が出続けてるんだけど大丈夫なの?
「はっ早くそこの女を……」
「うるせぇな! あーこれか、消しとけ!」
副塔長は私から何かを取りアル君に投げ渡した、彼が触れると煙はすぐに治った。
「で、お前等はこのローブを着ると化け物になるって言ったな、つまり知っているって事だ、オイ! 連れて行け」
「まっ待って下さい、これは……そっそこの女に聞いたのです、ローブを取ってみてください、ダークエルフですよ」
「あっ?!」
副塔長が私の頭の部分のローブを剥がした。
褐色の肌と長い耳が晒される、またダークエルフだからって疑われるのか。
「あぁダークエルフだな、だからなんだ?」
「えっ? あの……ダークエルフは悪魔の手先だと言われてまして……」
「種族は関係ねぇだろ! お前、人族に悪いヤツはいねぇのか?」
「あっ……あの」
「隣にいる獣人は悪くないのか?」
「いや……その……」
「白の塔は種族や身分は関係ねぇんだよ!」
副塔長はレックスの顔面を思い切り打ち抜いた。
「ぶへっ!」
レックスは後ろのテーブルと椅子を巻き込みながら吹っ飛んだ。
「レックス!」
「お前も寝とけ!」
アドバンのお腹にもパンチを打ち込む、こちらは吹っ飛ばず崩れる様に倒れた。
「よし! こいつ等を連れて行くぞ!」
気絶した二人を警備員が背負い副塔長と共に会議室を出て行く、バタン! と扉が閉まると静寂が訪れた。
「そろそろ会議を再開しましょうか?」
少女が再開を促すが、この状況から普通に会議を始められるのかしら?




